仲裁廷は主権を裁かず、岩や暗礁の法的地位を確定した
この裁判は、主権を直接争うものではなかった。仲裁裁判所には、係争中の「海上地物」(南シナ海において領有権が争われている岩、礁、島、低潮高地の総称)の主権を判断する管轄権はなかった。この裁判は、ビジネス、環境、天然資源、および航行の自由に関連する国家の権利を規定するUNCLOSへの違反に関するものだった。しかし、中国が人工島建設やスカボロー礁での危険な活動を通じてUNCLOSに違反したかどうかを判断するために、仲裁裁判所は各地物の法的地位を決定する必要があった。そしてその決定は、主権領土や天然資源に関連する権利に影響を及ぼすことになる。たとえば、「岩」は12海里の領海を生じさせるが、排他的経済水域(EEZ)は生じさせない。低潮高地や礁は何も生じさせない。
仲裁裁判所は、フィリピンの全面的な勝訴を言い渡した。裁判所は、争点となった地物のいずれも法的な意味での「島」ではないと認定した。この結果、中国の九段線と人工島造成の双方が無効化されることになり、中国の国家的プライドに大きな打撃を与えた。また、裁判所は中国が深刻な環境破壊を引き起こし、フィリピンの要員や漁民の権利を侵害する危険な操縦を行ったとも認定した。中国は即座に反応し、この決定を1枚の「紙くず」と呼び、これを非難する世界的なメディアキャンペーンを展開した。
中国は10年にわたり南シナ海仲裁裁定に従わず、実力行使を続けてきた
10年が経過した今、この裁定の意義に懐疑的な人々が指摘できる材料は数多くある。結局のところ、中国は人工島を放棄しておらず、むしろその軍事・監視能力を増強させている。この裁定が下される2カ月前、フィリピンではロドリゴ・ドゥテルテ大統領が当選した。ドゥテルテは米国から距離を置き、中国に急接近したことで知られる(そして現在は、人道に対する罪で国際刑事裁判所での裁判を待つ身である)。中国の法執行船や軍用船は、南シナ海で危険な活動を続けており、頻繁に放水砲を使用し、2024年には領有権が争われている地物でフィリピン海軍兵の親指を切断する事態まで引き起こした。フィリピン政府はASEAN議長国として、2002年以来ASEANが追求してきた「南シナ海行動規範」の策定に向けて中国との交渉を今も続けているが、進展はほとんどない。その最大の障害の1つは、中国がこの規範に法的拘束力を持たせることを拒否している点だ。
「自然保護区」を口実にスカボロー礁の支配を固めている
中国はまた、現在もスカボロー礁の支配を維持しており、その主張を補強するためにローフェアを利用している。裁定後、中国は数年間にわたりフィリピン人漁師がスカボロー礁に戻ることを容認していた。2019年、中国の習近平国家主席は当時のドゥテルテ大統領に対し、仲裁裁定の放棄と引き換えに巨額の石油・ガス開発取引を提案した。ドゥテルテがこれを拒否すると、中国は再びフィリピン人漁師のスカボロー礁への立ち入りを妨害し始めた。2025年、中国は同礁に対する領有権の主張をさらに強化した。同地に「自然保護区」を設立し、同礁で操業するフィリピン人を逮捕するための国内法上の口実を作り出したのである。さらに、中国は裁定の論理を逆手に取り、自らを環境の「合法的な」保護者として位置づけた。


