足元の地盤が揺らぐ前に警告を受けた起業家に、私は会ったことがない。主要顧客が予告なく離れる。自社の事業モデル全体の前提としていた市場が一夜にして縮小する。採用凍結が人員削減に変わり、やがて事業を維持するための奔走に変わる。不確実性は、こちらの都合とは関係なくやってくる。
AlixPartnersの2026年版「Disruption Index」によると、自社で高水準の混乱が起きていると回答したCEOは70%に上った。一方、CEO以外の経営幹部では39%にとどまった。事業を率いるということは、結局のところ、組織の他の人々が目にしている以上の不確実性を背負うことを意味する。
そうした局面を生き延びる創業者と、そうでない創業者を分けるものは何か。備え、規律、そして本能的には立ちすくみたくなるときにもリーダーシップを取り続ける意思である。私は長年、創業者が困難な時期を乗り越えるのを支援してきたが、より強くなって抜け出す人たちには、次の3つの習慣が共通していることに気づいた。
1. 必要になる前に、精査する習慣を身につけている
多くの起業家は、何かに迫られて初めて、数字、人員体制、リスクエクスポージャーを見直す。その時点では、見直しは戦略ではなく反応である。私が最も尊敬する創業者たちは、何かが壊れているように見えるかどうかにかかわらず、同じ見直しを定期的に行っている。自社の資金状況を完全に把握している。どの顧客や収益源に過度に依存しているかを知っている。答えがまだ受け止めやすいうちに、自社について厳しい問いを投げかける。なぜなら、その答えが役に立つのはその時だけだからだ。
世界最大の災害復旧会社BELFORのCEOであるシェルドン・イェレンは、この本能を軸にキャリアを築いてきた。49カ国で事業を展開し、ハリケーンから、自らの業界を一変させたパンデミックまで、あらゆる事態に対応してきたイェレンは、安定と慢心は同じではないと学んできた。
「経済は変動する。災害は起きる。人は去る。トレンドは変わる。問うべきは、混乱が来るかどうかではない」と、イェレンは書いている。「それが起きたときに、実行し、受け入れ、人々を鼓舞する勇気と気概があるかどうかだ」
2. キャッシュフローを唯一の資産であるかのように守る。不況時には実際にそうだからだ
売上は、健全に見えなくなるその瞬間まで、健全に見えることがある。中小企業の経営者を対象としたSoFiの2026年調査によると、手元資金が3カ月分以下の事業者は55%に上り、多くの金融アドバイザーが最低限の備えとして推奨する6カ月分を確保しているのは約24%にすぎない。1四半期程度の業績低迷を吸収するにも、まして本格的な景気後退に耐えるには、不安なほど薄い余力である。
私は、創業者が2四半期にわたって拡大を減速させるほうが、資金繰りの猶予が最も重要になる局面でその猶予を使い果たすのを見るよりよいと考えている。現金は選択肢を与える。負債と薄い利益率は、その選択肢を奪う。困難な時期をうまく乗り切った創業者たちは、好調な時期に準備金を築いていた人たちであり、好況が終わってから慌てて探し始めた人たちではない。
3. すべての答えを持っていないときこそ、明確にコミュニケーションをとる
チームが必要としているのは、持っていない確信を持っているふりをする創業者ではない。何が分かっていて、何が分かっておらず、それでも計画は何なのかを率直に語る創業者である。Gallupが2025年に実施した調査では、従業員の10人に3人近くが、自社のリーダーは明確、誠実、かつ一貫してコミュニケーションを取っていないと答えた。このギャップは、企業が困難な局面に入り、従業員が推測するしかなくなったときに急速に広がる。
困難な時期の沈黙は、回避と受け止められる。曖昧な安心材料は、ごまかしと受け止められる。たとえニュースが良いものと悪いものの混在であっても、明確で誠実な情報共有こそが士気を保ち、人々が沈黙を最悪の想像で埋めるのを防ぐ。私は、リーダーが対話を続けたことで、本当に厳しい年月を通じて忠誠心を保ったチームを見てきた。一方で、はるかに小さな危機の中で、何が起きているのかを誰も伝えなかったというだけで、優れたチームが崩れていくのも見てきた。
リーダーであり続けるための規律
混乱は、一度だけ計画して忘れてよい特別な事態ではない。それは事業運営に繰り返し伴う状態であり、長く残る創業者は、混乱が現れるたびに対応する力を鍛えている人たちである。
次の変化が訪れる前に、警告はないだろう。だが、それに向き合う規律を今から築くのか、それとも今回は自分を避けてくれることを願うだけなのかは、今この瞬間に決めることができる。



