JPモルガン・チェースのCEOであるジェイミー・ダイモンは、影響力が大きく、広く尊敬を集める人物であり、金融や経済について率直に語ることで知られている。その率直さはキャリアに関する助言にも向けられ、ビジネスパーソンに対して、学校では学ばないが知っておくべきことを伝えている。
The Master Investor Podcastで、上級管理職やリーダー職を目指す「野心的でハングリーな」プロフェッショナルへのキャリア助言を求められたダイモンは、歯に衣着せぬ言葉で答えた。
ダイモンのリストの最上位に挙がったリーダーシップスキルは、規律あるコミュニケーションだった。
だがコミュニケーションに関して、あまりに多くのリーダーが「雑」だとダイモンは述べた。
ダイモンにとって、コミュニケーションはソフトスキルではない。より速く、より賢明な意思決定につながる、リーダーシップの中核的な規律である。だからこそ「雑」という言葉は、今日のコミュニケーションの状況を表すのにこれほど的確なのだ。
雑なコミュニケーターとは、考えを表現する前にそれを整理するための思考や努力をほとんど払わない、不注意な人のことだ。影響力のあるリーダーはその逆を行く。意図的に思考を構造化するのである。
だからこそダイモンは、ビジネス界で最も規律あるコミュニケーションを実践する人物のひとりとして、ジェフ・ベゾスの名を挙げたのだ。
ジェフ・ベゾスがパワーポイントを禁止した理由
ダイモンは、ジェフ・ベゾスがアマゾンで意図的なコミュニケーションの仕組みを作り上げたことを、経営幹部やキャリアの初期段階にあるプロフェッショナルたちに向けて語った。なかでも象徴的なのは、「ベゾスは社員に6ページのメモを書かせた」ことだとダイモンは述べた。
アマゾン社内で「シックス・ペジャー(6ページのメモ)」と呼ばれるようになったこの書面によるメモは、筆者が著書『The Bezos Blueprint』で掘り下げた強力なリーダーシップの実践方法だ。ベゾスが上級幹部に対し、パワーポイントのプレゼンテーションを、入念に作り込まれた「物語形式で書かれたメモ」に置き換えるよう求めたとき、多くの人はその変化に抵抗した。だが、その手法がどれほど効果的であるかを目の当たりにすると、彼らはすぐにこの手法の信奉者となり、伝道師へと変わっていった。
スライド上の箇条書きを書面によるメモに置き換えたことで、個々のリーダーはより明確に考え、話すようになり、自らの主張を口にする前に磨き上げ、より良い意思決定をより迅速に下せるようになった。アマゾンを離れて他社を創業したり経営したりしている元幹部の多くは、ベゾスから教わった最も重要なマネジメント手法は書面によるメモだったと筆者に語っている。
ダイモンの次の例は、規律あるコミュニケーションのもう1つの特徴を示している。それは、あらゆるリーダーが次の会話からすぐに実践できる「3のルール」である。
アイデアを記憶に残す構造
雑なコミュニケーターは、だらだらと話し、「もったいぶって説教する」とダイモンは説明した。有能なリーダーはその逆を行う。話す前に思考を整理するのだ。どうやってか。3のルールに従うのである。
ダイモンは、次のような枠組みで情報を提示することを提案した。
「選択肢は3つあります。A、B、Cです。それぞれの選択肢をどう評価するか、そしてなぜ私はBを選ぶのかを説明します」
ダイモンは「ちなみに、これは規律です」と付け加えた。
ダイモンが示していたのは、説得力あるコミュニケーションにおける、よく知られた普遍的なルールである。情報が構造のない、まとまりのない、混乱を招く思考の流れとして示されるのではなく、3つのまとまりに整理されていると、人はそれを処理し、記憶し、行動に移しやすい。
ダイモン自身も、世界の金融幹部や多くのビジネススクールで必読とされる株主向け書簡で、このルールを実践している。
2004年には、ダイモンは企業の失敗を招く3つの内部要因として、官僚主義、傲慢、自己満足を取り上げた。今年、彼は外交問題評議会(Council on Foreign Relations)で講演した際、長期的な国家安全保障は「経済安全保障、エネルギー安全保障、軍事的即応性という3本の脚の上に成り立つ」と述べた。そしてThe Master Investor Podcastでは、AIへの有益な投資と誇大宣伝を見分けるために、3つの問いを立てると語った。それは、成果は出るのか、期待どおりの形で成果は出るのか、期待する時間軸で成果は出るのか、である。
要するに、ドットコムブームとその崩壊を経験したダイモンの見方に基づけば、AIは長期的には人類に恩恵をもたらすが、ウォール街が勝者を見極めたり、タイミングを正確に捉えたりすることを期待すべきではない。
ダイモンの教訓は簡潔で明快だ。雑なコミュニケーションは、雑な思考を映し出す。優れたリーダーは規律をもってコミュニケーションを行う。その習慣が、より良い意思決定を下し、信頼を獲得し、自信を与えることにつながるのである。



