ノスタルジーや、バギージーンズを穿きこなした90年代の反骨精神あふれる適応力への回帰が、現在大きなブームとなっている。90年代に大ヒットしたテレビドラマ『X-ファイル』の復活から、秋のランウェイを席巻するオールデニムファッション、TikTokをきっかけにチャートを逆行する当時の名曲に至るまで、ポップカルチャーの歴史が自己言及を繰り返しているかのようだ。しかし、こうした90年代の再現は文化的な現象にとどまらない。キャリアや雇用の世界でも同じことが起きている。
当時と現在の違いは、筆者が1995年にマウント・ホリヨーク大学を卒業した頃、仕事を一変させる新たなテクノロジーが「ワールド・ワイド・ウェブ」だったのに対し、今日のそれはAIであるという点だ。
AIのせいで現代の新卒者が採用されなくなると懸念する見方もあるが、歴史と現代の雇用主が教えてくれる事実はそれとは異なる。1990年代にインターネットを受け入れたことで労働市場は拡大し、まったく新しい職種が数多く誕生した。そして約30年が経過した今、新卒者には新たなスキルの習得が促され、大学には新しい研究分野の導入が求められている。これは、教育関係者やサポートネットワーク、大学側が適切な準備を整えさえすれば、現代の卒業生にとってAIが強みになることを意味している。
提携先である企業の採用担当者に意見を聞いたところ、新世代の働き手には、高度な技術力と地に足の着いたソフトスキルの組み合わせが必要だと異口同音に語った。非営利団体「ブレイブン(Braven)」のCEOとして、学生たちがこれらのスキルをすべて職場に持ち込めるよう支援するのが筆者の職務である。だからこそ、今、学生への新たな支援のあり方が求められている。
学生たちに必要なのは、真のAIリテラシーだ。ChatGPTからAI会議アシスタントに至るまで、各ツールの使用方法を理解し、それぞれに内在する強み、欠点、複雑な仕組みを把握しなければならない。同時に、グループ内で前向きに協力する方法、効果的なコミュニケーション、その場で臨機応変に問題を解決する力も身につける必要がある。大学がこうした準備を単独で提供できないのであれば、ブレイブンのような非営利団体と提携し、この重要な役割を外部に委託することも可能だ。
この提言を裏付けるデータや研究は数多く存在する。
最近発表されたジェネラル・アセンブリー(General Assembly)の調査によると、若手社員が業務への準備を整えていると感じている中堅幹部は、わずか12%にとどまった。その理由を尋ねたところ、約半数が、コミュニケーションやコラボレーションといったソフトスキルの不足にその原因があると回答している。最新技術の活用能力に対する懸念は比較的少なく、この結果は、最も早く成功を収める求職者とは、履歴書に書ける経歴や仕事の基本スキルに加え、AIを使用する状況と使用しない状況の双方で円滑にコミュニケーションをとる能力を備えた人物であることを示している。
起業家であり、LinkedIn創業者でもあるリード・ホフマンは、このテーマについて有益なアドバイスを共有している。彼は一連のInstagramの投稿で次のように綴った。
「新卒者の方々には、自分のキャリアをいかに『AIから守る(AI-proof)』かという視点で考えないことを強くお勧めする。代わりに、キャリアを『AIに最適化(AI-optimize)』させるのだ。では、どうすればいいのか。まずはリテラシーを高めることから始まる。それはプロンプトエンジニアリングやバイブコーディング(雰囲気を伝えることによるコード生成)をはるかに超えるものだ。また、AIがどのように影響力を再分配し、組織のワークフローやビジネスモデルを再構築し、今後価値を持つ新たなスキルやサービスを要求するようになるのかを理解する必要もある」
ホフマンは、AIが現代の新卒者や若者にとっての新たな出発点であると言っているようだ。90年代の大学が最終的にインターネット、コーディング、ウェブサイト制作を学生に教えたように、現代の大学もAIリテラシーに関する講義内容を深めることができる。結局のところ、医学部を目指す大学4年生に対して、生物学の授業を受けさせずに「自力で何とかしろ」と言うようなことは決してしないはずだ。
また、新たな働き手に対して、同僚との交渉、つながり、協働の手法を教えることで、一部の就職活動で見られる「AIへの不安」を和らげることもできる。そしてテクノロジーが進化し続けるなか、雇用主が求めているのは、生涯にわたりコンピュータ技術に触れてきた経験とリアルタイムの課題解決能力を組み合わせ、成長マインドセットと「学ぶ意欲」を兼ね備えた、新卒者のような「ネイティブ・テクノロジスト」であることに気づくだろう。
1990年代が教えてくれたことがあるとすれば、インターネットは労働力の焦点を確実に変化させたものの、それを破壊したわけではないということだ。インターネットは新たなスキル、新たな雇用、そして新たなビジネス領域をもたらした。そして、何百万人もの人々にチャンスを提供した。同じことがAIにも言える。今、私たちに課せられているのは、これらすべての世界の最良の部分をいかに融合させ、組み合わせるかを、次世代に迅速に指導することだけである。



