原告の従業員らは、Metaがレイオフの対象者を選定する際、社内のAIシステムや活動データ、AIトークン使用状況のダッシュボード、アルゴリズムによるパフォーマンス情報を利用したと主張している。彼らの主張によると、病気休暇、育児休暇、家族介護休暇といった法的に保護された休暇を取得していた従業員は、同様のシグナルを蓄積することができず、不当に不利益を被ったという。
メタ側はこれらの疑いを否定しており、人員整理の決定は文書化された中立的な基準に基づいて人間が行ったものであり、AIが解雇対象者を選定したわけではないと主張している。この裁判において、問題のシステムが解雇リストを決定したか否かは確定していない。しかし、その法的な結末にかかわらず、この一件はより本質的な問題を提起している。すなわち「マネージャーたちは、どのような情報を価値ある仕事と結びつけて捉えるようになりつつあるのか」という点だ。
もしマネージャーが、目に見える活動や記録されたアウトプット、あるいはAIの利用実績に基づいてあらかじめ整理されたリストを受け取るならば、マネージャーが評価を始める前に、測定システムがすでに何をもって「貢献」とするかを定義してしまっていることになる。人間が個々の結果を覆すことはできるとしても、その人物は依然として、手元にあるデータによって構築された従業員の価値像という枠組みの中で評価を行っているにすぎない。
キー入力の回数は、誰かが文字を打ったことを示す。AIのトークン消費量は、誰かがAIを使ったことを示す。しかし、そのどちらも、AIが成果を改善したか、時間を節約したか、あるいは不要な仕事を生み出したかについては、企業に何も教えてくれない。膨大なメッセージ送信量が影響力を証明するわけではない。予定で埋まったカレンダーが貢献を証明するわけでもない。大きなデジタルフットプリント(デジタル上の活動履歴)は生産性を示しているかもしれないが、非効率なプロセスや不要な会議、そもそも行うべきではなかった仕事を反映している可能性もあるのだ。
ある人は、見当違いな問題を解決しながら、目に見える膨大なアウトプットを生み出すことができる。また別の人は、測定可能な痕跡をほとんど残さない短い会話の中で、多大な損失をもたらすミスを未然に防ぐことができるのだ。
仕事を誤って測定する企業は、最終的に、従業員に対し、企業が測定すると決めたものを何であれ生み出すように行動を変化させることになる。
企業はAIが節約した時間をどう使うべきか
AIは、今日の仕事をより短い時間に詰め込むためではなく、より価値のある仕事に取り組むための余地を生み出すためのものであるはずだった。そこに到達するためには、「急がば回れ(slowing down to speed up)」のアプローチが必要となる。


