地域主体への移行とは、市民だけに主体性を求めることではありません。参加者が受け手から運営者へ、外部事業者が運営者から伴走者へ、行政が事業の管理者から地域の試行錯誤を支える存在へと、それぞれの役割と関係を変えていくプロセスだったのです。
こうした役割の移行は、感覚的な変化だけではありません。企画と運営における地域側と外部事業者の関与度を10段階で整理すると、次のような推移が見えてきます。
運営が先に地域へ移り、企画は1年遅れて追いつく。この「時間差」に、5年かけて段階的に役割を移してきた実態が表れています。
一方、現在も企画には、外部事業者が「1」の割合で関わり続けています。地域主体とは、外部との関係を断つことではありません。外部が主導する関係から、地域が主導権を持ちながら、必要なときに外部の知見やネットワークとつながる関係へと変わることです。
増澤さんが語る「一歩引きながら、必要なときには接点を提供する」という現在の立ち位置にも、その変化が表れています。
担い手が育ち続ける「文化」をどうつくるのか
地域主体への移行が進んでも、それだけで取り組みが続くわけではありません。
行政には人事異動があり、外部事業者との契約にも期限があります。地域の運営メンバーにも、仕事や家庭、転勤など、それぞれの事情があります。
だからこそ問われるのは、特定の人に依存するのではなく、地域に「文化」が残るかどうかです。

敦賀市長はこう指摘します。
「行政には職員の異動がありますから、ノウハウだけでなく、事業に込めた思いまで本当につないでいけるのかは課題です。
ただ、この取り組みが少しずつ『カルチャー』になってきたことは大きい。大切なのは、誰かが決めた仕組みを守り続けることではなく、人や環境が変わるたびに話し合い、役割を組み直すことです。その試行錯誤も含めて、敦賀のまちづくりの文化として定着してほしいと思います」
市長は、そうした文化が市役所の中にも広がり、自ら地域へ関わろうとする職員が増えることに期待を寄せます。
「参加したい人が参加すればいい。行政として、それを制限するつもりはありません。
その一方で、市役所の中に、こうした場へ自分から関わりたいと思う人が増えていくことは、とても良いことだと思っています。何人参加させるかという制度だけではなく、市民と出会い、地域の中で何かを試してみたいと思える職員が増える。そういう文化を、市役所の中にも育てていけたらと思います」
増澤さんも、この5年間で、市民と行政の距離が変わっていったと感じています。
「敦賀では、市の担当職員の皆さんと参加者が直接つながり、僕らの知らないところでも相談したり、一緒に動いたりしているんです。
そういう関係があるから、事業が終わっても人とのつながりは残る。参加した皆さんも関わり続けてくれているのだと思います」
東さんは、この場が地域活動にとどまらず、一人ひとりの成長にもつながっていると感じています。

「ある参加者は、この場では周りを巻き込みながら楽しそうに話しているのに、会社では会議でほとんど発言しない人でした。でも、プロジェクトに参加してからは、職場でも自分の意見を言うようになったそうです。
地域での挑戦が、その人自身を変え、会社での役割まで変えていく。そんな姿を見て、この場は地域活動のためだけではなく、人が成長する場にもなっているんだと思いました」
事業は、予算や契約が終われば一区切りを迎えます。


