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2015.11.20

パリ同時テロで値上がりする防衛関連株

Frederic Legrand - COMEO / Shutterstock.com

航空宇宙・防衛関連株が買われている。仏パリで11月13日に発生した同時テロ事件を受け、同国政府が開始したシリア北部の「イスラム国」(ISIS)の拠点に対する空爆の強化などが主な理由だ。
 
ボーイングの株価は2%の上昇にとどまっているものの、ノースロップとロッキード・マーチン、レイソンの株価は今週初めから4~6%上昇。ブルームバーグはサウジアラビア政府がボーイング、レイセオンからスマート爆弾およそ1万3,000個と関連部品を購入すると伝えており、これも値上がりの一因になった。
また、これら各社の株を取り入れた上場投資信託(ETF)や投資信託も値上がりしている。
・パワーシェアーズ・エアロスペース・アンド・ディフェンスETF(PPA)は今週に入って約3%上昇。
・SPDR S&P エアロスペース&ディフェンスETF (XAR)とiシェアーズ・ダウジョーンズ米国航空宇宙・防衛ETF (ITA)はそれぞれ約3%上昇。
・フィデリティ・セレクト・ディフェンス&エアロスペース・ポートフォリオ(FSDAX)は2.3%上昇。
・インダストリアル・セレクト・セクター・SPDRファンド(XLI)は1.3%上昇。
 
防衛関連産業の今後の展望
運用会社や投資銀行などにデータや調査・分析結果などの情報を提供するスタンダード&プアーズ(S&P)の「キャピタルIQ」のアナリストは、航空宇宙・防衛産業の民間部門が向こう12ヵ月にわたって成長を続けると見込んでいる。
 
欧米では軍事予算が削減される方向にある中、新たな軍拡競争が始まったともいわれるアジアと中東ではミサイル防衛・電子機器の分野で受注が拡大しており、世界経済の先行きを危惧する投資家にとって、防衛関連株は安全な投資先といえる。同アナリストは、米国では防衛支出が削減され、国防総省には2021年までの9年間に1兆ドル近い予算の削減が求められているが、軍装備品は老朽化もあり、関連企業には買い換えや修理の需要があると指摘している。
 
関連大手の展望

1.ボーイング
世界最大の航空機メーカー、ボーイングの時価総額は約980億ドル(約12兆円)。今年の売上高は前年比5%増、2016年は同2%の増加が予想されている。
 
2.ユナイテッドテクノロジーズ(UTX) 
エレベーターや航空機エンジン、ジェット機システムを中核事業とするユナイテッドテクノロジーズは、純粋な意味での防衛企業ではないが、防衛産業における市場価値でみればその規模は世界第2位。2017年末までに160億ドル相当の大規模な自社株買いを計画しており、株価上昇が予想される。
 
3.ロッキード・マーチン(LMT)
米軍地上部隊向けの無人運搬支援システム「Squad Mission Support System:SMSS)」を開発。「デザートホークⅢ」や「ストーカー」、「フューリー」など次世代の無人航空機システム(UAS)の開発も進めている。
 
4.レイセオン (RTN)
S&PキャピタルIQによると、レイセオンの今年第3四半期の受注残高は244億ドル(約3兆円)。今年第2四半期の253億ドルからは減少したが、昨年第3四半期の231億ドルを上回っている。売上高も今年と2016年にそれぞれ1%、2%の伸びが見込まれている。
 
5.ノースロップ・グラマン(NOC)
無人機を開発製造するNOCは米国の同盟国に対する販売許可を取得しており、大幅な成長が見込まれる。同社の営業活動によるキャッシュフローは年間25億ドル(約3080億円)。今年第3四半期末の受注残高は359億ドルとなっている。

編集=上田裕資

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