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2026.08.05 16:00

伝統を礎に、未来を再定義する 125年企業BATが挑むスモークレスな未来

ブリティッシュ・アメリカン・タバコ(BAT)が目指す「スモークレスな世界」。その実現を先導するのが日本市場であるという。

同社で、アジア太平洋・中東・アフリカなど50以上の国・地域を擁するAPMEA地域のディレクターを務めるパスカル・ムルメステールに戦略を聞いた。


来年125周年を迎えるブリティッシュ・アメリカン・タバコ(以下、BAT)。煙とともに長い歴史を歩んできたグローバル企業は今、「A Better Tomorrow™(より良い明日)」の実現に向け、大きな変革に挑んでいる。その中心にあるのが「スモークレスな世界」の構築だ。

世界では健康やウェルビーイングへの関心が高まり、人々のライフスタイルや価値観も大きく変化している。BATはそうした社会の変化を前向きにとらえ、紙巻きたばこ中心の事業から、加熱式たばこやオーラルたばこなどのスモークレス製品を中心とした事業への変革を進めている。

同社は2035年までに収益の50%以上をスモークレス事業へ転換し、同社スモークレス製品のユーザー数5,000万人の達成を掲げる。その戦略を牽引するのが日本市場だ。すでに収益の半数をスモークレス製品が占め、グループが世界全体で目指す未来を先行して実現している。

チョコレート業界から転身
伝統と革新、その融合に魅せられて

「私はチョコレートとビールで有名なベルギーで、起業家の両親のもとに育ちました。幼いころから消費者を理解することの大切さと、仕事に誇りをもち、当事者意識をもって情熱を注ぐことの価値を学んできました。振り返ると、現状を粘り強く改善していく姿勢は、日本の文化とも非常に親和性があったと感じています」

そう語るパスカル・ムルメステール(写真。以下、ムルメステール)は、食品・チョコレート業界で20年以上にわたり活躍してきた人物だ。これまで英国、シンガポール、日本、米国、ブラジル、インド、中国など世界各地で要職を経験し、事業成長や組織変革、イノベーションを主導してきた。

「世界各地の企業を見てきましたが、優れた企業には共通点があります。人を最優先に考えること。そして、これまで築き上げた価値を尊重し、それを礎に、未来に向けて自己革新を続けていることです」

なかでも彼女が強く魅了されたのが、日本のものづくり文化だった。各地の工房を訪ね、京都では酒蔵も見学したという。

「酒蔵を継いだばかりの女性杜氏(日本酒醸造の責任者)と出会いました。彼女は伝統的な酒づくりの技術を大切にしながら、新たな発想を取り入れ、白米が主流の日本酒業界で“赤米”を使った独創的な日本酒を生み出しました。その姿から、受け継がれた伝統を大切にしながら、新たな価値へ昇華することは十分可能なのだと学びました」

その経験は、自らのキャリア観にも大きな影響を与えた。

「成熟した産業を未来につなげるためにイノベーションを起こす。それこそが自分の使命だと感じるようになったのです」

そんな折、BATから声がかかった。APMEAという急成長市場では、産業全体の構造変化が、かつてないスピードで進んでいた。125年近い歴史をもつBATもまた、『スモークレスな世界』の実現を見据え、未来を大胆に再定義しようとしていた。その挑戦とスピード感は、まさに彼女が描いていたキャリアそのものだった。

「再び日本社会にも貢献できる仕事に携われることを、大変光栄に思います」と語る彼女のまなざしには、新たな変革を担う覚悟と日本への強い思いがにじんでいた。

スモークレス社会の先陣を切る日本市場

「APMEA地域は巨大な人口を抱え、成長スピードも速い。そのなかでスモークレス化を推進することは大きな挑戦でした。多くの国では、まだスモークレス製品そのものの認知が十分ではありません。しかし日本は、すでに大きく普及していました。そこに重要なヒントがあると考えたのです」

日本は世界に先駆けて加熱式たばこへの転換が進み、今や世界最大の市場だ。すでに加熱式がたばこ市場の約半分を占め、スモークレス化の先行モデルとして注目されてきた。その流れは「オーラルたばこ」にも広がりつつある。煙もニオイも出ないパウチ型の製品で、世界的に市場が拡大しており、日本でも普及が進む。同社によれば、25年時点で約90万人とされるオーラルたばこの利用者数は、30年には400万~500万人規模に拡大する可能性があるという。

「日本には他者を思いやる文化があります。周囲への配慮や調和を重視する価値観は、スモークレス製品の普及とも親和性があると考えています」

日本市場は単なる販売市場ではない。成熟度の高い消費者の期待水準が企業に絶え間ない進化を促している。細部へのこだわりや品質への妥協のない姿勢が、新しい製品やサービスを磨き上げる場となっている。そこで培われた知見は、世界各国に展開されるイノベーションの源泉にもなっている。

「日本の人々の国民性とも言えるかもしれませんが、BATジャパンの社員は非常に勤勉で、きめ細かな配慮に優れています。その背景には、日本の消費者が品質に求める基準の高さがあると思います」

ムルメステールは、日本の人材に大きな期待を寄せる。

「社内には多くの優秀な人材がいます。私の役割は、シンプルで明確な方向性を示し、彼ら一人ひとりが能力を最大限に発揮できる環境を整えることです」

APMEA全体のマネジメントにおいても、その考え方は一貫している。

「ローカルにはローカルの事情があります。消費者と社員の声に耳を傾け、その土地の文化を深く理解することでしか、本当に意味のある変革は生まれません」

自身の役割を問うと、彼女は興味深い表現を用いた。

「私は管理者というよりも、未来に向けたアンバサダーなのかもしれません。人の声に耳を傾け、人に権限を渡し、当事者意識を育む。人々が前向きに変化し、各市場の可能性を解き放てる環境をつくる。それが私の役割です」

紙巻きたばこが過去のものとなる未来へ

最後に、思い描いている「スモークレスな世界」について尋ねた。

「目指すのは、紙巻きたばこが過去のものとなる世界。喫煙者が、自分に合ったスモークレスな選択肢を選べる世界です。その変化はすでに始まっています」

その実現は一企業だけで成し遂げられるものではない。

「喫煙者に、より良い選択肢を知ってもらうことが重要です。そのためには、政策関係者、小売り・流通パートナー、取引先、消費者、メディアなど、たくさんの人々の協力が欠かせません。科学的根拠に基づいた情報提供とリスクに応じた規制のもとで、選択肢への理解を広げていく必要があります」

125周年を迎えるBATが目指しているのは、単なる事業構造の転換ではない。長い歴史のなかで培われた知見と信頼を礎に、スモークレス製品への移行を支援し、喫煙に伴う健康への影響を低減することだ。それは、次の時代にふさわしい新たな価値を創造する挑戦でもある。

「スモークレスな世界の実現。それが私の使命であり、BATの目指す未来です」

成熟した産業だからこそ、変革の可能性は大きい。そしてその変革を先導する日本市場は未来を照らす重要な存在なのだ。

BATジャパン
https://www.batj.com


パスカル・ムルメステール◎ベルギー出身。食品・チョコレート業界で20年以上にわたり世界各地の事業に携わり、日本法人や西欧地域で社長などを歴任。2026年1月よりBATのAPMEA地域ディレクターに就任。

promoted by BATジャパン / text by Ryoichi Shimizu / photographs by Masahiro Miki / edited by Akio Takashiro