サイエンス

2026.08.03 12:00

脳をアップロードするには何が必要か

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研究者たちは神経科学とAI、そして厳密なデータを組み合わせて全脳エミュレーション(脳全体をコンピューター上で再現すること)を前進させ、意識を科学的に探ろうとしている。

これほど科学が進んだ時代にあってなお、私たちを戸惑わせる根本的な問いがある。人間の脳とは何なのか。何が脳を特別なものにしているのか。そして、個々人の自我や意識、魂と呼ばれるものは、どこに宿っているのか。ときおりこうした問いに思いをめぐらせる人は多いだろう。

この問いは、ある意味で、私がMIT時代から敬愛してきた研究者の1人、マーヴィン・ミンスキーの仕事に触れるものだ。著書『心の社会』で、ミンスキーは人間の脳の複雑さを論じ、脳は1台の大きなコンピューターではなく、数百台の小さなコンピューターがつながったものだと主張した。

だが脳は生物でもある。この点が、こうした研究にAIを活用しようとする神経科学者にとって、実に厄介な壁になってきた。

この話題に少しでも関心があるなら、本稿を最後まで読むことをお勧めしたい。私が最近聴いたある講演が、人間の脳をアップロードするという可能性について、私たちがどこへ向かっているのかを大きなスクリーンに、大きな活字で示してくれたからだ。

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そう、はっきり言おう。人の脳が身体から首尾よく脱け出すために理論上何が必要になるのか、それを突き止めようとしている科学者がいる。

ハーバードとMITが共同で運営する保健科学技術(HST)プログラムの博士課程に在籍するデイビー・デンは、先ごろ開かれたTED×MITで、この種の科学について語った。冒頭の指摘の1つが、私にはとりわけ興味深かった。東海岸のMITと西海岸のバークレーの両方に関わりを持つデンによれば、脳のアップロードの話を始めると、西海岸の人たちは身を乗り出して受け入れる姿勢を見せるのに対し、東海岸の人たちは腕を組んだり、どこか抵抗を示したりすることが多いのだという。

これは、遠く隔たった2つの海岸で人類の歴史をどう扱うかの違いに関係しているのかもしれない、と私は考えた……おっと、話がそれた。デンの講演の大半は、先の本質的な問いに費やされた。何が必要になるのか。そして、どうやってそれを実現するのか。

デンによれば、核心にある問いは、人間の脳が「基質独立(substrate-independent。脳の働きが生身の神経細胞という素材に縛られないこと)」なのかどうかだ。つまり、脳を身体から切り離し、別の土台の上で動かすことができるのか。ここから、デンが「3つの部分からなる工学的問題」と呼ぶものが出てくる。彼はこう述べた。

「心を定義するデータとは何か」とデンは問いかけた。「それをどうやって測るのか。そして、そのデータがすべてそろったとき、どうやってそれを動かすのか」。

3つ目がとんでもない難問だ。

これほど複雑なものに、そもそもどう手をつければいいのか。デンはそう問いかけた上で、興味深い部分的な答えを示した。

「非常に複雑な系にどう取り組むのかと数学者に尋ねれば、『まずもっと簡単な問題を解く』とか『その問題をもっと簡単な問題に置き換える』と答えるでしょう。簡単な問題が元の問題と同じだからではありません。そうすることで、「解けた」とはそもそもどういうことなのかを、否応なく理解させられるからです」。

そしてデンは、いささかフランケンシュタイン的な調子で、この実験を行うには脳そのものが必要になると付け加えた。

「(この構想を)単なる空想、幻想や奇跡についての当てずっぽうから、科学的に擁護できる営みへと進めるには、完全な測定と摂動(外から刺激を加えて反応を見ること)、そして予測が可能な実験用の脳を手にしなければなりません。言い換えれば、進歩を数値で測り始める前に、成功とはそもそも何を指すのかについてのグラウンドトゥルース(答え合わせの基準となる、実測に基づく正解データ)が必要なのです」。

不可能に思えるだろうか。そう決めつけるのは早い。

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翻訳=酒匂寛

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