数週間前、私はあるグローバル消費財企業によるサプライヤー向けのサステナビリティ評価シートに目を通していた。
私の目を引いたのは、その評価対象だった。
そのサプライヤーは、原材料や包装資材、完成品の製造メーカーではなく、ビルのシステムメンテナンスを行う企業だった。それにもかかわらず、この評価シートでは、温室効果ガスの報告、排出量削減ロードマップ、再生可能エネルギーの導入、サプライチェーンの関与、製品レベルのデータ対応力など、気候変動対策への成熟度を示す指標に基づいて評価が行われていた。そのサプライヤーのスコアは、5段階評価で0だった。
これは単なるサステナビリティレポートの提出依頼ではない。サプライヤーが顧客の長期的な脱炭素目標をサポートできるかどうかを見極めるための評価だったのだ。
変化する市場のシグナル
過去2年間、米国の多くのビジネスリーダーはESG(環境・社会・ガバナンス)から距離を置いてきた。公の場での発言からESGという言葉を排除した者もいれば、関連する取り組みを縮小した者もいる。ビジネス上のリスクは去ったと判断した者も多かった。
しかし、企業がESGについての議論に終始している間にも、その顧客の多くは歩みを進め続けていた。私の見解では、ここに多くの組織が市場のシグナルを見落としている原因がある。
3年前、弊社に相談を寄せる企業のほとんどは、サステナビリティレポート、気候変動に関する誓約、またはマイルストーン主導のプロジェクトを求めていた。しかし今日、そうした相談の約80%は異なる切り口から始まる。顧客から温室効果ガスインベントリ(排出量目録)を求められた、オーナーから排出量報告を要求された、大手クライアントからサプライヤー向けアンケートが届いた、あるいは顧客の要件を満たすために脱炭素計画が必要になった、といったものだ。
組織はもはや「これを行うべきか」と問いかけてはいない。そうではなく「顧客から求められている提供内容や達成目標に、どう応えればよいか」と問いかけているのだ。
これは消費財分野に限った話ではない。ほとんどの業界に関係している。
さまざまな業界で見られる現状
自動車および航空宇宙セクターに製品を供給するある中堅メーカーは、外国の親会社を擁し、グローバルなサプライチェーンに向けて販売している。同社にとって最大の顧客(こちらも外資系)は、欧州の報告要件やより広範な企業としての気候変動対策への誓約に対応するため、温室効果ガスの報告と排出量削減へのコミットメントを要求している。
別の例では、プライベート・エクイティ(PE)の支援を受けるプラットフォーム企業が、すべての傘下事業会社に対し、ESG関連指標の報告を義務付けている。この要求は規制当局からではなく、ポートフォリオ全体におけるリスク、機会、業績の可視化を求める投資家、取締役、年金基金、金融機関、PE関係者などのステークホルダーから発せられている。
私が支援している非上場のヘルスケアサプライヤーは、まだ顧客からそのような要求を受けていない。しかし同社の経営陣は、要求を待つのではなく、自社の排出状況を今すぐ把握することを決断した。自社の数値を把握し、業務改善の機会を特定し、サステナビリティが将来の製品開発や市場での差別化にいかに影響を与えるかを探ることに価値を見出しているのだ。
これらの組織は、異なる業界で活動し、異なる圧力に対応しているが、すべて同じ能力、すなわち「排出量の把握と管理」に対して投資を行っている。そして調査によると、こうした例は決して例外ではない。
PwCの調査では、企業の75%がサプライヤーのサステナビリティ報告に対する期待が高まっていると回答し、92%が今後もその期待が高まり続けると予測している。ベイン・アンド・カンパニー(Bain & Company)の調査によると、B2Bバイヤーの36%が、サステナビリティに対する期待に応えられないサプライヤーとの取引を今すぐ打ち切ると回答しており、約60%が3年以内にそうした決断を下す可能性があると答えている。
最も象徴的な例は、アマゾン(Amazon)が公に発表した以下の声明かもしれない。
「当社は、ネットゼロへの道のりにおける計画と成果を提示する企業とのビジネスを優先する」
このアプローチに賛同するかどうかは、大した問題ではない。市場のシグナルは明白だ。顧客はサプライヤーに対し、排出量の可視化と、将来の目標をサポートできるという確証をますます求めている。
ここで、この記事の冒頭で紹介した消費財企業の話に戻る。私がその話で最も衝撃を受けたのは、報告の要求そのものではなく、その背景にある成熟度モデルだった。その企業は、サプライヤーに単に排出量を計算させるだけではなかった。ロードマップ、具体的な取り組み、データ、関与のプロセス、および長期にわたって進捗を示す能力をサプライヤーが備えているかどうかを評価していたのだ。
このような企業は、同じサービスを提供するグローバルなプロバイダーが存在することを十分に承知している。要件を満たせない米国ベースの企業を、自社の目標達成を支援できるグローバル企業に置き換えることは容易なのだ。
測定だけでは不十分
顧客が求めているのは、単に排出量を測定することだけでなく、それを削減するための信頼できる計画があるかどうかという点にシフトしつつある。
多くの組織が立ち往生するのは、まさにこの段階だ。彼らは排出量のインベントリを作成し、レポートを公開し、目標を設定する。そこで作業がストップしてしまうのだ。
排出量のインベントリ作成後に企業が犯す最大の過ちは、その後の計画を立てないことだ。業務、設備、調達、財務、技術、そして経営陣のすべてが、このプロセスに再び関与する必要がある。インベントリ作成を機に、計画の議論、プロジェクトの特定、優先順位付け、および投資判断を行うべきである。組織は脱炭素目標を資本計画と結び付ける必要がある。
最も進展を遂げている企業は、必ずしも最も多くの資金を費やしているわけではない。だが、そうした企業は業務上の価値を生み出すプロジェクトを特定し、利用可能なインセンティブを評価し、適切な場合には税制優遇措置を活用し、PACE(Property Assessed Clean Energy)資金調達などの金融ツールを利用して、ビジネス目標に結び付いた現実的な実施ロードマップを構築している。彼らは、明確な資本戦略に裏打ちされた、理にかなった脱炭素戦略を策定しているのだ。
CEOにとって、次にすべきことは新たなレポートの作成ではない。最も重要なステークホルダーが5年後に何を求めているかを見極め、それを達成するための資金手当てを含めた計画を構築することだ。それを実行する組織は、顧客、投資家、オーナーがますます期待するマイルストーンに向けて進捗を示す立場を確立できるだろう。そうでない組織は、議論を重ねているうちに市場がすでに動いてしまっていたことに、後になってから気づくことになるかもしれない。



