多くの商用AIサービスが利用量をトークンで測り、それに応じて価格をつけているため、トークンの消費をめぐる1つの経済圏が生まれた。これがしばしば「AIのトークノミクス」と呼ばれるものだ。
トークノミクスは、コストと効率を測るうえで非常に役に立つ。ただし、AIをどれだけ使ったかという量と、そこから生まれた価値とを混同した瞬間に、厄介なものへと変わる。
トークノミクスが役に立つとき、立たないとき
トークンは、AIの利用量を数値にするうえで便利な物差しだ。レポートを書かせるにせよ、調査結果を要約させるにせよ、契約書を分析させるにせよ、コードを生成させるにせよ、そこで発生した処理の量は、たいてい入力トークンと出力トークンで表せる。
おかげで企業は、支出を予測し、モデルを比較し、AIの請求額を押し上げているのがどの用途なのかを把握できる。
一方、トークン数を見てもわからないことがある。その出力が役に立ったのか、正確だったのか、支払った金額に見合っていたのか、である。百万トークンを費やして価値ある調査結果が得られることもあれば、自信たっぷりに語られる大量の的外れな文章しか出てこないこともある。
この違いが問題になるのは、企業がトークンの消費量でAIの定着度や従業員の働きぶりを測ろうとする場面だ。
メタ、アマゾン、JPモルガン、KPMGといった企業が、従業員のAI利用状況を追跡するリーダーボード(利用量の社内ランキング)や社内システムを試したと報じられている。狙いはAIの利用を促すことにあるのだろう。だが、トークンを消費した人に報いる仕組みには、明らかな落とし穴がある。仕事の質もスピードも成果も変わらないまま、利用量だけを増やすことができてしまうのだ。
アマゾンはトークン利用量のリーダーボードを閉鎖したと報じられている。ある幹部は従業員にこう釘を刺したという。
「AIを使うこと自体を目的にするのはやめてください」
教訓は単純だ。トークン数が多いことは、AIをより多く使った証明にはなる。だが、より良い仕事をした証明にはならない。


