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サイエンス

2026.08.04 18:00

体色を一瞬で変える「スパイダーマン・トカゲ」、派手な色の裏にある真実

ムワンザ・フラットヘッド・ロック・アガマ(stock.adobe.com)

ムワンザ・フラットヘッド・ロック・アガマ(stock.adobe.com)

アフリカ東部に広がる広大なヴィクトリア湖を取り巻くサバンナには、「コピ」と呼ばれる、上面が平らな花崗岩の岩山が点在する。そして、太陽が照りつけるこれらの岩山には、変わったトカゲが生息している。

とは言っても、大半の人は、このトカゲを見かけても、ただ通り過ぎてしまうだろう。しかしこの地味なトカゲは、実は一瞬で、体色を一変させることができる。頭から首、肩にかけての部分が鮮やかな赤色やスミレ色に変わり、残りの体の部分もみるみる色が濃くなり、明るい青色になるのだ。

この変身後の姿が、マーベル・コミックのとあるスーパーヒーローがまとうスーツに大変よく似ていることから、非公式に「スパイダーマン・トカゲ」と呼ばれている。

このトカゲの正式名はムワンザ・フラットヘッド・ロック・アガマ(学名:Agama mwanzae)。この色の変化は、決して光の加減による錯覚ではない。これは「衣装替え」だ。しかも、体色を変えるタイミングは、トカゲ自身がコントロールしている。

スパイダーマン・トカゲが数秒で体色を変える仕組み

このように瞬時に体色を変えられるのは、爬虫類の皮膚に色素胞と呼ばれる、層状の色素細胞が含まれているからだ。2016年に『Current Zoology』に掲載された研究論文の説明によると、スパイダーマン・トカゲの場合、ほぼ瞬時に、色素を小さな点に集約したり、細胞の表面に拡散させたりできるという。

細胞内の色素を集約すると、皮膚の色は褪せ、茶色や灰色がかった色になる。逆に拡散させると、同じ皮膚が瞬時に赤色やオレンジ色、青色などに変化する(色素胞の種類による)。

新たに色素を生成するのではなく、変色のトリガーが、神経系やストレスホルモン経由で伝わることで、数秒で体全体の色を変えることができる。脱皮するヘビや、季節によって被毛が変わる哺乳類の場合、見た目を変えるのに数週間はかかるが、このトカゲは瞬間的に体色を変化させる。

色を変える爬虫類に関して大半の人が連想するのはカメレオンだが、カメレオンの体色変化は、スパイダーマン・トカゲの体色変化とは異なる。カメレオンの場合は、一部を構造色に頼っているからだ。構造色とは、皮膚そのものの色素ではなく、顕微鏡レベルの微細な結晶構造を含んだ層によって、光が屈折して生じる見かけの色だ。

スパイダーマン・トカゲが属するアガマ科のトカゲは、カメレオンと進化的に近縁にあたる。そして、複数のアガマ科のトカゲについて体色変化を研究している専門家によると、この2つの系統は、共通の祖先を持つものの、いくぶん異なるルートをたどって、派手でダイナミックな体色変化という形質にたどり着いたことが判明したという。

次ページ > 「スパイダーマン化」する個体が、岩山のボスに限られる理由

翻訳=長谷睦/ガリレオ

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