ビジネスリーダーが医療費について議論する際、その話題は保険料、薬剤費、そして診療報酬請求(レセプト)に終始しがちだ。しかし、これらのコストは、筆者が気づく限り、はるかに注目されていない、より大きな課題の「症状」であることが多い。その課題とは「慢性疾患」である。
多くの組織は、テクノロジーや人材、業務効率、リスク管理に多額の投資を行っている。一方で、従業員の健康が長期的な組織パフォーマンスの重要な推進力になり得ることを認識している組織は、はるかに少ない。
筆者は数年前、当クリニックがいくつかの労働組合の組合員を対象に、毎年の総合的な健康診断を提供した際、この教訓を得た。彼らの多くは肉体的に過酷な仕事に従事しており、仕事をめったに休まないことを誇りにしていた。彼らは活動的で高い生産性を維持していたため、自分は健康だと思い込んでいた。
しかし、筆者らが発見した事実は、それとはまったく異なっていた。
健康課題が見過ごされる理由
体調にまったく問題がないと感じていた人から、それまで診断されていなかった深刻な健康状態が発見されることは珍しくなかった。中には、即座に治療を必要とする所見が見つかったケースも複数あった。健診会場から直接、病院への救急搬送を手配しなければならないほど深刻な状況もあった。
これらの経験は、従業員の健康に対する筆者の考え方を一変させた。
多くの慢性疾患は、目立つ症状から始まるわけではない。高血圧、糖尿病、心血管疾患、代謝機能障害などは、明らかな症状が現れるまで何年も静かに進行することがある。心臓発作や脳卒中などの重大な事態が発生したときには、その影響は単なる医療費負担の増加にとどまらない。雇用主にとっては、生産性の低下、業務の混乱、障害補償の請求、医療費の増加、そして経験豊富な人材の喪失につながる可能性がある。従業員とその家族にとっては、人生を一変させるような結果になりかねない。
ここから得た教訓は明確だった。早期発見と早期介入は、単なる医療戦略ではない。人材戦略なのである。
異なる時代のために設計されたシステム
現代医療は、急性疾患や負傷の治療において目覚ましい成果を上げてきた。救急医療、手術、外傷ケア、感染症管理は、無数の命を救ってきた。短期間で問題を特定、治療し、解決できる場合、この医療システムは極めて優れた機能を発揮する。
しかし、慢性疾患はこれとは異なる。米疾病対策センター(CDC)によると、慢性疾患とメンタルヘルスの不調は、米国の年間医療費の約90%を占めている。糖尿病、心血管疾患、肥満、慢性疼痛、うつ病などの疾患は、医療の利用や経済的負担の主な要因となっている。
急性疾患とは異なり、慢性疾患はしばしば徐々に進行する。予防できないものもあれば、生活習慣、環境への曝露、睡眠、ストレス、栄養、身体活動、社会的要因の複雑な相互作用によって生じるものもある。こうした要因の多くは、正式な診断が下される何年も前から現れ始める。
それでも筆者の見るところ、医療支出の多くは、リスクが最初に検出可能になった時点ではなく、疾患が臨床的に重大な段階に達した後に発生している。
隠れたビジネスへの影響
慢性疾患がビジネスにもたらす結果は、医療費請求の額をはるかに超える。健康状態の悪化は、生産性、エンゲージメント、創造性、レジリエンス、欠勤、およびプレゼンティズム(出社はしているものの、体調不良により十分なパフォーマンスを発揮できない状態)に影響を及ぼす。従業員のウェルビーイング、エンゲージメント、そして職場におけるパフォーマンスとの間の関連性は、研究によって一貫して示されている。このため、健康に起因する生産性の損失は、雇用主にとって年間で多大なコストを意味することになる。
これらのコストが財務諸表に独立した勘定科目として記載されることはほとんどないが、筆者の経験上、組織のパフォーマンスのほぼすべての側面に影響を及ぼし得る。慢性的な疲労、睡眠不足、管理されていないストレス、代謝機能障害、慢性疼痛、あるいはバーンアウト(燃え尽き症候群)を抱える従業員は、スキルや経験にかかわらず、常にフル稼働で働くことが困難になる可能性が非常に高い。
なぜ早期発見は依然として困難なのか
早期発見と早期介入がそれほど価値のあるものであるなら、なぜ未だに実施が難しいのだろうか。
一つの課題は「タイミング」だ。ビジネスリーダーは多くの場合、四半期または年次の計画サイクルの中で行動している。その計画期間の合間に、従業員は転職し、健康保険プランも変更される。さらに、福利厚生に関する決定は短期的な財務成果に基づいて評価されがちだが、リスクを早期に特定し、病気が進行する前に介入することの恩恵は、四半期単位ではなく、何年にもわたって蓄積していくものだ。
もう一つの課題は、これまでの医療システムが、根本的な原因(川上の要因)に対処することよりも、病気の診断と治療を中心に構築されてきたことだ。臨床医には、長期的な健康状態に影響を与える可能性のある行動、ライフスタイル、環境、社会的要因を詳しく調査するための時間が十分にないことが多い。
これは、個々の医療専門家に対する批判ではない。むしろ、主として急性疾患に対処するために発展してきたシステムの現実を反映しているにすぎない。
ビジネスリーダーが取るべき対策
考え方を変え始めている組織を、筆者は数多く見てきた。健康管理を単なる経費として捉えるのではなく、健康を「戦略的資産」として認識するようになっている。
これには、従業員の健康が生産性、定着率、レジリエンス、および長期的なパフォーマンスにどのように影響するかを理解することが不可欠となる。この移行を始めたいと考えるなら、身体活動、栄養、睡眠の健康、ストレス管理、行動健康(メンタルヘルスなど)、および高額な医療費を伴う事態に陥る前の早期の健康リスク特定を支援する取り組みを検討するとよい。
重要なのは、雇用主を医療提供者に変えることが目的ではないということだ。むしろ、職場において、健康的な選択をより容易かつ持続可能にする環境づくりに注力し、健康課題が危機的な状況に陥る前に従業員をサポートすることを目指すべきだ。筆者の経験では、従業員全体における些細な改善であっても、時間の経過とともに意味のある効果をもたらし得る。
今後を見据えて
企業はサイバーセキュリティ、品質管理、リスク管理に日常的に投資している。問題に早く対処することは、危機に対応するよりもコストが低いとリーダーが理解しているからだ。従業員の健康にも、同じ発想が必要である。医療支出の枠を超えて考え、健康を組織能力の一形態として捉えることで、今後数年にわたり、より健康で、よりレジリエンスが高く、より生産性の高い従業員集団を築く態勢を整えることができる。
ここで提供される情報は、医学的助言、診断、治療を意図したものではない。自身の具体的な状況に関する助言については、資格を有する医療提供者に相談すべきである。



