気候変動への対応として、再生可能エネルギーへの世界的な投資はここ数年で急増している。
国際エネルギー機関(IEA)によると、再生可能エネルギー発電プロジェクトへの投資額は2026年に総額約6650億ドル(約107兆円)に達する見込みで、そのうち約3650億ドル(約58兆5000億円)が太陽光発電だけで占められると予測されている。
風力タービン、太陽光発電所(ソーラーファーム)、その他のクリーンエネルギーインフラは、化石燃料への依存を大幅に削減することに貢献してきた。特にロシア・ウクライナ戦争や中東危機など、進行中の紛争の余波の中でその意義は大きい。
しかし、これらの施設が拡大するにつれ、新たなサステナビリティ(持続可能性)の課題が浮上している。すなわち、低炭素の未来に必要なインフラを構築し続けながら、いかに生物多様性を守るかという問題である。
コウモリや鳥類を含む野生生物は、風力タービンや太陽光発電所から受ける悪影響が増しており、生物多様性の喪失、生態系への負荷、行動パターンの変化を招いている。これらは長期的な影響をもたらす可能性がある。
したがって、いま問われているのは再生可能エネルギーを拡大すべきかどうかではなく、より責任ある形でどのように拡大できるかである。
気候変動対策が生む生物多様性への圧力
化石燃料は、採掘、輸送、燃焼の影響により、長年にわたり自然生息地に大きな圧力をかけてきた。
こうした影響を考えれば、再生可能エネルギーの環境負荷ははるかに低く、気候変動の抑制自体が野生生物と生態系を守る最大の手段の一つでもある。
しかしそれでも、大規模インフラの多くは何らかの形で環境に影響を与える。
風力タービン、太陽光発電所、送電網といったクリーンエネルギープロジェクトは、依然として相当量の土地と資材を必要とし、完成までに数年を要するうえ、建設中には排出も発生する。
その結果、景観を大きく変え、これらの地域に依存する種に大きな影響を及ぼし得る。
これは生息地の喪失や分断につながる可能性があり、特に湿地、海洋生態系など、生態学的に敏感な地域にプロジェクトが建設される場合に顕著である。
これにより、採餌場や渡りのルートが分断され、コウモリや鳥類などの飛行生物は衝突リスクが高まる。また、騒音、照明、人的活動によって、動物の行動がさらに変化することもある。
したがって、クリーンエネルギーへの移行を加速させながら、生物多様性を守る方法を見出すことが、いまや極めて重要となっている。
風力タービンがコウモリと鳥類にもたらす複雑な課題
風力エネルギーは脱炭素化に不可欠だが、計画が不十分なプロジェクトは野生生物への圧力を大幅に増やすリスクがある。
特に、重要な生息地や渡りのルート(コリドー)の真っ只中に風車が設置されている場合、鳥類がタービンのブレード(羽根)に衝突する事故が発生しやすい。
タービンの高さと同じ高度を飛ぶ猛禽(もうきん)類や、予測可能な一定のルートを移動する渡り鳥は、特にこのリスクにさらされやすい。とりわけ、イヌワシやシロエリハゲワシ、アカオノスリといった鳥は、その大きさと重さゆえに、高速で回転するブレードを素早く避けることができない。
高高度の渡りルートを飛行するツルやペリカン、大型のカモメといった帆翔性の水鳥も、回転するブレードの速度や存在を見誤ることが多い。
スズメ目のように活発に活動する鳴鳥は、体が小さくても影響を受ける。夜間に渡りを行うこれらの鳥は、薄暗い照明や悪天候によって方向感覚を失い、ブレードに衝突することが頻繁に起こるためだ。
個体の死にとどまらず、これはすでに減少傾向にある脆弱な個体群、特に繁殖ペースが遅い種に対して打撃を与える。
シモフリコウモリ、アカコウモリ、シルバーヘアードコウモリなどのコウモリも、風力発電の拡大によって特に大きな影響を受けている。これはブレードへの直接的な衝突だけでなく、回転するブレードの近くで発生する急激な気圧変化に伴う「気圧外傷(バロトラウマ:急速な気圧変化で肺などの臓器が損傷すること)」によって肺が破裂することにも起因している。
長距離を移動し、さまざまな地域で多くのタービンに遭遇する渡り性の樹上性コウモリは、特に影響を受けやすい。
コウモリは好奇心が旺盛な習性があり、風力タービンの巨大な構造物に引き寄せられ、そこが採餌場やねぐらにならないかと探りを入れることがよくある。
コウモリは農業システムを支え、自然の害虫防除を担うため、生態系にとって極めて重要である。したがって、コウモリの個体数の減少は、広範な生態学的影響をもたらす可能性がある。
そのため、同じタービンであっても設置場所によって生態系に与える影響が大きく異なることを念頭に置き、計画段階で繊細なエリアを避けることで、リスクを大幅に軽減できる。
太陽光発電所と見過ごされがちな土地利用の問題
風力エネルギーと同様に、大規模な太陽光発電開発も、化石燃料より環境に優しいとはいえ、生息地への影響や土地利用に関する重大な課題を提起している。
というのも、産業用の大規模な太陽光発電所(メガソーラー)には膨大な土地が必要であり、その建設地には、独自の生物多様性が維持されている砂漠や草原などの生態系が選ばれることが多いからだ。
そのため、土地の造成や広大な敷地へのフェンスの設置により、地上を移動する動物が追い払われたり、移動経路が遮断されたりして、生息地の喪失や分断が発生するリスクが非常に高くなる。
また、ガラスパネルは偏光を反射するため、水鳥がパネルの配列を川や湖と誤認してしまうことがある。これにより、渡りを行う水鳥やシギ・チドリ類が水を飲んだり着水したりしようと急降下し、衝突して致命的な怪我を負うケースが生じている。
コウモリにとって、滑らかで水平な表面は「音響ミラー」として機能する。これは彼らが発するエコーロケーション(超音波による位置測定)のコールを、正面に返すのではなく角度をつけて反射してしまうため、反射音が戻ってこなくなる。その結果、コウモリはこの垂直なエコーパターンを、開けた水面や完全な空きスペースだと勘違いしてしまう。
パネルから水を飲もうとしたり、その空間に向かって飛び込もうとしたりすることで、構造物に激突することが頻繁に起こる。
ブリストル大学の研究によると、太陽光発電エリアの中心部では、コウモリ全体の活動が最大で3分の2も減少することがあるという。また、太陽光パネルを素早く渡るべき水域と勘違いすることで、自然な採餌行動も低下する可能性がある。
さらに、大規模な太陽光発電プロジェクトがパネルの下の微気候(周辺とは異なる局所的な気候)や植物の生育環境を変化させ、その地域の昆虫の個体数を減少させることも、この状況を悪化させている。これは、その地域に生息する食虫性のコウモリや鳥類に深刻な打撃を与える。
光起電力パネル(いわゆる太陽光パネル)にとどまらず、別の形態の太陽光技術も、野生生物に対して異なるリスクをもたらしている。集中型太陽熱発電(CSP)技術は、膨大な鏡の配列を用いて太陽光を中央のタワーに集光させ、強烈な熱エネルギーのゾーンを作り出すため、深刻な熱火傷(やけど)を引き起こす可能性がある。その周囲の熱は華氏数百度に達することがある。
まばゆい光に誘われて飛行する昆虫の大群が集まり、それを追って鳥たちがやってくる。鳥たちは、目に見えない高温の光線によって、空中で一瞬にして蒸発してしまう。
同様に、建設期間中には、重機による土壌の圧密(踏み固め)、一時的な粉塵、騒音公害などが発生し、現地の生態系を変え、植物や地表に生息する生物、昆虫の環境を変化させることで、野生生物をさらに混乱させる。
さらに、道路、送電線、蓄電施設といった付帯インフラの増設や、建設活動の活発化も、こうした負荷に拍車をかける。
再生可能エネルギーは生態系をどうよりよく守れるか
従来のサステナビリティの評価指標は、長年にわたり主に温室効果ガスの排出量に焦点を当ててきた。しかし現在、企業も政府も、ネットゼロ(温室効果ガス排出実質ゼロ)の目標達成と、生物多様性および生態系の保護を両立させる必要性を強く認識し始めている。
再生可能エネルギーの拡大ペースを落とすのではなく、よりスマートな開発を行うことこそが解決策である。
再生可能エネルギー事業者が生態系をより効果的に保護する方法の一つとして、計画と設置場所選定(サイティング)の改善が挙げられる。これには、渡りのルートや繊細な生息地を避け、環境負荷の低い場所を優先することが含まれる。建設が始まる前から生物多様性に関するデータを把握しておくことも、きわめて有効だ。
同様に、荒廃した土地を活用することや、自然に配慮した設計(デザイン)に注力することも、影響を抑える上で大きな効果を発揮する。
生態系全体への影響を可能な限り抑えた上で、次のステップとなるのが、衝突リスクの低減に努めることだ。
現在では、野生生物の活動を検知するために、人工知能(AI)を搭載したさまざまな監視システムを活用できる。レーダーやカメラシステムを用いて衝突リスクを特定し、生物種の行動をより正確に追跡することも可能だ。
太陽光発電所では、パネルの下や周囲に在来種の野草を植えることで、ミツバチやチョウ、ガなどの授粉媒介者(ポリネーター)の楽園を作ることができ、豊かな採餌場を提供できる。また、傾斜したパネルの合間や下でヒツジを安全に放牧し、土壌の健康を維持しながら草丈を自然に低く保つことも可能だ。
運用の変更に関しては、渡りのピーク時期にタービンを一時的に減速または停止させることが大きな効果をもたらす。同様に、コウモリの活動が活発になる時間帯に運転を調整することや、必要に応じて野生生物の忌避(遠ざける)技術を導入することも、大いに役立つ。
また、より厳格な環境影響評価(アセスメント)の実施や、プロジェクト建設後の長期にわたる的確なモニタリングを通じて、政策面からの改善もこれらの目標達成を後押しできる。
結論
エネルギー移行の次なるフェーズは、「低炭素」と「ネイチャーポジティブ(自然再興)」の両方を実現するものでなければならない。
将来の再生可能エネルギーインフラは、炭素への影響、土地利用、生物種の保護、および生態系のレジリエンス(回復力)を統合的に考慮することが不可欠だ。なぜなら、排出量を削減できても重要な生態系を破壊してしまう再生可能エネルギープロジェクトは、真の意味での持続可能な解決策とは言えないからだ。
したがって、再生可能エネルギー開発者や政府は、単に生態系への害を最小限に抑える段階を超えて、インフラがどのように生物多様性と共存できるかを積極的に検討していくべきである。



