Adobe(アドビ)と共同で構築され、「Project Fizzion(プロジェクト・フィジオン)」と名付けられたこのシステムは、AIによってブランドの一貫性を統制するためのモデルをマーケティング責任者に提示するものだ。
コカ・コーラは、一新したグローバル・ビジュアル・アイデンティティを発表した。それと同時に、Adobeと共同開発した人工知能(AI)システムを導入し、200以上の市場でブランドがどのように適用されるかを管理している。同社はこのシステムを「Project Fizzion」と呼んでいる。
Fizzionは、従来は長大な静的文書群だったコカ・コーラのブランドガイドラインを、同社が「StyleID」と呼ぶ機械可読形式に変換する。このアイデンティティには、同社のツールがフォーマットや地域をまたいで自動的に適用できるデザインルールが符号化されていると、コカ・コーラは説明している。
このシステムは、IllustratorやPhotoshopなどのAdobe Creative Cloudアプリケーションに組み込まれている。デザイナーが作業する際、Fizzionはその選択を把握し、ブランドルールをリアルタイムで適用すると、Adobeは述べている。一度学習したStyleIDは、各クリエイティブをブランドに沿った状態に保ちながら、ローカライズされたキャンペーンのバリエーションを生成できる。
このシステムに伴うビジュアル刷新は、比較的抑制されたものだ。中心となるのは、赤と白のカラーパレット、スペンサリアン・スクリプト(筆記体ロゴ)、ダイナミック・リボンというコカ・コーラの中核資産であり、缶に縦型のワードマークを導入し、マルチパック(複数本パック)の画像を更新し、コカ・コーラ ゼロシュガーの外観を再設計している。
マーケティングやブランドの責任者にとって、より応用可能性が高いのはこのシステムそのものだ。現在のマーケティングにおけるAI導入の多くは、コンテンツ制作量の増加を目的としている。しかし、コカ・コーラの取り組みは、この技術をブランドガバナンス、すなわち制作量が拡大しても一貫したアイデンティティを損なわないことに適用している。
コカ・コーラは、この技術をデザイナー主導のものと位置付けている。Adobeはその作業原則を「デザイナーが主導し、AIがそれに従う」と説明しており、コカ・コーラのグローバルデザイン担当バイスプレジデントであるラファ・アブレウは、その目的について「創造性が魂を失うことなく、より速く動けるように」AIを組み込むことだと述べている。
コカ・コーラは1日あたり約22億杯の飲料を提供しており、各市場ではローカルキャンペーンに合わせてブランドが調整される。これほどの規模で一貫性を維持するには、従来、個々のクリエイティブをブランド基準に照らして手作業で詳細に確認する必要があった。Fizzionは、その作業を自動化するよう設計されている。
この機能はコカ・コーラに限られない。Adobeは、Firefly Design Intelligenceを含むブランド認識型の生成ツールを法人顧客向けに拡張しており、コカ・コーラはその初期導入企業の1社である。この流れは、ブランドガバナンスAIが、大規模な代理店によるレビュー体制を持たない中堅企業や小規模なマーケティングチームを含む、より幅広い企業へ広がっていくことを示している。
コカ・コーラは、このシステムはコスト削減策ではないとしている。同社の広告費は2024年の51億ドル(約8170億円)から2025年には54億ドル(約8650億円)に増加し、純営業収益は2%増の479億ドル(約7兆6800億円)となった。
マーケターにとって残る論点は、符号化されたこのシステムが市場でどのように機能するのか、そしてAIを通じてより多くのコンテンツが制作されるなかで、ブランドの独自性がどのように保たれるのかである。コカ・コーラの展開は、その双方について業界が注視すべき初期の大規模事例となる。



