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2026.07.31 08:07

「本物の資金は要らない」──100億ドル(約1兆6300億円)規模に膨張する「ファンデッド・トレーダー」ブームの実像

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「『いや、自分はシミュレーションにとどまりたい』と言うのだ」と、ジェームズ・シックススミス氏はポッドキャスト番組「On The Margin」で語り、自身の業界で起きている最も奇妙な現象について説明した。「企業側からすれば、まったく理にかなっていない話だ」

シックススミス氏が経営するテイク・プロフィット・トレーダー(Take Profit Trader)は、過去3年間で急成長した個人向け金融の一角を占める大手企業のひとつだ。自己資金取引会社を意味する「プロップファーム(prop firm)」の売り文句は単純だ。数百ドルの手数料を支払い、シミュレーション口座での取引テストに合格すれば、会社が資金を提供し、利益の大部分を懐に入れることができる。最大の魅力は、本物の資金を動かすチャンスを得られることだ。しかし、最も賢明なトレーダーたちは現在、それを全力で回避しようとしている。シックススミス氏によれば、同社には「約10万人のアクティブトレーダー」がおり、ここ1年半ほどで「65億、65億サイドの取引」を処理したという。

この分野は外部の人間が想像するよりも規模が大きく、2025年初頭の業界推計では数十億ドル以上の価値があるとされている。また、凄惨な淘汰をくぐり抜けたばかりでもある。取引プラットフォームへの取り締まりや規制当局からの圧力によって業界再編が余儀なくされ、2024年2月から2025年末までに、推定80〜100社が破綻したか、あるいはこのビジネスモデルから撤退した。生き残った2人の経営者は、このビジネスについて、証券会社というよりも、本物の手数料を支払い、ほとんどの場合は架空の資金を使うゲームに近いと説明する。

「本質的にはゲームだ」

メイブン・トレーディング(Maven Trading)のCEOであるクリス・ハンター氏は、ポッドキャスト番組「On The Margin」で、経営者としてこれ以上ないほど率直にこう語った。「プロップファームに規制など存在しない。そんなものは皆無だ。ゲームの性質上、これは本質的にゲームだからだ。取引をベースにした、スキルベースのゲームだ。リアルなお金で遊んでいるわけではない」

言い換えれば、資金提供口座(ファンデッド口座)というのは、通常は画面上の話にすぎない。テストに合格したトレーダーに渡される6桁の口座残高について、ハンター氏は「99%の確率で、実際にはリアルな資金ではない」と言う。シックススミス氏は、これについて業界の専門用語を用いる。外国為替(FX)取引の文脈において、会社が注文を取引所に送ることを「Aブック」、自社内で取引を相殺・保有することを「Bブック」と呼ぶ。テイク・プロフィット・トレーダーでは、シミュレーション段階の口座を「プロ口座」と呼んでおり、シックススミス氏はその実態について率直だ。「Bブックとは基本的にシミュレーションであり、つまり取引を出していて、自分ではそれがライブだと思っているが、実際には取引所に送られていない」

シックススミス氏は、同社がより多くのトレーダーを本物の実取引口座(ライブ口座)へと移行させている点で異例の存在だと主張しており、だからこそトレーダーたちが実取引への移行を嫌がることに困惑している。だが、不思議に思う必要はない。このビジネスモデル全体の経済性は、大半のトレーダーが実取引にたどり着かず、報酬を支払われずに終わるという前提に基づいているからだ。現在では、同様のシミュレーションモデルを採用した独自のゲームも登場している。「GameStock」のようなデモ取引(ペーパートレーディング)トーナメントアプリでは、資金提供口座を一切持たないプレイヤーたちがポートフォリオコンテストで競い合い、賞金を獲得している。

なぜ誰も「リアルなお金」を欲しがらないのか

優秀なトレーダーたちがシミュレーターにしがみつく理由は、現実的なものだ。本物の取引所では、彼らの優位性(エッジ)が消えてしまうからである。

「そう言っている連中は、ライブ市場では通用しないのだ」とシックススミス氏は言う。「だから、ライブ市場では通用しない手法を用いて、シミュレーションのバグや隙を突くためにシミュレーションにとどまりたがっている。なぜなら、実取引ではHFT(高頻度取引業者)と競合することになるからだ」。シミュレーション上の目まぐるしい市場では完璧に見える約定も、取引所に対して超低レイテンシーのインフラを配備しているHFTやマーケットメーカーとの競争に直面すれば生き残れない、と同氏は指摘する。取引戦略が精緻で高速であればあるほど、実取引への移行は困難になる。

生き残るトレーダーは、地味な取引をする人々だという。「ポジションサイズが大きすぎれば、破産の確率は100%だ」とシックススミス氏は述べる。「大抵うまくいくのは、許容されている取引枠のほんの一部しか取引しない人々だ。彼らは過剰な取引をしない」。そのため、プロップファーム自身の売り文句は自己矛盾に陥ることになる。本物の資金を切望するトレーダーほど、すぐに破綻する運命にあり、そのシステムを最も巧みに利用して利益を上げているトレーダーほど、このシミュレーションゲームから抜け出そうとしないのだ。

報酬支払いを巡る戦争

2人の経営者の意見が最も対立したのは「報酬の支払い」についてだ。これは、業界の評判を何よりも左右する争いでもある。

「他社はポンジ・スキームに基づいて運営されており、古いクライアントに支払うために新しいクライアントを獲得する必要がある」とハンター氏は指摘する。「そのため、売上が落ちる月があると、報酬の支払い問題が発生する。支払いを拒否せざるを得なくなり、評判が失墜するのだ」。同氏は、この関係性が構造的に敵対的なものだと説明する。「プロップファームの多くは『トレーダー対プロップファーム』という構図になっており、トレーダーのミスを粗探しして支払いを逃れようとする。保険会社が自動車事故における何かしらの過失を見つけて支払いを拒もうとするのと全く同じだ」

シックススミス氏は、競合他社によるこうした遡及的な支払い拒否を「略奪的」と呼ぶ。「彼らは遡って『いや、支払いはしない』と言う」と同氏は述べ、トレーダーに利益を積み上げさせた後に、わかりにくいルールを引き合いに出して「2カ月前にこれをやったから」と拒否する企業の実態を説明した。ただし、同氏が正当化する支払い拒否のカテゴリーがひとつある。それは取引所のルール違反だ。「レディット(Reddit)を見ると、『TPTがスプーフィング(見せ玉)を理由に自分をBANした』という書き込みがある。これはTPTのルールではなく、CME(シカゴ・マーカンタイル取引所)のルールだ」と同氏は述べ、相場操縦的な注文パターンを禁じるCMEグループの規則を指摘した。「そのような行為を行えば、CMEから一本の電話がかかってきて、市場データの提供を即座に止められることになる」

トレーダーたちの間でも、どこに境界線を引くべきか意見が分かれている。「この業界は、顧客であるトレーダーとの利益相反が激しすぎる」と、あるトレーダー(@TraderSumo1)は4月にXに投稿した。「これはポンジ・スキームの領域だ。良く言っても、保険会社と同じモデルで運営されている」。「支払いの拒否が自動的に詐欺の証拠になるわけではない」と、別のトレーダー(@BindawaOfficial)は5月に反論した。「プロップトレーディングにおいては、ルールこそが骨格だ」。2025年4月にジョーダン・シュニアCEOの下で発足した自主規制機関である「プロップ・アソシエーション(The Prop Association)」は、現在これらの紛争の仲裁を申し出ている。

インフルエンサーという集客マシン

これらのプロップファームに顧客を送り込むファネルは、YouTubeやXを経由している。シックススミス氏自身、インフルエンサーとして活動していた際、ある暗号資産ブローカーから実績を捏造するよう求められたことがあるという。「つまり、彼らが資金を提供し、私がその資金を取引で稼いだかのように見せかけるということか?」と同氏は言う。「いや、まさか。お断りだ」

アフィリエイトモデルは誤った行動を助長する、と同氏は主張する。「誰かのYouTubeチャンネルを精査した際、視聴者に対して維持不可能な取引戦略を教えたり、1秒単位の取引を1日に900回行うべきだと勧めていたりするのを見ると、『おいおい、なぜそんなことをするんだ』と思う」とシックススミス氏は語る。そのため、テイク・プロフィット・トレーダーはアフィリエイトプログラムを大幅に縮小した。「一度に1000人ものインフルエンサーを管理するのは困難だからだ」と同氏は言う。同社が関係を維持しているクリエイターは、自身が負けたことを認める人々だ。同氏は「ビッグ・ダディ・マックス(Big Daddy Max)」と呼ぶクリエイターを指し示す。「彼は自分がどれほど取引が下手かを時折話している。それこそが、TPTのブランドイメージに合致している」とシックススミス氏は言う。「偽り者を好む人間はいないし、人々はそういうデタラメをすぐに見破るものだ」

実直な本質

このモデルを擁護する一方で、シックススミス氏は顧客に有利な確率だなどと取り繕うことはしない。「大半のトレーダーは、軌道に乗る前に資金が尽きて最終的に失敗に終わる」と同氏は言う。プロップファームは、良くても損失の規模を抑えるだけであり、損失を出すという方向性そのものを変えるわけではない。

同氏自身がその身をもって知っている。元プロホッケー選手として欧州のリーグで約10年間過ごした同氏は、練習前の朝の時間を利用して独学で取引を学び、その過程で約6桁に及ぶ自己資金を失った。同氏が立ち上げた会社は、現在まさにその過ちを回避するための「近道」を販売しているが、その近道の意味を真に理解しているトレーダーたちこそ、シミュレーターを離れることを拒んでいるのだ。「世間知らずで、自分が何を知らないのかさえわかっておらず、簡単に稼げると思い込んでいた」と、シックススミス氏はかつての損失について振り返る。「率直に言って、多額の資金を失った」

forbes.com 原文

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