過去10年間、自動車メーカー各社は電気自動車(EV)を輸送の未来として喧伝し、この技術を賭けではなく必然として扱ってきた。各社は全車種のEV化を約束し、開発に数十億ドルを投じ、ガソリン車は終わりを迎え、内燃機関(ガソリンエンジンなどの熱機関)は恐竜のように絶滅の道を歩んでいると投資家に語ってきた。
ところが現在、それらと同じ自動車メーカーが、まったく異なる論調を口にしている。内燃機関車の生産サイクルを延長し、EVモデルの開発を中止し、コストのかかるEV向けの予算を見直しているのだ。EV革命が消え去ったわけではないが、初めての本格的な調整局面を迎えている。
自動車メーカーは経済性を最優先
技術のせいにしてはならない。むしろ、資金の流れをよく見るべきだ。
真の普及型量産EVとして初めて商業的に大きな成功を収めたテスラ「モデル3」の発売から10年が経過した。自動車メーカー各社は、アーリーアダプター(新しい製品や技術をいち早く手に入れるために、多少のリスクを許容して他者よりも先に使い始める初期採用層)への普及が一通り完了したことを認識しつつある。残された一般的な主流の購入層は、価格に対してはるかに敏感であり、EVに伴う不便さを受け入れることにも消極的で、この技術に飛びつこうとはしていない。実際、購入補助金や税額控除が縮小・廃止されるなか、従来の購入層はガソリン車を乗り続ける(あるいはハイブリッド車で新たな技術を慎重に試す)ことを好む姿勢を示している。その結果、多くの主要市場でEV需要は著しく冷え込んでいる。
EVには革新的な技術や高価な部品が凝縮されているため、自動車メーカーにとっての製造コストは著しく高く、販売時の粗利益率は低い。販売の減速に直面し、先行きも見通せないなか、自動車メーカーはビジネスライクで論理的、かつウォール街からも支持される手法で対応している。すなわち、製品ポートフォリオを削減し、生産能力の増強を延期し、確実に利益を出せる車種を優先することだ。
高価格帯のEVモデルは淘汰へ
きわめて複雑で、生産規模が小さく、価格が高いEVが真っ先に淘汰される。これには、キャデラック「リリック(Lyriq)」、ボルボ「EX90」、アウディ「Q8 e-tron」といった3列シートのクロスオーバー車や、フォード「F-150ライトニング」、テスラ「サイバートラック」、GMC「ハマーEVピックアップ」といったトラックが含まれる。ポルシェ「タイカン」、メルセデス・ベンツ「EQS」、レクサス「RZ」などの高級EVもこのカテゴリーに該当する。これらの車種はすべて、ショールームへの客足が著しく鈍化しており、自動車メーカー各社はこのセグメントの展開を縮小または棚上げしている(そして、利益を出して製造・販売できる、より小型で効率的な車両へと焦点を移しつつある)。表向きは「需要に合わせた生産調整」という言葉が使われているが、本音を言えば、財務的な出血を止めるための措置だ。
世界の主要自動車メーカーの大半は、電動化が依然として長期的な方向性であると認識しており、輸送の未来が内燃機関から脱却するという予測は正しい。しかし、彼らはその変化の曲線の傾斜を緩やかにした。新車投入のペースは18カ月から36カ月へと倍増し、EV技術に対して顕著な「一時停止(ポーズ)」期間を設けている。そしてガソリン・電気ハイブリッド車と、その兄弟にあたるプラグインハイブリッド車(PHEV)が、決算発表の場で称賛される新たな環境対応の主役に躍り出ている。これらは環境規制や基準をクリアしつつ、ハイブリッド技術は従来の内燃機関車に慣れた消費者にとってもはるかに受け入れられやすいからだ。
EVは死んでいない
結論を言えば、EVは死んでいない。EV革命という「パーティー」は終わったわけではなく、単に開催時期が延期されただけだ。
業界のシフトにもかかわらず、現在も主要なすべての自動車メーカーがEV技術への投資を続けており、新型EVの開発は最優先事項であり続けている。リヴィアン「R2」は、大衆市場向けに開発された小型で手頃な価格のSUVだ。ジープ「レコン(Recon)」はオフロード走行を重視した新しいEVであり、起亜(キア)「EV2」は都市部の購入層をターゲットにした超小型・低価格のEVだ。ルシード、BMW、ボルボ、キャデラック、現代(ヒョンデ)、シボレーなども、新型EVの発売を控えているか、新たに発表したばかりである。
問題はEVそのものにあったのではない。間違いだったのは、自動車業界がまったく新しい先端技術に飛びつき、何十年もかかるはずの移行を、わずか一世代の製品ライフサイクルの中で強制しようとしたことだ。自動車メーカーは購入者の習慣を急激に書き換えようとし、インフラの未整備に目をつぶり、基本的な資本規律を忘れてしまっていた。電動化の次のフェーズは、より緩やかに進み、ターゲット層をより慎重に見極め、採算の取れない実験的試みに対してはシビアな姿勢で臨むことになる。その結果、より優れた車両、より強固な充電ネットワーク、そしてより賢明な消費者が育まれることになるはずだ。



