AIによって、ソフトウェアセキュリティを取り巻く脅威はいっそう激しさを増した。とはいえ、発見されて修正される脆弱性の件数が増えること自体は、敗北のしるしではない。これが、Chromeセキュリティチームが新たに公開した記事でグーグルが打ち出した主張であり、実例と技術的な背景が数多く添えられている。
ただ、この記事が出たのは、OpenAIとHugging Face(AIモデルを公開・共有するための世界的なプラットフォーム)のセキュリティ事案の直後だった。
制御を外れたとされるAIが、何も知らない第三者企業に侵入しうることを具体的に示した一件である。そのため、セキュリティにおいてAIは味方なのか敵なのかという議論が、ネット上で盛んに交わされている。もちろん実際には、そのどちらでもありうる。そこで、Chromeのセキュリティ更新はブラウザだけでなくWeb全体を安全にしている、というグーグルの主張を、その裏側で大規模に展開されているAIモデルとあわせて詳しく見ていこう。
「Chromeのアップデートは、そのたびにWebを安全にしている」
私は以前から、どんなコードベースであれ、そこで見つかり、そして何より修正される脆弱性が多いことは、弱さではなく強さのしるしだと論じてきた。それがもっともはっきり表れているのがGoogle Chrome、より正確に言えば、世界でもっとも使われているこのWebブラウザを支えるChromiumのコードベースだろう。
たとえば直近のChromeセキュリティ更新は370件の脆弱性に対処し、そのすべてを、攻撃者による実際の悪用が確認される前に修正している。これは良いことだ。すでに報じたとおり、こうした欠陥を、脅威をもたらす側より先にグーグルが把握するほうがはるかに良く、悪用される前に、できるだけ早くすべてに修正を行き渡らせるほうがはるかに良いからである。7月30日に出たグーグルのChromeセキュリティチームの記事も、同じ主張をしている。しかも、なぜそう言えるのかを示す、舞台裏の説得力ある材料がふんだんに添えられている。
大規模言語モデルが、セキュリティ脆弱性を自動で大量に見つけ出す能力を次々と見せつけていること、しかもそれが人間だけでは到底及ばない前例のない規模であることを、グーグルは認めている。そのうえで、攻撃者の先を行くには新しいやり方が要るとした。「アップデートのたびに強く:AI時代にChromeとWebをより安全にするために」と題した長文の文書は、こう述べている。「AIモデルを大規模に展開し、数百件のセキュリティバグをこれまでにない速さで見つけて修正するということだ。目指すのは、攻撃に対する耐性をいっそう高めることと、取りこぼしのない修正である」



