筆者は、これは「市場に参加していないこと」の問題だと考えている。そして、この問題は解決できる。
「複利」の持つ力
繰り返しになるが、S&P500は過去25年間、分配金を再投資した場合で年率8.83%のリターンをあげてきた。一方、分配金を再投資しなかった場合の年率リターンは6.80%となっている。その差は2ポイントあまりだ。
年率2ポイントというのは、たいした違いのように聞こえないかもしれない。しかし、その差は時間とともに複利で積み重なっていく。最終的にどれほどの違いを生むか見てみよう。
10万ドル(約1580万円)のポートフォリオを年率8.83%で25年間運用すると、資産は約82万9000ドル(約1億3100万円)まで増える。一方、同じ10万ドルを年率6.80%で運用した場合、つまり分配金を現金で受け取り、そのまま使った場合には、資産は約51万8000ドル(約8160万円)にしかならない。
その差は30万ドル(約4700万円)強になる。投資対象のインデックスも同じ、保有期間も同じ、その間に経験した相場暴落も同じ。違う点はただひとつ、分配金を再び運用に回したかどうかだ。
米パーソナルファイナンス専門誌キプリンガーの最近の記事では、複利を「お金が持つスーパーパワー」と表現し、配当金や利息、キャピタルゲイン(値上がり益)を再投資しなければ、その力は十分に発揮されないと指摘している。資産をさらに増やすには、投資運用で得た利益自体を、新たに利益を生み出せる状態にしておく必要があるということだ。
これはとくに、退職が近づいている人や、いままさに迎えている人にとって重要なことだ。60歳前後になると、分配金を再投資から現金での受け取りに切り替える人が多い。しかしその際に、この変更がポートフォリオ運用上の重要な判断だと認識している人は少ない。たんなる事務的な手続きのように思われているのかもしれないが、これは実際は生涯で最大の資産配分(アロケーション)変更になる可能性がある。
時間こそ決定的な要素
別の視点から考えてみよう。
3年後に必要なお金と、20年後に必要なお金は同じではない。だから、両者を同じように運用すべきではない。
危険なのは、相場の暴落や5年にわたる低迷といった市場の動きそのものではない。危ないのはむしろ、その最中に一部の投資家がとってしまいがちな行動だ。


