米国時間7月31日、デンマークの製薬大手ノボノルディスクの株価が急落し、時価総額で約217億ドル(約3.4兆円。1ドル=157円換算)以上が吹き飛んだ。同社が開発中の新薬が後期の大規模臨床試験で失敗に終わったと発表したためで、肥満症治療薬以外への事業拡大の機会を逃したとしてアナリストからの批判を集めている。
株価9.3%急落、年間1.5兆円超の事業成長機会が消える
31日午前の時点でノボノルディスク株は9.3%安の約46.70ドルをつけ、今年2月以来最大の日中下落率を記録した。年初来では10.6%の下落となる。
ノボノルディスクは31日、開発中の「ジルチベキマブ(ziltivekimab)」の後期臨床試験において、心臓発作や脳卒中といった主要心血管イベント(MACE)を低減するという目標を「達成できなかった」と報告した。なお、同薬がどの程度リスクを低減させたかについては開示していない。
ジェフリーズのアナリストらは顧客向けレポートの中で、ジルチベキマブは少なくとも20%のリスク低減を示す必要があったと指摘した。今回の治験結果により、年間100億ドル(約1.57兆円)以上の価値をもたらす可能性があった新しい事業成長の機会が事実上消滅したとして、「戦略的にネガティブ」だと評価した。
ゴールドマン・サックスのアナリストらは治験結果の発表前に同薬の可能性を高く評価しており、ジルチベキマブはノボノルディスクが心血管疾患治療の分野におけるブランドを構築し、オゼンピックやウゴービに大きく依存する潜在的なリスクを軽減し得るとレポートに記していた。
時価総額、2024年6月の最高値から69%近く落ち込む
31日の株価下落によりノボノルディスクの時価総額は307億ドル(約.814兆円)減少した。前日の2292億ドル(約35.98兆円)から1985億ドル(約31.16兆円)へと減少し、2024年6月に記録した過去最高の6357億ドル(約99.8兆円)からは69%近く落ち込んでいる。
注射薬に続き飲み薬のウゴービを投入し、市場の拡大に動く
ノボノルディスクは近年オゼンピックやウゴービなどで成功を収めつつも、売上高のさらなる増加を狙って他の分野への拡大にも取り組んできた。同社は自社製の肥満症治療薬に飲み薬バージョンを追加することでこの市場の拡大に動いている。すでにアラブ首長国連邦(UAE)と英国でウゴービの経口薬を発売し、米国やその他の国々での販売も計画する。
競合イーライリリーの広告を欺瞞的と訴え、訂正広告を求める
ノボノルディスクは7月初旬、競合のイーライリリーが「欺瞞的」な広告を出稿しているとして同社を激しく非難した。ノボノルディスク側は、イーライリリーが古いデータを用いてノボノルディスクの製品の効果を低く見せかけていると非難している。同社は法廷外での紛争解決を模索したというが、裁判資料によれば。「イーライリリー側は、自社の広告は『真実』であり、『透明性が高い』と主張して(和解を)拒否した」という。また、ノボノルディスクの申し立てでは、「消費者の心に誤った信念を植え付けた」ことを明示する、訂正広告を出すよう同社に命じることも裁判所に求めている。



