地域で何か新しいことを始めようとすると、「動ける人がいない」「若い人がいない」という声をよく耳にします。
そのため全国各地で、地域おこし協力隊や移住者を呼び込み、外部の専門人材を招く取り組みが進められてきました。彼らの専門性やネットワークには大きな価値があります。一方、地域の人たちが企画や意思決定に十分関われないまま、プロジェクトが進むケースも少なくありません。
その背景には、企画や運営を外部へ委ねる行政、契約期間内の成果を求められる外部事業者、意思決定に十分関われない地域の参加者という構造があります。それぞれが役割を忠実に果たすほど、地域側に経験や関係性が蓄積されにくくなる。事業終了後に計画書や発信媒体だけが残り、再び「担い手がいない」という状態へ戻ることもあります。
しかし地域には、仕事や暮らしのなかで課題を感じている人、自分の経験を何かに生かしたい人、地域と関わりたいと思いながら入口を見つけられない人が、すでにいるはずです。ただ、そうした人たちが自分の可能性に気づかないまま、埋もれているだけなのかもしれません。
だとすれば、地域に不足しているのは人そのものではなく、人が出会い、互いの可能性に気づき、動き出すための「関係性」ではないでしょうか。
この問いに5年間向き合ってきたのが、福井県敦賀市です。
2024年の北陸新幹線敦賀開業を見据え、2021年に市の事業として始まった「敦賀をひろげるプロジェクト」は、企業・NPO・行政など、セクターを越えた地域共創プログラム「つなげる30人」の手法を、人口10万人未満の都市で、行政予算により実施した唯一の事例です。
参加したのは、いわゆる「まちづくりの専門家」ではありません。
旅行会社の営業、保育園園長、Webデザイナー、カメラマン、行政職員、大学生など、敦賀で働き、暮らす多様な人たちでした。
開始当初は、私を含む外部事業者が企画・設計・運営を担いました。しかし、その役割を3年かけて、参加者だった地域の人たちへ少しずつ移していきました。開始から5年を迎えた現在、運営の主体は地域のメンバーへとほぼ移り、約20人が運営に関わっています。
行政、市民、外部事業者は、どのように役割と関係を変えてきたのか。立ち上げ時から伴走してきたNEWPEACEの増澤諒さん、第1期参加者から運営側へと役割を広げた後藤美佳さん、東陽介さん、そして敦賀市長とともに5年間を振り返り、地域プレイヤーが育ち続ける仕組みを探ります。
新幹線開業を、地域の担い手を育てる機会に
「敦賀をひろげるプロジェクト」の構想が動き始めたのは、北陸新幹線敦賀開業を4年後に控えた2020年です。
市が掲げたのは、開業前後の一時的なにぎわいづくりだけではありませんでした。誘客や関係人口の増加に加え、地域の担い手を発掘・育成し、「人材が育つ仕組み」をつくることまでを事業の目的としていました。

立ち上げ時から伴走してきたNEWPEACEの増澤諒さんは、そこに大きな可能性を感じたと振り返ります。
「新幹線開業を盛り上げる仕事自体は珍しくありません。ただ、開業後にも地域に人や仕組みを残そうとする事業が、観光を担う部署から出てきたことに驚きました。
全国で自治体事業に関わるなかで、都市部で大きなキャンペーンを打っても、地域に十分な手応えが残らないケースを多く見てきました。だからこそ、地域の人自身が考え、動き出すことを目指す敦賀の取り組みに、可能性を感じました」



