現代のモビリティは、自家用車、公共交通、徒歩、スクーター、自転車など、さまざまな移動手段の間のせめぎ合いを伴ってきた。自動運転の登場はこの議論を大きく変える。現在使われている19世紀、20世紀の技術とはかなり異なる、21世紀の交通を実現する機会をもたらすからだ。本稿では、可能性の視野を広げるため、自動運転を基盤とした新しい集団移動(公共交通)の一形態を概説する新たな動画を紹介する。
現代の都市計画論者にとって、自動車はしばしば他のあらゆる移動手段の敵と見なされる。現在、自動運転はほぼロボタクシーとして捉えられており、それは自動車に近い存在だ。自動車を敵と見る人々にとって、ロボタクシーは単に自動車が増えるだけのものに映る。ロボタクシーは自動車が抱える多くの問題を解決し得る一方で、別の問題を悪化させる可能性もある。十分な情報に基づいて議論するには、この技術が単なる「自動車の増加」とはほど遠いものだと理解することが重要である。(下の動画にはAIで作成された部分が含まれる。)
この特定の形態は「Vansit」と呼ばれる。中核となる車両が、9〜16人ほどが座れる乗用バンだからだ。自家用車より大きく、バスや鉄道よりはるかに小さいバンは、多くの理由から、集団移動用車両のサイズとして有望なスイートスポットに収まる。従来の発想では「大きいほど効率的」とされてきたが、実際にはそうではない。効率を大きく左右するのは、より高い乗車率(座席が埋まっている割合)である。小型車両は満席にしやすい。定員を満たしやすいだけでなく、利用者に求める妥協も少なく、より多くのルート、高い運行頻度、さらにはノンストップサービスまで提供できるからだ。
目標は、自動車より優れた公共交通をつくることである。しかも、鉄道やBRTのように専用走行空間を与えられるから優れている、というだけではない。専用走行空間があれば何でもよくなるが、費用は法外に高い。自家用車と競うのは難しい。自家用車は、利用者の予定に合わせ、座って快適に、ドアからドアまで最短の直行ルートを走る。個人にとっての欠点はコストと渋滞だけだ。公共面での欠点はまた別の話である。利用者が個人的により優れた選択肢だと感じる移動手段だけが勝つ。
これはEVの歩みを繰り返すものだ。10年以上にわたり、人々は「社会に良いから」という理由では電気自動車を買わなかった。Teslaが競合するどのガソリン車より総合的に優れていると人々が見なすようになって初めて、多くの顧客を引きつけたのである。
筆者は何十年にもわたりVansitについて説明してきたが、この予備的な動画によって、その構想はより明確になる。いずれ、さらに優れた動画も登場するだろう。ごく短くまとめると、次のようになる。
- 移動ルートの一部を共有する人々の集団を検知する。移動はオンデマンドで、固定ルートや固定ダイヤはない。
- 全員が自家用車で同じルートに入り、渋滞の中で互いを見つめ合う代わりに、1人乗りロボタクシー(加えて自転車や他の移動手段)が、それぞれのルートが合流する地点まで利用者を運ぶ。
- その合流地点では、自動運転バンが利用者の到着時にはすでに待機している。利用者は数歩歩いて、割り当てられた上質な座席に乗り込み、バンはルートの共通区間をノンストップで走る。その区間から10台の車を減らすことになる。
- 各自のルートが分岐する地点でバンは停車し、隣には自転車、1人乗りロボタクシーなど、さまざまな車両がすでに待っている。利用者は最後の1マイルを移動し、自家用車で走った場合の経路から一度も迂回しない。
Vansitが提供する「自動車より優れた」価値は、単独で成立するものではない。管理型道路の登場も重要である。最近まで、道路は共有財だった。1,500台を処理できる道路を2,000台の車が走ろうとすれば、全車が突入し、誰もどこへも進めなくなる。現在は、流入制御信号、HOT管理レーン(高乗車率・有料レーン)、そして何よりも混雑課金といった手段で、この問題を是正しつつある。需要を制御し、共有される走行空間をよりよく分かち合うための、より多く、より優れた手段が登場しようとしている。Vansitは20世紀型の公共交通と同様、専用走行空間があれば非常にうまく機能するが、走行空間を共有する方がはるかに費用対効果は高い。
その結果は、自動車での移動と既存のあらゆる公共交通の双方を上回る。移動には自動車にはない乗り換えが含まれるが、それは短い。引き換えに、移動の大半のコストは共有されるため、自家用車の5分の1の価格になる。車両が相乗りレーンのような走行空間への優先アクセスを得られれば、移動はさらに速くなる。乗客マイル当たりのエネルギーと費用は、どの動力付き公共交通よりもはるかに少ない。そして多くの人にとって意外なことに、どのヘビーレール(地下鉄)路線よりも大幅に多い着席輸送力を提供できる。着席輸送力はヘビーレールの立席を含む輸送力よりやや小さいが、立って移動するために適応した車両を使えば、それを上回ることも可能だ(ただし、立っての移動は利用者があまり望むものではない)。
20世紀型の公共交通は、運行時間中、固定間隔で「駅から駅」へのサービスを、停留所の近くに住む身体的に移動に支障のない人々に提供する。21世紀の選択肢は、あらゆる移動能力の人々に、どこからどこへでも、24時間365日サービスを提供できる。
Vansitは、交通に関する個人と公共の目標をすべて最もよく満たすことを目指して設計された。だからといって完璧という意味ではない。実際、システムが優れていればいるほど、より多くの人がより多くの場所へ行くために利用するようになり、低密度化と道路利用の増加を可能にする(地下鉄のようにトンネルが用意されない限り)。古い公共交通路線の既存の専用走行空間をVansit型に転用すればサービスは大きく改善するが、そのような路線のほとんどは、車両が駅に停車すると線路をふさぐ「インライン」駅として設計されている。通過車両を妨げないように「路肩へ寄せる」場所がない。転換には多くの場合、高い費用がかかる。
Vansitが交通目標をどの程度満たすかについて、より詳しい概要はこちらにある。
さらに、Vansitに関する要点とFAQもまとめている。
これは単なるバスやバンプールの再発明ではない。Vansitは以前には実現不可能だった。ここでは自動運転が不可欠であり、その重要性はバンそのものよりも、最初と最後の1マイルを担う小型車両にある。ロボットは、人を半マイル運転することにも、待機することにも不満を言わない。人間が運転するタクシーをその用途に使うのは経済的ではない。中間区間の車両も、コンピューターで容易に配車でき、待機をいとわない必要がある。重要なのは、人間が決して待たないことだ。ただし、自宅や出発地点での数分を除く。そこでは実質的に待っているとはいえない。これは自動車より優れるための鍵である。自分の車は決して待たせないからだ。
もう1つの大きな利点は、既存インフラを活用できること、そして必要となる新規インフラも汎用的で、はるかに安価にできることだ。トンネル、高架橋、さらには道路でさえ、小型で軽量な車両向けであれば、現在の鉄道トンネル(駅を含む双方向1マイルで15億ドル(約2460億円)を超えつつある)や、小型車両用トンネル(1レーンマイル当たり3000万ドル(約49億1000万円))と比べて格段に安くできる。現在の道路のアンダーパスやオーバーパスでさえ、3トンで高さ6フィートのバンではなく、40トンで高さ13.5フィートのセミトラックに対応しなければならない。



