3つの取引所、3年間、半分近くまで縮んだ評価額──SHEINが香港で公開した上場聴聞後資料(PHIP)は、「何でも安い時代」が終わりへ向かう現実を、監査済み数値で映し出している。
会計業界にはこんな言い方がある。目論見書は監査のようなものだ。誰も好まないが、議論に決着をつける力がある。
米国時間7月26日、SHEINは香港証券取引所で上場開示書類を公表した。正式な目論見書ではなく、内容が変更される可能性を残したPHIPと呼ばれる開示文書だ。記憶にある限り最も長く続いた新規株式公開(IPO)ロードショーともいえる一連の動きに区切りがついた。3年間にわたり、3大陸の3つの取引所を巡ったのである。
世界で最も厳しく注視されてきた未上場企業をめぐって、メディアによる憶測が何百ページにも及んだ後、ついに監査済みの数字が示された。その内容は、実に多くを物語っている。
ニューヨークから香港へ、3年越し上場計画がたどった道
これまでの道のりを振り返ってみよう。SHEINは2023年11月に米証券取引委員会(SEC)へ非公開で申請した。投資銀行関係者の間ではバリュエーションが最大900億ドル(約14兆2200億円)に達するとの見方がささやかれ、Financial Timesは利益が20億ドル(約3160億円)超に倍増したと報じていた。
だが、ワシントンは難色を示した。当時上院議員だったマルコ・ルビオは、この案件をSECが阻止するよう求めた。筆者は本誌で、開示を求めて市場に入ろうとする企業を締め出すことは米国的ではないと論じた。我々の制度では、投資家を守るのは目論見書であり、禁止措置ではない。
米英で止まった計画、中国証監会から届出通知を得て香港へ
SHEINはロンドンへ向かった。そこでは英国の規制当局が上場を承認したものの、中国の証券規制当局である中国証券監督管理委員会(CSRC)はついに承認しなかった。当時、筆者がNikkei Asiaに語ったように、SHEINの課題は海外の規制当局を満足させながら、北京当局の意向に沿い続けることだった。「通さなければならない針の穴」である。ロンドンでは、その針に糸が通ることはなかった。
2025年7月には香港で非公開申請が行われ、中国の規制当局は今年7月10日、最大3億4161万3000株を香港取引所へ上場する計画について届出通知書を交付した。上場開示書類は同月26日に公開され、ゴールドマン・サックス(NYSE: GS)、モルガン・スタンレー(NYSE: MS)、JPモルガン(NYSE: JPM)が共同スポンサーを務める。市場では初秋までの上場が見込まれている。



