極めて優秀な航空機エンジニアだったという理由でその人をパイロットとして採用する場面を想像してみてほしい。
あるいは、病院で最も優秀な外科医だったという理由でその人を院長に任命することを考えてみてほしい。
荒唐無稽に聞こえるのは、ある仕事を自分で遂行することと、その仕事をする人たちを率いることには異なる能力が必要であることを私たちが本能的に理解しているからだ。
それでも、組織では毎日このような間違いが繰り返されている。
最も高い成績を上げている営業担当者が営業部長になる。最も才能のあるソフトウェアエンジニアが開発チームの管理を任される。誰もが頼りにしていた経理担当者が突然、財務予測の作成ではなく業績評価を行う立場に置かれる。
その人事がうまくいかないと、私たちはたいてい本人を責める。まだ準備ができていなかったのかもしれない。そもそもリーダーシップを取る職務に向いていなかったのかもしれない。だが私たちが間違った問いを立てている可能性がある。
優秀な従業員が管理職になると苦労する場合があるのはなぜかと考えるのではなく、なぜ私たちはある職業での卓越した能力が自動的に別の職業での適性を保証すると思い込んでしまうのか、と問うべきかもしれない。
なぜなら、管理職になることは昇進ではないからだ。それはキャリアチェンジなのだ。
優秀さを支えていたスキルの重要性が低下することも
ある人を現在の役割で欠かせない存在にしているものについて考えてみよう。
その人は問題を素早く解決し、ほかの誰よりもミスが少ない。答えを持っているため、同僚たちはその人を頼る。
そして、その人が管理職になる。ほぼ一夜にして成功の定義が変わる。
自ら優れた成果を上げるのではなく、他の人が優れた成果を上げられるよう支援することが役割になる。答えることで評価されていた問いは、今度は自分が投げかけることを期待されるものとなる。
この変化は組織が認識している以上にはるかに大きなものだ。
技術的な専門知識は、リーダーとしての有効性を予測する要因として限定的なものにすぎないことが研究によって一貫して指摘されている。平均的な管理職と優秀な管理職の違いがよく現れるのはコミュニケーション能力や感情知能、指導力、信頼を築く能力においてだ。
この皮肉は看過できない。
多くの企業は問題解決に非常に優れているという理由で従業員を昇進させながら、その一方でその人が「問題を解決する人」であることをやめさせようとする。



