AIは、大手ブランドの存在意義を脅かすような形で、ショッピングの意味を変えつつある。感情に左右されず、衝動買いもせず、根本的に人間ではないAIボットに対して、ブランドはどのようにアピールすればよいのだろうか。
多くのブランドオーナーが、これらの問いに対する答えを急いで見つけようとしている。その過程で、AIショッピングの台頭を単なる技術的な移行として捉えてしまうリスクがある。確かに技術的な変化ではあるが、買い物とは根本的に人に関わるものだ。
ブランドがエンゲージしたいと願う人々は、これまでと同様に、憧れや習慣、感情、欲望によって突き動かされている。人々は自分の課題を解決してくれる製品を求めており、AIはそうした製品を探し、推薦し、購入する上で極めて優れた役割を果たすことができる。しかし、人々は同時に、ブランドに対して、喜びや人とのつながり、意味、驚き、そしてAIが検知はできても理解はできない、あらゆる人間的な感情の瞬間をもたらしてくれることを期待している。
ブランドがAIから価値を生み出す方法を模索する際、目的はAIのニーズではなく消費者のニーズを満たすことにあると心に留めておくことが重要だ。とはいえ、AIエージェントにもニーズがある。自社ブランドを見つけて推奨してもらいたいなら、そのニーズを理解し、満たす必要がある。
現在、ほとんどの企業はそれができていない。多くの経営幹部が、自社にはAIのアルゴリズムに影響を与える力がないと感じているようだ。AIショッピングが急速に進化している今、この能力の格差は重大な問題となる。
ブランドの存在意義は今後、製品情報、価格、在庫状況、返品ポリシー、消費者のフィードバック、さらには小売業者の優先事項など、より広範な要因によって形成されるようになると筆者は考えている。この新しい世界で存在意義を持つブランドを構築し、成長させるためには、組織内の複数の部門が調和して連携する必要がある。
営業、マーケティング、サプライチェーン、そして人材とテクノロジーが、ひとつの統合された成長エンジンとして機能しなければならない。ブランドオーナーが今後の進むべき道を見出すために、心に留めておくべき4つのポイントを紹介する。
1. AIエージェントにも消費者同様にニーズがある──それを理解し、満たすこと
AIショッピングにおけるリスクは、AIエージェントがブランドを推薦しない、あるいは完全に無視することによって、そのブランドが不可視化してしまうことだ。これにより、消費者に選ばれるための戦いは、より上流のプロセスへと移行する。AIエージェントは、製品の機能、メリット、価格、在庫状況、消費者のフィードバック、過去の購買行動、小売業者の優先事項、その他増え続ける膨大なシグナルに関するデータを吸収し、比較することができる。ブランドは、それらのデータが確実に利用可能な状態にしておかねばならない。データは網羅的で、一貫性があり、タイムリーで、正確である必要がある。そして、AIが求めるあらゆるフォーマットに対応していなければならない。
2. 小売エコシステムに価値を創造することが、ブランドの価値創造につながる
存在意義のあるブランドとは、買い物客、そのAIアシスタント、そして小売業者のニーズを満たすブランドのことだ。AIは、小売業者が果たす役割の変化を加速させている。小売業者は、プラットフォーム、メディアオーナー、データ所有者、パートナー、プライベートブランドを通じた競合、そして場合によっては需要へのアクセスを提供するサプライヤーとしての性質を強めている。ブランドは、小売業者がアクセスを呼び込み、カテゴリーを成長させ、買い物客の体験を向上させ、客単価を上げ、購買プロセスにおける摩擦を減らすのを支援する必要がある。
3. 効率化を「変革」と見誤れば、より大きな果実を逃すリスクがある
すでに多くのブランドが、生産性の向上、コスト削減、ルーティン業務の自動化にAIを活用している。カスタマーサービスの担当者は、より適切な文脈を把握して迅速に対応し、次に出すべきオファーやメッセージを決定し、コンテンツを動的に構築し、検索機能を向上させ、人間では気づかないような行動を検知している。これらのメリットは本物だが、機会の一部にすぎない。現在行っている業務を単に「より良く」するためにAIを使うのは、最適化の罠である。より大きな果実は、AIを活用して新しいタイプのショッピング体験や消費者へのサービス提供方法、そして新たな価値の源泉を創出することにある。
4. 実験も有用だが、今重要なのは本格的な変革である
多くのブランドがパイロットプロジェクトを発表し、消費者を惹きつけるためにAIをどのように活用しているかについて興味深い発表を行っている。こうした取り組みは、価値や野心を示すことはできても、ビジネスの実績を大きく変えることは滅多にない。真の課題はスケールである。自律型コマースが成熟していくなかで、成功した取り組みをビジネス全体に定着させられる企業こそが、競争において有利な立場に立つことができるだろう。
おわりに
今後成功を収める企業は、需要を創出する人間のインサイトや創造性への投資を継続しつつ、AIが自社ブランドを発見し、理解し、推薦しやすくする企業だろう。AI支援型のショッピングが求める、はるかに高い詳細さ、スピード、正確さで必要なものを提供し、かつ、顧客にとって価値があり、意味のある体験を維持するためには、全く新しい業務運営の方法が必要となる。



