経営・戦略

2026.08.01 15:16

AIを「個人の生産性」から「組織のインパクト」へ拡大する方法

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新入社員の初日を想像してみてほしい。その人はすべての面接を見事に突破し、あらゆる関係者に好印象を与え、その役割に完全に適任であるように見える。そこであなたはオンボーディングを一切省き、最も重要で複雑な業務を任せ、そのまま走り出させる。

ほとんどのリーダーは、そのようなことは決してしないだろう。だが、AIエージェントをめぐって、同じような事態があらゆる規模の組織で起きている。リーダーたちはClaude(クロード)のような「新入社員」にレッドカーペットを敷いて迎え入れているが、AIが企業に入ってくる時点では「非常に優秀な見知らぬ存在」であることを忘れている。AIには並外れた能力がある一方で、組織固有の文脈はまったくない。組織内で実際にどのように意思決定が行われているのか、どのプロセスが規則の例外なのか、文書化されていないどの回避策によって業務が回っているのかを、生まれつき理解しているわけではない。

組織がAIの潜在能力を最大限に引き出せるかどうかは、テクノロジーそのものよりも、その背後にある業務基盤に大きく左右される。BCGによれば、AIが生み出す価値の70%は人とプロセスの変革に由来し、アルゴリズムやインフラが占める割合はそれより小さい。AIから意味のあるROIを得るには、組織は自社ビジネスの業務実態を可視化しなければならない。

AI変革に欠けている「中間段階」

ほとんどの組織は、AIによってどこへ向かいたいのかを理解している。一方で、そこへ到達するために何が必要かを理解している組織は少ない。真のAI変革は3つの明確な段階を経て進むが、多くの企業は最も重要な段階を飛ばしている。

第1段階:個人のAI

これは、現在ほとんどの組織が位置している段階である。いまやほぼすべてのナレッジワーカーが、ChatGPT(チャットGPT)、Copilot、Gemini、Claude(クロード)など、会社が提供するLLM(大規模言語モデル)にアクセスできる。Lucid Softwareの「AI at Work」調査では、AI利用者の3人に2人がスピードと効率の向上を挙げている。

課題は、こうした成果が主に個人レベルにとどまっている点だ。チームはより多くのコンテンツやコード、分析、成果物を生み出すが、作業が速くなること自体が自動的に連携の向上につながるわけではない。共有された文脈や整合性がなければ、生産性は局所的にとどまり、組織全体に波及して積み上がることはない。

第2段階:可視化とマッピング

これが「欠けている中間段階」である。AIが組織を変革する前に、AIはその組織がどのように運営されているかを理解しなければならない。AIエージェントには、プロセス定義、システムマップ、意思決定ロジック、ビジネスルールといった構造化された文脈が必要だ。ところが、ほとんどの組織は自社のプロセスを明確に把握したり理解したりできていない。ワークフローは文書化されていない。あるいはさらに悪いことに、信頼する人がほとんどおらず、維持する人はさらに少ない古い文書の中に散在している。

多くの組織にとって、その基盤は存在していない。Lucidの調査では、回答者の半数超(50.8%)が、自社の文書は機能しているものの、なお不完全だと答えている。この問題は、最も成熟した組織でさえ続いている。あるFortune 50企業の幹部は最近、プロセス情報の信頼できる唯一の情報源がどこにあるのか分からないと筆者に語った。

重要なワークフローがスプレッドシート、属人的な知識、散在する文書、古い図表の中に存在している場合、チームはプロセスの一部を理解していても、システム全体を見渡せる人はほとんどいない。その結果、組織は、個別のユースケースを超えてAIを拡大するために必要な文脈をAIに提供することに苦労する。

第3段階:組織のAI

この段階では、テクノロジー、プロセス、組織設計が一体となって進化する。AIはもはや個人の仕事を速くするだけではない。ビジネスの運営方法そのものを変え、組織規模で生産性を引き上げる。

これは、すべての経営幹部が到達したいと考える目的地である。プロセスは文書化され可視化され、テクノロジーと組織設計は連動して進化し、人間とAIエージェントからなる高度に協調したハイブリッドな労働力が実現している状態だ。

多くの企業は、自社の業務を明確に理解しないまま組織レベルのAIを導入することで、第1段階から第3段階へ飛び移ろうとしている。この「欠けている中間段階」こそが、生産性のパラドックスが存在する理由である。第2段階は前提条件だ。その可視性がなければ、組織のAIは幻想にすぎない。

月曜の朝から始めよう

個人のAIと組織のAIのギャップを埋めるのに、取締役会の決議や、数カ月にわたる運営委員会、網羅的なRFPプロセスは必要ない。それは、組織知を人々の頭の中から取り出し、誰もが見て、異議を唱え、改善できる共有環境に移すことから始まる。

それは、月曜の朝に視覚的で協働可能なワークスペースを開き、あるプロセスが実際にどのように機能しているのかをマッピングするほど簡単なことでもよい。紙の上でそうあるべき姿ではなく、現実にどう動いているのか、事業を動かしている引き継ぎや人間の判断を捉えるのである。そのうえで、その作業をチーム、部門、そしてAIが組み込まれるあらゆる場所へ繰り返し、拡大していく。プロセス、システム、依存関係をマッピングし、エージェントが自社の実際の運営のあり方を正確に示す設計図を持てるようにするのだ。華やかな作業ではないが、組織内でAIの大きな可能性を実現する唯一の道である。

「欠けている中間段階」は最終的に、より広範な業務上の現実を映し出している。組織は、見えていないものを改善することに苦労する。AIは今日、最も差し迫った例かもしれないが、この原則はあらゆる変革の取り組みに当てはまる。目標が効率向上であれ、より良い意思決定であれ、AI導入の成功であれ、暗闇の中で運営されている企業を、人間もAIも高度化することはできない。

forbes.com 原文

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