米国への影響
では、これは米国の労働者にどう影響するのだろうか。
少し調べてみると、ジョージア州にあるヒョンデの米国工場では、従業員は組合に加入していない。これで答えは出てしまう。従業員には、賛成も反対も表明する手立てがない。そもそも議論の土俵に上がらないのだ。
米国の自動車産業を束ねる労働組合、全米自動車労働組合(UAW)がロボットの問題に取り組み始めたという報道は見つかった。この米国のヒョンデ工場で組合を結成しようと試みたものの、実現しなかったという報道もある。米国では、組合の組織化が文化的な面をはじめとして特有の困難に直面する。
調べを進めるうちに、ジョージア州エラベルにある通称「メタプラント」が組合のある職場なのかどうかをめぐって、インターネット上の情報も各種のAIモデルも、言った言わないの水掛け論を繰り広げた。ただ、報道の大勢を見るかぎり、あの工場では組合結成に十分な賛同が集まらなかったようだ。
警鐘を鳴らす
より大きな視点で見れば、米国の自動車産業の労働組合はこの問題に目を光らせている。2024年の「モンゴメリーは待てない(Montgomery Can't Wait)」というキャンペーンを見てほしい。UAWがアラバマ州モンゴメリーのヒョンデ工場で組合結成を目指し、従業員に加入を呼びかけた運動で、この問題への警戒も訴えていた。つまり対象になったのは、ジョージア州のメタプラントとは別の、アラバマ州にあるヒョンデ工場だ。公開されている報道の一部がメタプラントをヒョンデの「唯一の施設」としているのを考えると、これは奇妙な話である。
ネット上で真相を追う者にとっては、全体としてかなり錯綜した話だった。それでもはっきりしているのは、労働組合がAIロボットの長期的な影響を認識しているということだ。組合は歯止めをかけようとしている。それは成功するのか。ある程度までは、誰にもわからない。ここで、アメリカ進歩センターのオーレリア・グラスの論考を紹介したい。
「政策立案者が、人工知能(AI)が全米の労働者に及ぼす現在および将来の影響への対策を探るなかで、労働者自身は組合の交渉力を使って労働協約の条項を勝ち取ろうとしている。雇用の削減を防ぎ、監視やアルゴリズムによる労務管理に歯止めをかけ、AIツールがもたらす生産性向上の恩恵を労働者自身が受け取れるようにする条項だ」とグラスは書く。
グラスは労働者への脅威を、ほかならぬサム・アルトマンの言葉を引きながら、次のように説明する。
「多くの労働者にとって、AIは仕事の一部あるいは全部を自動化する恐れがある。さらに、踏み込んだ監視によって集めたデータに基づくアルゴリズム管理が人間の判断に取って代わることで、労働条件が悪化する恐れもある。ChatGPTを開発したOpenAIのCEOであるサム・アルトマンは、『仕事は間違いなくなくなる。それだけのことだ』と予測している」。
この問題には、実に多くの要素が絡み合っているようだ。労働組合の扱い方も、AIロボットの扱い方も、国によって異なる。そして、AIはどの国にもやってくる。
続報を待ちたい。


