急ぎの案件でよく知らない顧客相手に“ASAP”と書く。上司に“Please give me some advice.”と頼む。返信が来ないので“I'm still waiting for your reply.”と催促する――。いずれも文法は正しい。だが関西学院大学国際教育・協力センター教授で英語教育が専門の高橋基治さんは「英語圏では、依頼のやりとりをする際には“断れる余地”を残すことが礼儀とされている」と指摘する――。高橋さんの著書『「教科書ぽくてちょっと変」を「ネイティヴみたいでなんかいい」に変える 教科書英語アップデートBOOK』(サンマーク出版)から一部抜粋、再構成してお届けする。
「Pleaseをつければ丁寧」という思い込み
英語のビジネスコミュニケーションで日本人がつまずくのは、たいてい単語や文法ではありません。「どのくらいの距離感で頼むか」という部分です。日本語なら「〜していただけますでしょうか」「〜してください」「〜して」を無意識に選び分けているのに、英語になるとその感覚が働かなくなり、教科書で覚えた一つの言い方をあらゆる相手に使ってしまう。
日本人学習者が最も誤解しやすい単語の一つが“Please”です。「“Please”は『お願いします』だから、つけるほど丁寧になる」と思われがちですが、実際の英語はもっと複雑です。“Please”は魔法の丁寧語ではありません。命令文に添えれば自動的に丁寧になるわけではなく、場面によっては「お願いだから」「いいから早く」と、相手を強く促すニュアンスを帯びることもあります。
英語圏では、依頼や許可のやりとりで「断れる余地」「選べる余地」を相手に残すことが礼儀とされています。この一点を知っているかどうかで、メールの印象は大きく変わります。
1.「月曜にお会いしたい」が自己中心的に響く
先方から「来週のご都合は?」と聞かれ、
✕ I want to meet on Monday.
“I want ...”は自分の希望をそのまま前面に押し出している感じで、ビジネスメールでは直接的すぎる印象があります。ネイティヴの心の声は「ストレートすぎる」「自己中心的」。
〇 I would appreciate it if you could meet on Monday.(月曜日にお会いいただけますと幸いです)
ビジネスメールの依頼表現の定番です。仮定法を使うことで「もしできれば」という相手への配慮が自然に込められます。同じく“It would be great if you could ...”(…していただければ素晴らしいです)、や“I would be grateful if you could ...”(…していただければ嬉しいです)でもOKです。



