絵空事から現実へ
「これはついに、SFではなく本物の科学になったのでしょうか。本物の科学的な方向性、科学的な装置、科学的な仮説を備えた科学に」。理論上の話として、この壮大な意識アップロード実験についてデンはそう問いかけ、自ら答えた。「イエスです。間違いなく、イエスです」。
デンはこう続けた。
「技術が急速に発展するこの世界では、過剰な期待も、疑いの目も、どちらも圧倒的な力を持ちます。ですが、有名な言葉にこうあります。『私たちは神を信じる。それ以外の者はデータを持ってこい』。科学者として、信頼できる測定を持ち寄り、そのデータを誠実に解釈することが、私たちの社会的責任です。そしてその責任は、全脳エミュレーションに対して社会が寄せる要求を考えると、いっそう重みを増します」。
ただし、これらすべてには時間がかかる、とデンは指摘した。
「この目標がゴールにたどり着くには、十分な資金に支えられた緊密な共同研究を何十年も続けることと、人々の関心が途切れずに保たれることの両方が必要です」とデンは言う。「その見返りとして、人類への影響もまた、大きな変革をもたらすものになるでしょう。神経疾患からAIまで、感情の理解から、人間であるとはどういうことかの理解まで、あらゆる領域にわたって」。
議論をすべての人に開く
締めくくりにデンが述べたもう1つの要点を紹介したい。AIの未来や、技術が誰にも平等に行き渡ることの必要性を語る人たちから、私が何度も耳にしてきた話と重なる内容だ。
「全脳エミュレーションがもたらす衝撃は、研究が進むほど大きくなっていきます。だからこそ、この議論を神経科学者やテック業界の億万長者だけのものにしておくわけにはいきません」とデンはいう。
「議論は私たち全員のものであるべきです。というのも、私たちにとって、全脳エミュレーションの最大の贈り物は、デジタルな不死である必要はないからです。あなたをあなたたらしめ、私を私たらしめているものへの深い理解であってもいい。これまで哲学の問いとしてしか立てられなかったことを、私たちは初めて、科学的に測定できる形で問われています」。
「『あなたがあなたであるために必要な、最小限の情報とは何か』……。そしてその問いに答えようとするなかで、私たちは気づくことになるかもしれません。脳を作り直すことがどれほど並外れた営みかということだけでなく、あなたがすでに持っている心こそが、どれほど並外れたものかということに」。
たしかに、私たちの心は並外れている。だが私にとっては、その哲学的な問いと格闘すること自体が何より面白い。そして科学は前へ進み続けている。


