木曜の午後4時45分、新しい業務依頼が受信箱に届く。良い案件であり、普段なら引き受けたい類いの仕事だ。だがすでに2つの締め切りを抱え、休暇中の同僚の業務をカバーし、何とか回すために午後10時にもメッセージに返信している。何か言うべきだとわかっている。それでも「喜んで引き受けます」と入力し、胃が沈むような感覚を覚える。
多くの人がこの会話を避ける理由は1つだ。「手一杯です」が「能力がありません」と受け取られるのではないかと心配するのである。その不安は理解できるが、たいていは思い込みだ。実際、研究によれば、人は直接依頼したときに相手が承諾する可能性を一貫して低く見積もる。自分が相手に負担をかけていることばかりに意識が向き、頼みを断ることがどれほど気まずいかを忘れてしまうのだ。
その場で「はい」と言うのは安全に感じられる。だが結局、何かはこぼれ落ちる。何を犠牲にするかを、誰にも知らせずにひそかに選ぶことになるだけだ。上司は「はい」という返事を見て余力があると判断し、さらに仕事を振ってくる。そしてついに締め切りに遅れたとき、あなたがどれほど負荷を抱えていたかは誰にも伝わっていない。仕事量が多すぎたのではなく、仕事をこなせなかったように見えてしまう。
あなたがすべきことは、トレードオフを見える化することだ。方法は次の通りである。
仕事を割り振られた時点で声を上げる
業務を引き受ける前なら、上司にはまだ選択肢がある。締め切りを動かす、一部を別の人に振る、追加の支援を用意する、あるいは別のプロジェクトを後回しにすると判断できる。いったん「はい」と言えば、その選択肢は狭まる。
すぐに返事をする必要はない。「抱えている仕事全体を確認して、今日の午後にお返事します」と一言伝えるだけで、より良い話し合いの余地が生まれる。
ストレスではなく、トレードオフから切り出す
どれほど圧倒されているかから話し始めてはいけない。管理職は「忙しすぎます」という言葉を日常的に聞いており、それだけでは具体的に対処できない。どの締め切りが動くことになるのかを伝えれば、上司が実際に判断できる材料を渡すことになる。
例えばこう言う。「喜んで引き受けます。影響が出るのはヘンダーソンのレポートで、締め切りが金曜から水曜にずれます。それで問題ありませんか」
全体像を示す
話し合いの前に、自分が担当しているすべての仕事を書き出し、締め切りと、それぞれに現実的にどれくらい時間がかかるかの見積もりを添える。
多くの上司は、自分が直接あなたに振った仕事しか見えていない。他部署や上層部から来る依頼までは十分に把握できていないことが多い。その結果、不完全な情報のまま業務量に関する判断をしている。
例えばこう言う。「他チームから来ている仕事も含めて、いま抱えている業務を一覧にしました。一緒に確認して、何を優先すべきか整理できますか」
最良のケースを前提に見積もらない
私たちの多くは、自分の仕事にかかる時間を見積もるのが非常に苦手だ。すべてが順調に進んだ場合にどれくらいかかるかで見積もるが、仕事がその通りに進むことはほとんどない。心理学者はこれを計画錯誤と呼び、研究結果は厳しい現実を示している。よく知られたある研究では、学生たちは論文を約34日で仕上げられると予測した。実際の平均完了期間は56日近かった。話し合いの前に数字には余裕を持たせるべきだ。現実的なスケジュールは、事前に交渉する方が、後から遅れを説明するよりはるかに容易だからだ。
例えばこう言う。「現実的には3週間です。すべてがうまく進めば2週間と言えるかもしれませんが、実際に守れる日付をお伝えしたいです」
選択肢を提示し、優先順位を尋ねる
問題を説明するだけでは不十分だ。考え得る解決策を持っていく。締め切りを1つ動かすのかもしれない。チームメンバーが一部を担当するのかもしれない。新しいプロジェクトの開始を今日ではなく来週にするのかもしれない。単に「できません」と言うだけでは、次に何が起きるかを上司が考えなければならず、その時点で会話は能力不足の問題のように感じられ始める。
例えばこう言う。「すべてを現在の品質水準で完了できない場合、何を優先すべきでしょうか」
上司が反発したらどうするか
管理職の中には、「全部やってほしい」という趣旨の反応をする人もいる。
落ち着いて、具体的に確認する。スケジュール上どれかを選ばざるを得ない場合、どのプロジェクトを先に終えるべきかを尋ねる。すべてに同じ完成度が必要なのか、あるいはどれかはラフドラフトで足りるのかを聞く。多くの場合、「全部必要だ」とは、まだ誰もトレードオフを整理していないという意味であり、その整理を始めるきっかけになるのがあなたの質問なのだ。
変えられる要素は3つあると示すのも有効だ。すなわち「納期」「作業量」「品質」である。このうち2つを固定するなら、3つ目は譲らなければならない。そうすれば、それはあなたの意欲の問題ではなく、算数の問題になる。いずれにせよ何かは動く。問題は、それが意思決定によるものか、偶発的なものかだけだ。
それでも答えが「何とかして」なら、自分で判断し、それを文書に残す。どのプロジェクトを最初に終える予定かを短く伝え、必要なら修正してほしいと上司に伝えることで、上司がもう一度簡単に意見を述べる機会をつくれる。さらに重要なのは、その判断を頭の中に埋もれさせず、表に出しておけることだ。それこそが本来の目的である。
何も変わらない場合はどうするか
うまく話し合いをしても、何も変わらないことがある。仕事は次々に降ってきて、抱えているものは減らない。たいてい理由は2つあり、それぞれ対応が異なる。
上司自身も追い詰められており、自分では受け止めきれないものを下に回している場合がある。一方で、単に聞く気がない上司もいる。業務量について話すたびに面倒事のように扱われるなら、それが今後その職場で仕事がどう進むかについての答えである。
その段階では、言い方を改善しても助けにはならない。本当に問うべきは、ここでキャリアを築きたいかどうかだ。そのような業務量は、自然に改善することはめったにない。
上司に「これ以上は抱えられない」と伝えることはスキルであり、練習すれば気まずさは小さくなる。仕事を割り振られた時点で声を上げ、それによって何が後ろ倒しになるのかを示し、一覧を持参し、現実的な日程を伝え、何を最優先するのかを尋ねる。この会話をどれほど直接的に行うかは組織によって異なり、グローバル企業では国民文化にも左右される。それでもトレードオフは見える状態にしなければならない。それをどの程度直接的に表面化させるかは、自分が働く環境に応じた判断である。うまく行えば、この会話は、仕事に実際どれほどのコストがかかるかをあなたが理解していることを上司に示す。それこそが、さらに多くの仕事を任せられる人を見極める際に上司が求める判断力なのだ。



