労働者は、AIがもたらす技術の変化を、とりわけフィジカルAI(実世界で動くロボットなどに搭載され、物理的に作業をこなすAI)がもたらす変化をどう受け止めているのだろうか。
韓国の労働組合の動きを伝える記事が気になったので、詳しく調べてみた。そこから見えてきたのは、アジア(韓国)と米国の両方に生産拠点を持つ多国籍企業がどのような影響を受けるのかを示す、実に興味深い一例だった。
まず、はっきりしている事実から確認しよう。現代自動車(ヒョンデ)は生産拠点向けのロボットの開発を進めており、1月の見本市CESでは、ボストン・ダイナミクス製のAtlas(アトラス)というロボットを披露した。
同じ時期には、ロイターがこう報じている。
「2028年からヒューマノイドロボットを導入するというヒョンデの計画を受けて、同社の株価は上昇し、過去最高値を更新した。しかし労働者にとっては歓迎できる知らせではなかったと、ロイターが確認した組合の内部文書には記されている」。
ロイターのヤン・ヒギョン、チン・ヒョンジュ両記者は、この内部文書を根拠に、ヒョンデの従業員と労働組合がロボットの脅威に注目しているだけでなく、それを団体交渉の議題に組み込みつつあると伝えている。
ここからが奇妙な話だ。アーステクニカのジェレミー・スーが伝えたところによれば、ヒョンデはロボットの問題が現在の組合との交渉に含まれていることを否定しているという。
「2028年までにヒューマノイドロボットを働かせるというヒョンデの計画は、ストライキ中の韓国の自動車労働者との現在の交渉には含まれていない。同社はそう説明してる」とスーは書く。「韓国にある世界最大の自動車工場でヒョンデの労働組合が実施した部分ストライキ(1日のうち一定の時間だけ仕事を止めるストライキ)は、2028年から米国でヒューマノイドロボットを導入するという同社の計画への懸念がきっかけだったと報じられた。同社はこの報道に異議を唱えている。アーステクニカに提供された同社の声明によれば、組合の要求は賃上げ、賞与、定年延長といった待遇面の問題に集中しているとのことだ」。
ストライキそのものは別としても、ヒョンデの声明は、先に紹介したロイターの報道と真っ向から食い違う。では、韓国の労働者はヒョンデの初期段階の計画に対して、実際に具体的な反応を示しているのだろうか。
おそらく示しているだろう。世界中の労働者がAI全般に対して取っている態度を踏まえれば、そう考えるのが自然だ。職に就いている人の多くは、AIが市場で生み出す機会が、いずれ何らかの形で自分の生活を脅かすことをある程度は理解している。まして、ものづくりの現場である自分の職場にAIロボットが歩いて入ってくるとなれば、脅威はいっそう直接的になる。



