サイエンス

2026.08.01 18:00

ヒトだけが持つ謎の臓器「口蓋垂」が進化の過程で果たした役割

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哺乳類の喉(のど)をのぞいてみると、その解剖学的構造はおおむね見慣れたものだ。口蓋から後方にアーチ状に張り出した軟口蓋、飲み込むたびに上下する筋肉群。しかし、喉の最深部、つまり軟口蓋が終わるところにある正中線をよく見てみると、何かが異なっている。ヒトの場合、そこには小さな円すい形の組織片、つまり口蓋垂(こうがいすい:俗称「のどちんこ」)があり、喉の上にぶら下がっている。

イヌにはそれがない。ネコやウマも同様だ。さらに、1992年に『Otolaryngology–Head and Neck Surgery』に発表された研究論文で、8種の哺乳類の軟口蓋を解剖・比較した結果、ヒトに最も近い霊長類も含めて、ほぼすべての霊長類に口蓋垂は見られず、未発達のごくわずかな痕跡が、数種のヒヒから確認されただけだった。

解剖学的構造は概して保守的なものだが、これほど珍しい特徴が見られる場合、それは通常、次の2つのいずれかを意味する。その特徴が、維持する価値があるほど有益な役割を果たしているか、あるいは、より重要な他の変化に伴う偶発的な結果であるかのどちらかだ。実際、ヒトの喉の進化を研究する生物学者たちは、この両方の可能性を真剣に検討している。

口蓋垂は、発話という要求によって形づくられた

最も広く議論されている説は、口蓋垂を音声言語の進化と結びつけている。長い進化の過程で、ヒトの声道は大幅な再編成を遂げてきた。

2008年に『Current Biology』に発表された研究で、霊長類の声道の解剖学的構造を比較調査した結果、ヒトの喉頭(こうとう:声を作る場所)は、進化の過程で喉の奥へと下がり、舌はより柔軟で筋肉質になり、軟口蓋は可動性が高まり、精密に制御できるようになったことが示された。

音声言語の進化的起源を調べる研究者たちは、こうした変化が総合的に作用した結果、ヒトの言語に見られる、驚くほど幅広い音域が可能になったと考えている。それらの音は、気流や共鳴に対する、微細で瞬時の調整に依存しており、他のほとんどの哺乳類には、発声すらできないものだ。

こうした大きな枠組みのなかで、口蓋垂は、特定の機能的な役割を果たしている。特定の発音時に、軟口蓋の他の部分と共に、鼻腔を閉鎖する役割を果たしており、フランス語、アラビア語、ヘブライ語といった言語に見られる「喉を鳴らす子音(口蓋垂音)」の発声を助けるのだ。

このように捉えれば、口蓋垂は、単なる解剖学的な偶然の産物ではなく、数十万年をかけて調整されてきたヒトの喉という楽器の、小さくも機能的な一部にほかならない。言い換えれば、複雑な発話に必要な「声の制御能力」をもたらした再編の証しなのだ。

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翻訳=米井香織/ガリレオ

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