今週初め、ディズニーは新たな人員削減を発表した。今回はピクサー、ナショナル ジオグラフィック、そしてESPNの一部であるNFLネットワークが対象となった。今回の削減は、4月にマーベル・スタジオなど複数部門に影響を及ぼした人員削減に続くものだ。その際、削減の理由は「全般的なコスト削減と人員圧縮」、およびマーベル作品のラインアップ縮小とされた。しかし同時に、スタッフ職を削減し、フリーランスの請負業者に業務を担わせるという業界全体の大きな潮流にも沿っている。4月の報道では、「部門全体の大半が解雇され、プロジェクト単位で人材の採用を調整するための少人数のフルタイム制作スタッフとアーティストだけが残された」とされている。
企業が保険や退職給付のコストを抑えるために社員を解雇すること自体は新しい話ではない。だが、エンターテインメント業界やポストプロダクションのワークフローにAIが導入されたことで、新たな要素が加わった。昨年、企業は猛烈な勢いでこの技術を採用したが、その後、トークン使用にかかる高額なコストと向き合い始め、一部では後退し始めている。映像制作はとりわけコストが高くなりがちだ。OpenAI(オープンAI)のSoraは、コンピューティングリソースだけで1日あたり1500万ドル(約24億4000万円)かかると推定されており、エンゲージメント数の崩壊や著作権訴訟を考えれば、どんな合理的な収益モデルも霞む規模だった。OpenAI(オープンAI)は今年初めにこのプラットフォームを終了し、ディズニーによる10億ドル(約1630億円)規模の約束を白紙化することになった。
そうなると、賢明な計算は、こうした大きなAIコストを外部に転嫁することになる。フリーランサーは以前から自分のツール費用を自ら負担してきたし、AIサービスも単なる事業コストの1つになりつつある。だが、その経済性はかなり早い段階で崩れ始める。それはスタジオとAI企業の双方に悪影響を及ぼしかねない。
すでにハリウッドは雇用危機に直面している。米国の映画・テレビ制作の全国的な低迷により、雇用は2022年末から30%減少し、その状況は現在も続いている。脚本家はいまや建設業に従事したり、AIシステムの訓練を担ったりしている。仕事を請け負う多くの俳優は、企業研修用映像でAIに役割を奪われ、苦境に立たされている。大成功を夢見てロサンゼルスに向かう人は常にいるだろう。だが、事業を続けるコストが高くなりすぎたとき、別業界へ方向転換することを選ぶ合理的な人もまた数多くいるはずだ。
そうなると未来はこうなる。スタジオは徹底的に人員を削り、制作をフリーランサーや小規模制作会社に外注する。そうした制作会社は、AIを活用した制作コストのためにはるかに高い料金を請求せざるを得ず、コスト削減効果を打ち消してしまうか、従来通りのやり方で進めるしかなくなる。スタジオにとっては差し引きゼロかもしれないが、コンピューティングコストを賄い、投資家を満足させるために規模拡大を必要とするAI企業にとっては、実質的な影響が出かねない。AIが時間も費用も節約しないのなら、いったい何の意味があるのか。
こうしたプロダクトを構築する企業は、繊細なバランスを迫られている。MicrosoftやGoogleのようなこの分野の大手企業の一部は、データセンターの能力を拡充する間、製品の値引きを続けるだけの余力がある。ただし、いずれ請求書は回ってくる。これらの企業は、ポストプロダクション会社やフリーランサーに対し、自社の技術が彼らを完全に置き換えるのではなく、問題を解決し、コストを削減すると説明しながら、提携を結ばなければならない。それは十分にもっともで、おそらく正しい見方だが、特にクリエイティブ業界におけるAIへの反発は非常に現実的だ。
筆者はこの10年間、没入型コンテンツの制作と演出に携わってきた。エミー賞にノミネートされ、CAAにも所属してきた経歴があり、ワークフローの一部として多くのAIツールを使ってきた。優れたものもある。特にGoogle Genieは、仮想世界のスコープ設定に非常に有用だった。だが、その多くは、節約できる時間に見合うほどの費用対効果がなかったり、シームレスな代替手段となるにはスキル習得の負担が大きすぎたりする。この緊張関係は、昨年AIで制作されたコカ・コーラの広告にも表れていた。ブランドにとって時間や費用の節約になったようには見えず、広告そのものも可もなく不可もない出来だった。
AI企業は、広範な小規模制作会社やフリーランサーに対して価値を伝えつつ、コストを低く抑えるという難しい針の穴を通さなければならない。成功するには、個別の部品や工程だけでなく、ワークフロー全体に統合できる本当の価値を提供し、しかも従来通りのやり方より低いコストでそれを実現する必要がある。



