優秀な人材を見つけるのがいかに難しいかは誰もが語るが、そうした人材をいかに引き留めるかがどれほど難しいかについてはどうだろうか。私たちは人材の採用に時間と費用を費やす一方で、どれほど簡単に彼らを失ってしまうかについて議論することは極めて少ない。あまりにも多くの場合、優秀な人材がやり玉に挙げられ、AIの登場によって、さらに多くの人々が一時解雇(レイオフ)の対象になっている。
7月14日に公開されたロン・シュメルツァーによるフォーブスの記事によると、今年1月、ブルッキングス研究所の研究者らは、3710万人の労働者が、AIの影響を最も強く受ける職種の上位4分の1を占めていると推計した。この記事によれば、これらの労働者の大半は高い適応能力を備えており、転職可能なスキルや貯蓄、資格、あるいは厚みのある地域雇用市場を有しているという。より小規模なグループである610万人の労働者は、AIの影響を強く受ける一方で、適応能力が低いという二重の困難に直面している。ブルッキングス研究所は、この脆弱なグループが主に一般事務や管理業務の職種に集中しており、その86%を女性が占めていることを明らかにした。また、このリスクは地域雇用市場とも結びついており、大学町や州都、さらにはAIの影響を受けやすいオフィス業務の基盤が大きい中規模都市などに及んでいることも分かった。これらの人々の中には、優秀な労働者であり、優れた人間でもある者たちが含まれているが、彼らは仕事を失いつつある。パフォーマンスが劣っているわけではない。ただ、経済システムや価値体系の変化に巻き込まれただけなのだ。
AIなのか、それとも別の何かなのか
ここで、より多くの人々が公然と口にし始めている疑問がある。それは、AIが本当に労働者を代替しているのか、それとも単に人員削減の格好の言い訳を提供しているだけなのか、という点だ。6月に発表されたニューヨーク・タイムズの記事によると、業界の人員削減を追跡しているウェブサイト「Layoffs.fyi」のデータとして、150社以上のテクノロジー企業がすでに少なくとも11万5000人の従業員を削減したと報じている。
同記事はさらに、数多くの調査や分析によって、企業再編を正当化するため、過去数年間の過剰採用を隠蔽するため、あるいはウォール街をなだめるために、AIが世間に対する都合のよいスケープゴートとして頻繁に利用されていることが裏付けられている、と伝えている。様々な研究でも、広範な人員代替の第一原因がテクノロジーそのものであるケースは極めて稀であることが示されている。
フォーブスの執筆者であるメアリー・ウィットフィル・ロエロフスは、AIインフラ企業スケールAI(Scale AI)の最高経営責任者(CEO)であるジェイソン・ドローゲの言葉を引用している。ドローゲによれば、CEOたちはAIという口実の陰に隠れて人員を削減し、本来であれば通常の「適正化」とみなされるような削減を行っているという。ここに醜い真実がある。これら「人員削減の対象」となった人々の一部は、単に組織の荒波に巻き込まれただけにすぎない、優秀でパフォーマンスの高い人材なのだ。解雇は、採用と同様に、深い洞察力を必要とする。私たちは人々の生活を弄ぶべきではないのだ。
私が初めてCEOに就任して間もないころ、業績を刷新し、結果を出せるチームを構築するために必要な資質をすべて備えた人物を昇進させた。その人物は自らの役割を理解し、チームメンバーをサポートし、いかなる疑問や不安も抱かせずに確実な成果を上げていた。さらに、ミッションと価値観を体現し、フィードバックを奨励し、成功を分かち合っていた。話ができすぎているように聞こえるかもしれない。だがそれは事実だった。それでも、厳しい財務の現実が突きつけられたとき、その事実は何の意味も持たなくなったのだ。
私たちは予想をはるかに超える赤字を出しており、収益基盤はコスト構造を支えきれなくなっていた。当初の戦略が明確に求めていた経営モデル(具体的には、強固なマトリックス型のサービスライン構造)を維持することもできなくなっていた。その人物が率いていた部門は、変更された計画や新たな優先事項から外れてしまい、単にその混乱に巻き込まれてしまったのだ。この話に救いがあるとすれば、その元部下が現在、自らの力で勝ち取り、それにふさわしいCEOの地位に就いていることだ。それでも、真に優秀な人材がこのような混乱に巻き込まれるのは事実であり、それが許されるべきではない。あまりにも多くの並外れた人材が、本人のパフォーマンスとはほとんど関係のない経営判断の犠牲になっているのだ。
流れは反転するのか
CNBCによると、7月1日の時点で、フォードは自動化システムでは解決できなかった品質問題に対処するため、経験豊富な人間の技術者を何百人も再雇用していると報じられている。さらにCNBCは、コモンウェルス銀行(オーストラリア)やIBMも、人工知能テクノロジーに投資しつつ人員削減を行った後、再び人的資本に注力していると報じた。つまり、企業は人をAIに置き換えるという決定を後悔したのだ。新たな人材は見つかるかもしれないし、かつての従業員が戻ってくることもあるかもしれない。しかし、解雇された優秀な人材は二度と戻らない。
企業社会はAIがもたらすという期待に夢中になっており、その期待に基づいて意思決定している。これは危険だ。誰かに退職を求めることは、リーダーとして下す最も重要な決断である。十分に考え抜かれた判断であることを確かめなければならない。
「後の祭り」となってから多くの企業が慌てて行っていることを、最初から始めてみてはどうだろうか。テクノロジーのための予算を組む一方で、なぜチームがAIを活用できるようにするためのトレーニングやリスキリングに投資しないのだろうか。なぜ代替ではなく、協働に焦点を当てないのか。そうすれば、自ら解雇することを選んだまさにその優秀な人材を、再び採用するために莫大な費用を投じる必要もなくなるかもしれない。
AIは人員削減の口実ではない。私は解雇について本を書いた人間かもしれないが、解雇は、熟練し思いやりある手に委ねられれば、組織の焦点を定め直し、救うことさえできるツールだと心から信じている。しかし、解雇が間違った選択となる時がある。今がその一つだ。



