━━売却に反対する経営陣がいたとしたら、反対意見はどういう理由が多かったんでしょうか。
竹内 意見として出たのは、データセンター向けの成長事業において、ライコル社といろいろな協業をしていたので、そうした事業に影響が出ないようにしてほしいということでした。そこで契約上の手当てを行い、データセンターなどの成長分野に必要な協業は継続できる形にしました。
古川 私が一番、ライコル社を保持しようとしていたと思います。子会社化の時に一番苦労していますからね。去年の夏に行った時も、どうやって立て直すか、お金を入れる、社長を変える、経営陣を変えるなど、本当にいろいろ考えました。新しい事業を立ち上げ、外部資金も活用しながら再建する道も検討しました。ただ、どの選択肢も実現には相当な時間と労力が必要でした。
竹内 しかも、それをやるには、ずっとイスラエルにいなくてはいけない。
古川 そこにかなり力を入れれば、以前と同じぐらいには戻ると思ったのです。ただ、それだけの経営資源を投入しても元と同じ状態に戻すだけであれば、そのリソースは将来の成長分野に振り向けるべきだろうというのが最終的な結論でした。
一時的に、ガザとの停戦があって落ち着いた時もありましたので、今年の1月末にも再びイスラエルを訪問しました。しかし、その時点でも先行きを見通せる状況ではありませんでした。
竹内 そして、古川がイスラエルを訪問し、株式売却契約を締結した直後にイランとの軍事衝突が始まりました。 当時は本当に何が起きてもおかしくない状況だったのです。
━━そのタイミングで、もし違う経営判断をしていたら大変な事態になっていましたね。
竹内 正直、辛かったのは、日々議論をしながら、次に何が起こるか分からない中で備え続けなければならなかったことです。経営として不確実性が非常に大きく、将来の見通しを立てること自体が難しい状況でした。
古川 その不確実性を切り離したことを、株式市場が評価してくれたんじゃないですか。
竹内 売却はしましたが、ビジネスとしての関係は続けていて、先日もCSOがイスラエルに行っています。ライコル社から学んだことは非常に多くありますし、技術面での関係も継続しています。その一方で、事業としては一定の整理を行い、売却をして、そこで得た資金とリソースを、半導体、量子、データセンターといった新しい領域に振り向けることにしました。
マーケットの反応も概ねポジティブでしたね。個人投資家さんや機関投資家さんと、日々対話していますが、「難しい状況での判断だったと思うが、経営資源配分としては合理的だった」という声をいただいています。


