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2026.07.31 09:46

AIが解き明かすか、3.7兆ドル(約603兆円)のインフラ「盲点」

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米国土木学会(ASCE)は4年ごとに、教師が答案の束を採点するかのように、国内の道路、橋、ダム、水道システムを評価している。2025年3月に下された評定は「C」で、同学会が1998年にこの取り組みを始めて以来、過去最高の評価だった。しかし同じ報告書には、この慶事に水を差す数字も埋め込まれていた。米国が計画している支出額と、インフラが実際に必要とする額との差を埋めるには、今後10年間で推定3.7兆ドル(約603兆円)を要するというのだ。

この問題の背後には、より興味深い第二の問題が潜んでいる。報告書をまとめる技術者らは、根底にあるインフラの状態データの多くが断片的であることを率直に認めてきた。健全性の記録が乏しければ、資産を適切に管理することも、保険を掛けることも、予算を組むこともできない。この「盲点」こそ、資金以上に、いくつかのテクノロジー企業が狙いを定めているものだ。

その主張はおおむね次のようになる。橋の写真、トンネルのスキャン、書面での点検記録――何十年分ものデータがすでに存在し、誰も精査する時間のないファイリングシステムやハードドライブに眠っている。腐食やひび割れを検出するよう訓練された機械にこの蓄積を読み込ませれば、書類の山を技術者が行動に移せる情報へと変えられる、という発想だ。この構想が実際の交通機関との現場で通用するかどうか、いまニューヨークで試されている。

タイミングは偶然ではない。Engineering News-Recordは12月、ASCEが並行して進行する2つの問題を指摘したと報じた。1つは、土木、建設、点検職に及ぶ人材不足で、多くの資産保有者が大規模な業務を遂行するための社内スタッフを欠いている。もう1つはデータギャップそのもので、雨水排水設備、堤防、学校その他の分野で信頼性の低い、あるいは不完全な記録が一般的だ。この2つは相互に増幅し合う。点検員が減れば記録は薄くなり、記録が薄ければ、縮小する点検員をどこに派遣すべきかの判断が難しくなる。ASCE自身の労働力に関する記述はブルッキングス研究所の調査を引用し、2021年から2031年の間に年平均170万人のインフラ労働者が職を離れる見込みだとしている。これらのツールが埋めようとしているのは、まさにこの穴である。

ニューヨークという試験場

5月、ニューヨーク大都市圏交通公社(MTA)とニューヨーク市パートナーシップ基金が共同で運営するプログラム「Transit Tech Lab」は、138社の応募のなかから選ばれた18社を発表した。選ばれた企業は、MTA、ニューヨーク・ニュージャージー港湾公社、NJトランジットなどの機関とともに8週間の概念実証(PoC)に臨む。パートナーシップ基金によると、今回選ばれた企業の半数以上が、何らかの形で人工知能(AI)を活用して開発を行っているという。

驚くべきことに、そのうちの多くが同じ獲物、すなわち「物理的資産の状態」を追い求めている。ボストンに拠点を置くCyvlは、車両にカメラとセンサーを取り付け、走行しながら道路の穴(ポットホール)やひび割れをマッピングする。Duos Technologies(デュオス・テクノロジーズ)は、走行中の鉄道車両を高速スキャンして機械的欠陥を検出する。Praedico(プレディコ)は、長年にわたる線路のデータを整理し、運行事業者にどこが摩耗しているかを一元的に把握できるようにする。1つのプログラム内の狭い問題にこれほど多くの企業が集中するのは、通常、その問題が本物であり、解決のための資金が動き始めた証しである。

そのうち2社の名前は、この分野がどのように階層化しつつあるかを示している。点検写真をスキャンし、人間が見落とすかもしれない亀裂、剥離、錆のふくらみを検出する「自動欠陥検出」ソフトウェアは、いまや業界共通の能力となっている。企業を差別化しているのは、顧客が実際に何を購入しているのか――一度きりの点検か、恒常的なシステムか――という問いだ。

プロジェクトか、プラットフォームか

T2D2は単発の点検サービスを販売しており、その出自には確かな実績がある。同社は、半世紀以上にわたり構造物の検査や法科学的調査を行ってきた構造設計事務所ソーントン・トマセッティ(Thornton Tomasetti)からスピンアウトし、2021年に独立企業として設立された。そのシステムは親会社のアーカイブにある数万枚の画像でトレーニングされており、手持ち、固定式、ドローン搭載など、あらゆるカメラで撮影された写真を読み込み、定期点検の合間に人間が見落とす可能性のある微細なひび割れを検出する。カリフォルニアの産業用屋根、メイン州の石橋、ニューヨークやシカゴの組積造の外壁など、同社の実績リストはプロジェクト型の案件が多く、それぞれの契約には明確な始まりと終わりがある。その実績がもたらすのは、出力されたデータを信頼しなければならない技術者たちからの信用である。

重要土木インフラ向けエンジニアリングAIエージェント・プラットフォームであるDynamic Infrastructure(ダイナミック・インフラストラクチャー)は、このカテゴリーで最も確立された企業であり、常設システムを販売している。同社のプラットフォームは、ある機関の保有する全資産の恒久的な記録システムとなり、新たな点検を行うたびに過去数年間の画像データと紐づけられる。これにより、同じ欠陥を継続的に追跡し、その変化の速度を測定して、数千もの構造物を最も急速に劣化している順にランク付けすることが可能になる。2018年からこの一貫したアプローチに基づいて構築された同システムは、現在、全米15州の数十におよぶ地方自治体、郡、州の交通機関に導入され、7000以上の大型構造物を管理している。今年のTransit Tech Labでは、MTA建設開発部門、ニューヨーク市トランジット、港湾公社のPATHハドソン川横断電鉄とともに参画しており、NVIDIA(エヌビディア)のスタートアップ支援プログラム「Inception」のメンバーでもある。さらに、2025年末時点での米国クライアントにおける契約更新率は100%に達している。

営業用語を剥ぎ取れば、提示されている約束は地味だ。しかしそれが要点でもある。数百の橋や暗渠(あんきょ)を管理する郡のチームが不足しているのはデータではなく、すでに持っている情報を読む時間なのだ。これらのツールが行うのはトリアージ(優先順位付け)である。夜通しで蓄積を読み込み、緊急性の高いものを順位付けし、限られた修繕予算を今年どこに配分し、何を来年に回すかを判断する担当者に短いリストを渡す。ここには、この分野全体がいずれ答えねばならない問いが浮かぶ。ソフトウェアが記録を整理してもなお何かを見落とした場合、責任は誰が負うのか。現時点で業界の答えは、責任は従来通り点検を発注した資産保有者にあり、行動に移す前には必ず有資格の技術者が承認するというものだ。人間をその座に留めておくことは、安全装置であると同時に、自動化にどれほどの道程が残っているかの静かな告白でもある。

眠れる市場がにわかに注目に値する理由

インフラは長らく、人を眠りに誘うタイプの資産クラスだった。そしてそれこそが要点なのだ。融資したり保険を掛けたりする側は、何を引き受けているのかについて明確で最新の全体像を持ったことがない。AI企業のセールストークは、状態を計測し予測できるようになれば価格付けもできるようになる、というものだ。地方自治体のバランスシートに隠れた負債が可視化される。劣化曲線は、保険会社や民間投資家が実際に数値を当てはめられるものになる。

これは説得力のあるアイデアだが、現時点ではあくまでアイデアにすぎない。この新しいデータを根拠に価格を再設定したと公表した保険会社や債券ディーラーはまだ存在しない。インフラが与信スコア(クレジットスコア)のように一目でわかるようになるという、より壮大なビジョンは、まだ未来の話だ。今日確実に言えることは、もっと限定的で、かつ確実なことである。橋梁の老朽化が進む一方で、公的機関では経験豊富な技術者が不足している。土木学会自身が引用している連邦高速道路局(FHWA)の2023年のインベントリ(目録)によると、4万2404基の橋が「構造的に欠陥あり」と判定されており、これは全米の総数の約7%に達する。人員不足のチームにこのような未処理データのトリアージを行わせることができるソフトウェアは、資本市場の助けなど借りずとも、それだけで十分に元が取れる。

冷静さを保つべき理由

歴史は、冷静に静観することを教えている。Transit Tech Labは2018年から運営されており、同ラボの発表によると、これまでに81の技術をテストし、そのうち22が商業的な規模へと発展した。実証実験(PoC)は試行であって、発注書ではない。交通機関は、見込みのある技術をより長期のパイロットプログラムへと進めるかもしれないし、進めないかもしれない。実際に実用化(商業化)までこぎつけるのは、約4分の1だ。これは現実的な確率であり、Dynamic Infrastructureを含め、今年選出されたすべての企業に当てはまる。

より大げさな主張に対しても、同様の懐疑的な目を持つ必要がある。状態データの「世界最大のレポジトリ」といった表現や、100%の契約更新率といった記述は、企業自身によるものであり、外部から検証することはできない。これに対し、資金不足に関する報道は確かだ。Engineering News-Recordは12月、各機関がすでに資金不足に合わせて作業の優先順位を決定しており、資産が修繕に多額の費用がかかる深刻な状態に陥るのを待つのではなく、良好な状態を維持する方向へとシフトしていると指摘した。これこそが、これらのツールが参入しようとしている、まぎれもない現実の市場なのだ。

これで話はニューヨークが実際にやっていることに戻る。契約を結んでいるのではない。テストを走らせ、機械がファイリングキャビネットより上手に橋を「読める」かどうか、10数社に証明を試みさせているのだ。ニーズは記録されており、技術には妥当性があり、結果はこれから出る。よりクリーンなデータだけで経済の最も眠たい一角を目覚めさせられるかどうか――それはまさに、この1、2年で決まる問いだ。今回ばかりは、人間と機械の点検員が何を掘り起こすかを見守るのが賢明な賭けだろう。

forbes.com 原文

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