2023年4月に就任した敦賀市長も、新幹線開業を一つの契機としながら、その先の地域の姿を見据えていました。
「新幹線開業をどう盛り上げるかは、もちろん大切でした。ただ、新幹線が来るかどうかに関わらず、まちづくりのプレーヤーが次々と生まれる街でなければいけないとも思っていました」
2021年度の第1期終了後は、コロナ禍や新幹線工事の遅れも重なり、翌年度の本格実施を見送りました。2023年度に再始動してからも、地域の主体性をどのように運営へつなげるかは、手探りの状態が続きました。
新幹線開業という大きな節目を前に始まったのは、単なる開業機運の醸成ではありません。
「地域の中から、次の担い手をどう育てるのか」
その答えのない問いに、行政、地域の参加者、外部事業者が、試行錯誤しながら向き合う実践だったのです。
参加者は、どう「担い手」になったのか
このプロジェクトに集まったのは、最初から「地域を変えたい」という強い思いを持った人ばかりではありませんでした。
第1期に参加した東陽介さんは、石川県から敦賀へ移住した直後にコロナ禍を迎え、自宅と職場を往復する毎日を送っていました。地域との接点もほとんどないなか、回覧板でこのプロジェクトを知ります。

東さんは 「まちづくりをやりたくて参加したわけではなかったんです。単純に知り合いを増やしたかった。
でも、この場で人とのつながりが生まれ、仲間と企画を考えたり、実践したりする楽しさを知りました。今では、このプロジェクトは自分の幹の一本になっています」と振り返ります。
一方、同じく第1期から参加した後藤美佳さんは、東さんとはまったく異なる思いでこの場に加わりました。
自治体事業に携わってきた経験から、外部事業者だけが熱量を持ち、地域の人たちが受け手のままで終わる事業を数多く見てきたからです。
後藤さんは 「最初は、本当に敦賀のためになる事業なのかを見極めようと思っていました。運営側の懇親会にも参加して、『本気で敦賀に関わるつもりなのか』『事業が終わればいなくなるのではないか』と問い続けていました。
でも、対話を重ねるなかで見方が変わりました。このプロジェクトには、活動歴や肩書による上下関係がなく、一人の人としてフラットに関われる。何かを強制されるわけでもなく、その余白が、それぞれの参加動機や関わり方を受け止めていると感じています」と明かします。
人とのつながりを求めて参加した東さん。外部主導の事業に疑問を持って参加した後藤さん。二人とも、最初から運営を担うことを目指していたわけではありません。
転機となったのは、第1期終了後でした。
コロナ禍などの影響により、2022年度は事業の本格実施が見送られました。通常であれば、事業の中断とともに参加者同士のつながりも薄れていきます。しかし敦賀では、参加者たちが自ら、お寺を拠点にしたイベントなどを次々と企画し、活動を続けようとする動きが生まれました。
そこで2023年度の再始動にあたり、過去の参加者が自分たちの企画を実践するだけでなく、次の参加者が出会い、挑戦する「場」そのものを支える構想が始まります。
プログラムを進行するファシリテーターの一人として声を掛けられたのが、東さんでした。
「最初は『なんで自分なんだろう』と思いました。本当にできるのだろうかという不安が大きかったです。
いきなりすべてを任されたわけではありません。経験者の進行を横で見て学び、少しずつ前に立つ時間を増やす。足りないところは外部の伴走者に補ってもらいながら、3年ほどかけて役割を渡してもらいました」(東さん)


