米国人は老後を安心して暮らすためにいくら必要だと考えているのだろうか。英資産運用会社シュローダーが7月に発表した2026年版「米国退職調査」によると、答えは120万ドル(約1億8900万円)だ。
100万ドル(約1億5800万円)あれば、まずまずのスタートということになる。問題は、回答者の半数以上が、退職を迎える時点の資産は50万ドル(約7900万円)に満たないと予想していることだ。4分の1近くは25万ドル(約4000万円)にも届かないと見込んでいる。
また、退職後に資金が尽きてしまうことに多少なりとも不安を感じている人は、実に81%にのぼっている。
この業界に長く身を置いてきた者として、こうした数字を見て心もとなく感じてしまう理由はよくわかる。けれども、絶望する必要はない。市場の長期的な実績に照らせば、多くの人が抱える資産不足は投資リターンの低さというよりも、たんに市場への参加──投資を始めて、それを続けていくこと──ができていないことに原因があるように思われる。
長い目で見れば市場は手堅い仕事をしている
まず事実を見ておこう。過去25年間、S&P500トータル・リターン指数は複利で年率8.83%成長した。この期間には、ドットコム・バブルの崩壊、世界金融危機、新型コロナショック、2022年の弱気相場などが含まれる。
バンク・オブ・アメリカ(BofA)傘下の資産運用会社メリルの調査チームは、長期の実績をさらに明確に示している。1950年以降のどの15年間もしくは20年間のスパンでも、S&P500の年率ベースのトータルリターンは常にプラスだった。例外なく。時間がたてば相場の変動(ボラティリティー)が消えるというわけではないものの、辛抱強く投資を続ける投資家ほど報われる確率は高くなる。
市場が長期的には高い確率で期待に応えてくれるのだとしたら、どうして米国の貯蓄者の半数は老後資金の目標に届かないと予想しているのだろうか?
フィラデルフィア連邦準備銀行がこの問いに関連した調査を行っている。それによると、米国の成人のうち、自分名義で株式を保有している人は半数にも満たないことがわかった。理由として最も多かったのは「十分な資金がない」(45%)で、次いで「株式市場のことがよくわからない」(39%)だった。以下、値動きが激しすぎる、ほかに優先すべき出費がある、過去に株式投資で嫌な経験をしたことがある、といった理由が続いた。



