そして、もっとも重要な修正の工程である。ここでもAIは、複数のエージェントを組み合わせたワークフローによって、目に見えるかたちで効果を上げている。まず修正役のエージェントが修正案を複数出し、それを批評役のエージェントが評価する。この二つが、従来の開発者どうしのコードレビューをまねたループを回す。さらにテスト作成役のエージェントが、その修正がChromeの対応する全プラットフォーム・全構成で正しく効くことを確かめる。
これらはすべて「開発者が修正を確認する前に」済ませており、「開発者の時間を最大で数週間分」節約できているとグーグルは述べる。実際、2026年の現在、ほとんどの脆弱性について修正候補をLLMが生成するようになっており、それが「最近のChromeリリースにおけるセキュリティ修正のペースを劇的に引き上げています」と文書は記している。
グーグルの言い分は正しいのか
いわゆるパッチギャップ(ベンダーが脆弱性を見つけてから、利用者側の更新によって修正が行き渡るまでの空白期間)を縮めるものであれば、それが何であれ、Webを危険にしているとは言えない。AIが、Chromeのセキュリティを回す機構のなかで欠かせない歯車になっていることは間違いない。おかげでグーグルはセキュリティ更新をますます速く出せるようになっており、今後もその流れは加速していくだろう。
グーグル自身、Chromeセキュリティチームの記事のなかで、セキュリティリリースを週2回に切り替える試験運用を進めていると明かしている。脆弱性の発見が増えたことへの対応であり、その増加は大部分が、ここまで述べてきたAIの道具立てと工程がうまくいっている結果だ。
常連の読者ならご存じのとおり、私はネット上で常にグーグルの味方をしてきたわけではない。だが、称えるべきところは称えるべきで、今回はまさにそれに当たる。AIがもたらす脅威を前に、グーグルはこう述べている。「すばやく展開する仕組みと、構造そのものに踏み込んだ防御とを組み合わせることで、守る側が確実に優位を保てるようにしています。これによってChromeとWeb全体は、アップデートのたびに安全になっていくのです」
この主張に反論するのは、なかなか難しい。


