ウクライナ防衛軍の偵察ドローンは前進してくるロシア軍部隊を探知し、迅速な対応を指示した。フェニックス部隊はFPV(一人称視点)ドローンや重爆撃ドローンを投入したり、火砲を誘導したりして迎え撃った。別部隊の映像には、同じ進撃軸のほかの地点で装甲車両が攻撃を受ける様子も見える。
ウクライナ防衛軍は事前に、想定されるロシア軍の接近経路に地雷原を敷設するとともに、自軍陣地へ通じる複数の橋を損傷させていた。ロシア軍は攻撃中、浮橋(ポンツーン・ブリッジ)を架設して渡河地点の復旧を試みたとされるが、これらの浮橋はウクライナ空軍の戦術航空部隊によって破壊された。
アゾフ軍団は、この戦闘でロシア軍は戦車7両、装甲戦闘車両6両、グラート1両、タルナード-S多連装ロケットランチャー(MLRS)1基、特殊装備3基、軽量車両47台を撃破され、人的損害も150人以上にのぼったと報告している。
ロシア国防省はこの作戦について詳細を公表していないため、目標地点に到達した部隊があったのかは不明である。とはいえ、少なくとも装甲車両に関しては、探知されずに交戦地域を越えて進撃できた可能性は低い。他方、オートバイで移動した歩兵部隊のなかには、主交戦地域を迂回し、目標の浸透地点まで到達した部隊もあったのかもしれない。
ロシア軍はなぜ機械化攻撃を試みたのか? 3つの可能性
ロシア軍は1年以上前から、このような機械化攻撃をあまり行わなくなっていた。ウクライナ側のドローンによって繰り返し甚大な損害を出す一方、戦果は乏しかったからである。フェニックス部隊によると、自部隊の担当区域でも、これほどの規模の強襲は長い間なかったという。ロシア軍の司令部が今回の大規模な機械化攻撃を命じた理由は判然としない。
考えられる可能性のひとつは、自軍による最近の浸透作戦で築いていた基盤を活用しようとしたというものである。しばらく前から、ロシア軍は歩兵の小部隊をウクライナ側の防御線近くに潜入させて、隠蔽陣地を設ける戦術を採ってきた。これらの浸透陣地は敵部隊をかき乱し、防御の弱点を探り出し、その後に続く作戦の機会をつくり出す役割を果たす。ただ、こうした浸透部隊は突破を達成するのに必要な火力やマス(戦闘力の集中)を欠いている。ロシア軍の司令部は、機械化部隊による前進を支援するのに十分な数の浸透陣地を確保できたと判断して、次の段階として今回の機械化攻撃を実施することにしたのかもしれない。
別の可能性として、ロシア軍はウクライナ側の防御態勢の変化を突こうとしたとも考えられる。ウクライナ防衛軍は浸透を図るロシア軍部隊について、陣地を設ける前の段階で発見・排除することに重点を置くようになっている。そのために、ドローンで広範な偵察を継続的に行うとともに、即応打撃チームに広い範囲で作戦行動を実施できる態勢をとらせておくことが必要になっている。仮にこうした戦力が浸透部隊への対処に集中しているなら、ロシア軍の作戦立案者は、大規模な機械化攻撃を仕掛ければ、ウクライナ側がドローンや火砲、対戦車兵器を集中投入する前に主防御線まで到達できる可能性が高くなると評価していたのかもしれない。


