中国は逆の方向に進む可能性が高い。同国はウクライナ侵攻に乗じて、自国に大きな負担をかけることなく、ロシア産エネルギー資源を大量に輸入してきた。他方で、中国は意図的に自制を働かせた。その計算は冷徹だった。選択肢が少なくなればなるほど、ロシアは資金や技術、政治的支援を中国に依存するようになる。ロシアが中国の引力に深く引き込まれていくことは、ウクライナ侵攻の最も重大な長期的結果となるかもしれない。
和平合意後の中国によるエネルギー輸入の拡大は、ロシアに対する慈善行為ではない。それは影響力の強化に他ならない。この不均衡が長引くほど、中国がロシア極東と東シベリアに経済的に浸透する機会は増大する。プーチン大統領が政権にとどまる限り、ロシアで政治的激変は起こりそうにないが、同国は、建前上は主権を維持しつつも、実際には徐々に行動の余地が狭まる従属国へと静かに転落していくことになるだろう。
一方、インドの動向は異なる。同国は、ロシア産原油の大幅な値引きによってまたとない商業的機会が生まれたため、輸入を劇的に拡大した。だが、こうした値引きは戦時下の混乱によるものであり、永久的に続くものではない。価格が正常化し、他の産油国が生産を拡大するにつれ、インドの製油所は経済的な観点のみに基づいて調達先を多様化するだろう。ウクライナ侵攻以前の情勢が回復すれば、インドは中東や東アフリカからの調達を再び増やすと考えられる。
ロシアと競合し得るエネルギー生産国
ウクライナとの間で和平合意が成立しても、競争環境は変わらないだろう。ロシアの社会基盤は損傷を受け、制裁は続き、政情が不透明であることから、競合国が参入する余地は十分にある。ロシアにとって最大の輸出先である中国でさえ、価格抑制とロシアに対する政治的影響力の維持という両面で、選択肢を広げておくことに大きな関心を持っている。
ナミビアは国際社会の大きな注目を集めながら、沖合開発を着実に進めている。モザンビークは依然として治安上の課題を抱えているものの、LNG輸出の拡大に向けた態勢を維持している。カザフスタンはロシアを経由しない輸送経路を模索しつつ、ユーラシア大陸における信頼できる供給国としての役割を強化している。ガイアナは世界で最も重要な新規石油生産国の1つとなった。ベネズエラは、1月3日に米軍がニコラス・マドゥロ大統領を拘束し、デルシー・ロドリゲス副大統領が暫定大統領に就いたことで、復興を遂げる可能性がある。
ロシア市場への復帰を望む欧米のエネルギー企業
平和が訪れ、制裁が解除されれば、ロシア市場に再参入する可能性が最も高いのは、巨額の未回収債権を抱える企業だろう。
英石油大手BPはロシア国営石油企業ロスネフチの株式19.75%を売却していない。ロシアの法律で譲渡が禁じられていたため、BPは帳簿価額が約250億ドル(約3兆9300億円)と評価損処理された持ち分を抱えたままとなっている。制裁が解除されれば、ロシア市場への復帰は財務上、理にかなっている。
米石油大手エクソンモービルは、ロシア極東の石油・天然ガス開発事業「サハリン1」から事実上追放された際、46億ドル(約7200億円)を償却した。プーチン大統領は2025年に外国企業が運営会社の株式を再取得することを認める大統領令に署名しており、エクソンは既にロスネフチと再参入について水面下で協議を進めている。


