国内

2026.08.04 15:15

外部依存から地域主体へ 敦賀で5年かけて育んだ、まちづくりの成功モデル

左からNEWPEACEの増澤諒さん、第1期参加者の東陽介さん、米澤敦賀市長、第1期参加者の後藤美佳さん、聞き手の加生健太朗

現在では、東さん自身がファシリテーターとして、新しく挑戦する参加者を支えています。運営に関わるメンバーも、過去の参加者を中心に約20人まで広がりました。

advertisement

後藤さんは、その背景には、一人ひとりの可能性を周囲が見つけ、言葉にして返してきたことがあると話します。

「自分では『できない』と思っていても、周りから『それ、できているよ』と言われることがあります。いろいろな鏡で自分を見るうちに、『じゃあ、やってみようかな』と思えるようになるんです。

このプロジェクトでは、最初から完成されたリーダーを探していたわけではありません。個人的な動機で参加した人が、小さな役割を引き受け、支えられながら経験を重ね、今度は次の人を支える側に回っていく。完成された担い手が最初からいたのではなく、一人ひとりが持っていた可能性が、関係性のなかで引き出され、担い手へと育っていったのだと思います」(後藤さん)

advertisement

行政と外部事業者は、どう変わったのか

参加者が運営者へと変わっていくためには、行政と外部事業者も、それまでの役割を変える必要がありました。

行政が外部事業者に企画・運営を委託し、市民が用意された場に参加する。これは、品質やスケジュールを管理しやすく、責任の所在も明確な形です。しかし、外部が毎年運営を担い続ければ、地域の人たちはいつまでも「参加者」のままです。

2023年度の再始動にあたり、増澤さんたちが考えたのは、同じプログラムを外部が提供し続けるのではなく、数年かけて地域へ役割を渡していくことでした。

増澤さんは「僕らがやり続けても、最初に目指していたことにはなりません。大事なのは、参加した皆さん自身が主役になることです。

ただ、役割を渡せば、すぐに地域主体になるわけではありません。まず横で見てもらい、少し担当してもらい、振り返る。必要な場面では僕らが補いながら、3年ほどかけて少しずつ役割を渡してきました。地域の皆さんが自分たちで場をつくり、次の人を支えられるようになることが、僕らにとっての成果でした」と語ります。

地域へ裁量を渡すことは、行政にとっても簡単な判断ではありません。市民に任せたからといって、税金を使う事業としての説明責任までなくなるわけではないからです。

敦賀市長は「このプロジェクトは、行政と外部事業者だけで進めるものではありません。地域のメンバーがいて、行政、外部事業者、市民の三者が関わっていることが特徴です。

外部の皆さんには、敦賀の中だけでは得られない視点や、他地域との接点があります。一方で、外部がずっと答えを出し続ければ、地域の人たちが考え、挑戦する機会は育ちません。行政としては、失敗するつもりで税金を使うわけにはいかない。

それでも、すべてを管理してしまえば挑戦は生まれません。状況を見ながら修正し、やり直せる余地を残しながら、地域の皆さんが挑戦できるように支えていく。それが私たちの立場でした」と明かします。

敦賀で行われたのは、完成した運営体制の丸ごとの引き渡しではありません。地域側が担う範囲を少しずつ広げ、負担が集中すれば役割を組み直し、必要な場面では外部事業者が支える。「任せる」とは、丸投げすることではなく、挑戦できる範囲を段階的に広げることでした。

外部事業者に求められたのも、地域の代わりに走り続けることではありません。人をつなぎ、地域のなかにある力を引き出し、地域側が担えるようになった役割から少しずつ手を離していくことでした。

次ページ > 地域と外部事業者の関わり方の変化

文=加生健太朗 写真=廣部たかし

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事