AI活用を阻むのは、組織の壁
──経営者自身がAIの可能性を理解する一方で、組織全体へ活用を広げる際には、どのような壁があるとお考えですか。
西山:まず、各部門を率いる幹部や管理職という壁があります。営業部門は「営業は足で稼ぐものだ」、システム部門は「開発はそんなに簡単ではない」、管理部門は「セキュリティーをどうするのか」と言うでしょう。いずれも検討すべき論点ですが、できない理由を並べるだけでは、従来の仕事の進め方を守る結論にしかなりません。
人も組織も、長く続けてきたやり方を変えたくないものです。特に規模が大きく、部門ごとの役割や手順が固まっている企業ほど、現場の自発性だけで全社を変えるのは難しい。経営者が「AIを使うかどうか」ではなく、「全員が使う」と方針を示す必要があります。
ただ、具体的に何へ使うかまで、経営側が一律に決めるわけではありません。使い道は現場が考え、効果のあった方法が見つかればグループ内で共有する。AIを使うことはトップダウンで求め、活用法はボトムアップで生み出していく。その組み合わせが必要です。
GMOでは、代表の熊谷(編注:代表取締役グループ代表 会長兼社長執行役員・CEOの熊谷正寿氏)をはじめ、幹部陣がAIを使い、自分の業務に必要なツールをつくっています。私も、自分専用にカスタマイズしたダッシュボードをつくりました。毎週行われる幹部が集まる会議では、参加者が何をつくったのかを発表し、使い方を共有しています。
自分で触らなければ、AIが何を得意とし、何を苦手としているのかはわかりません。トップがAIについて語るだけでなく、実際に使っているからこそ、社内に対しても説得力を持って活用を求められるのだと思います。
「時間」ではなく「成果」が価値になる
──経営者や組織がAIを本格的に使い始めると、仕事の価値を測る基準も変わるのでしょうか。
田尻:変わります。これまでは、何人が何カ月働いたかという作業量が、システム開発やコンサルティングの価格を支える根拠になっていました。しかし、AIが大量の作業を担うようになれば、人員や時間を投入したこと自体には、これまでと同じ価値を置けません。
問われるのは、何人で何時間かけたかではなく、顧客にどのような成果や付加価値をもたらしたかです。時間が価値を持つという前提そのものが崩れつつあります。


