アジアは米連邦準備制度理事会(FRB)のタカ派姿勢への転換による影響をまともに受けている。その影響はますます厳しさを増している。
ドルとの結びつきが強く、輸出依存度の高いアジア諸国・地域は2026年初めの大半の期間、米国の利下げが近いという前提で経済を運営してきた。ところがいま、ソウルからインドネシアまで各地の政策当局者が直面しているのは正反対の状況だ。米国の金融政策は引き締め方向に転じ、ドル高が進み、米国債の利回り急上昇を背景に各国の通貨は下落している。
FRBは先週の連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置いたものの、30年物米国債の利回りが急騰してアジア各国の当局者を慌てさせた。これは、行き過ぎたドル高をきっかけに新興国市場に起こり得ることをあらためて思い起こさせるものだった。なかでも最も痛ましい記憶は、1997~98年のアジア通貨危機である。その悪夢の再来が懸念されている。インドネシアルピア、韓国ウォン、タイバーツはいずれも下落しており、とくにルピアはアジア通貨危機以来の安値まで落ち込んでいるのだ。
しかも、これはFRBが実際に金融政策を引き締める前の段階で起こっている。7月29日のFOMCでは、政策金利の指標であるフェデラルファンド(FF)金利の据え置きを9対3の賛成多数で決めた。反対した3人は利上げを求めた。今回の決定は、5月に就任したケビン・ウォーシュ議長のもとで、FRBは中国人民銀行(中銀)のように政権の意向に従う機関に変質するのではないかという懸念を和らげる格好にもなった。
とはいえ、雇用の伸びの鈍化や相場の低迷を受けてドナルド・トランプ米大統領が再びFRBに圧力をかければ、こうした力学は変わる可能性もある。つまり、ジェローム・パウエル前議長時代に起こり、ウォーシュも観察していたであろう展開をなぞることになりかねない。
現時点では、米国の金融政策の雰囲気は明らかに短期金利を引き上げる方向に傾いている。これにより、ドル高に拍車をかける新たな燃料が投下され、アジアでは負担が一段と増している。
ドル高には、発展途上のアジア経済を不安定にしてきた長い歴史がある。1990年代後半には、ドル高が数年にわたって進行した結果、インドネシアや韓国、タイはついにドルペッグ制や管理相場制を維持できなくなった。2013年には、FRBが量的緩和の縮小を示唆しただけでいわゆる「テーパー・タントラム」を招き、インドネシアやブラジル、インド、南アフリカ、トルコといった国々の市場は大きな打撃を受けた。



