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2026.08.25 11:00

企業の価値を揺るがす生成AIを味方に。契約書を組織の資産に変えるには

営業AXサービスで新たなビジネス領域を開拓したSansanは今、「Data for your AX」というメッセージを掲げている。

企業のAXにはAIが活用できる自社データの整備が必要、と謳うその真意とは? 特に契約領域で起きている課題を探る。


SansanのCMが話題だ。「では早速、頼む。君が我が社のビジネスを画期的な未来に連れて行ってくれるんだろ?」と期待を込めるCEOに、「燃料は? データは?」と言って消えていくAI。あるいは書類を無秩序に読み込まされて子どもの姿に変身してしまうAI。コミカルなシチュエーションが笑える。と同時に、身につまされるCMだ。そのメッセージは「Data for your AX」。AIは「あなたのデータ」がなければ「あなたの期待」には応えられないということだ。

Sansan執行役員の尾花政篤(写真。以下、尾花)も、身近な場面でAIへの期待をくじかれた。個人の医療費控除の申請にAIを使ってみようと考え、病院の領収書をスマホで撮影し、そのファイルをAIに読み込ませて集計を指示したが、期待外れの結果に。

「まず撮影した領収書の文字が正しく認識されない。しかも一度間違えて学習すると、同じパターンでミスをしてしまう。さらに同じ歯医者の領収書だけ、うまく読み取りができていませんでした」

そのとき「企業のAI活用が停滞する理由も、本質的には同じだ」と尾花は感じた。

「AIは高度な分析をする能力はすでに高いけれど、データの質が問題になる。特にアナログな情報を正確にデータ化して、正しい数字とラベルをつける部分には、まだ課題が残されている。AIが期待通りに動かないのは、『AIに読み込ませるデータの精度と質』の問題が大きい」

このメッセージが、SansanのCM「Data for your AX(ビジネスデータが弱ければ、そのビジネスAIは、弱い。)」で表現されている。

企業の武器は、自社文脈を宿した「記録」

現在のAI活用にはまだ限界はあるものの、「生成AIの普及は、企業システムの価値そのものを大きく揺るがしている」と尾花は言う。

これまでの企業システムプロダクトが差別化要因としていた、文脈を解釈し正解やリスクを判断するといった推論能力は、いまやLLM(大規模言語モデル)が共通インフラとして担うようになった。では、これからの企業の業務システムの価値はどこになるのか。

「企業独自の文脈をデータとして読み込ませることが重要になってきます。営業現場であれば、誰がどんな商談を進めてきたか、社内でどんな意思決定がなされてきたか。人間でも自分をよく知る人に相談したほうが、的確な助言をもらえるのと同じことです」

企業の独自の記録をAIに読み込ませると、どんな変化があるのだろうか。Sansan社内でAI活用を進めるなかで、現場から「脳の疲労が減った」という反応があったという。

「これまで仕事を進めるときは、過去の経緯などの情報収集から始め、悩みながら分析するという工程を踏んでいました。しかし、自社の文脈を読み込ませたAIを活用すれば、その工程が短縮できるので脳のエネルギーを消費しなくてすむ。『頭のもやが晴れた』と表現する社員もいました」

営業戦略の立案の場面にも、変化が起きている。

これまで定量的なデータは営業支援システムから数字を引っ張り、集計軸を考えてレポートを作成する。定性面の分析はマネジャーが営業担当に同行して収集した情報を吸い上げ、それらをまとめるといったアナログな方法だった。こうした固有のデータをAIが読み込むと、状況は一変する。

「商談情報の録画データなどを読み込ませることで、定性的な情報もAIが引っぱり出せます。1時間ほどで集計ができ、示唆の仮説まで出てくる。定量と定性両面の分析が、本当に一撃でできます」

AIに読み込ませるべき本丸のデータは「契約書」

そして、数多くある企業の「記録」の中で、「AIに読み込ませるべき本丸のデータは契約書だ」と尾花は言う。

「契約書は、取引において社内でさまざまな議論や検討がなされた結果です。企業の考え方や姿勢が反映された意思決定の最終確定版であり、すべての企業活動の土台です。契約書には単価や数量といった取引条件だけでなく、損害賠償や権利関係など、万が一の場合の取り決めの記載もある。契約書は取引先との商いの枠組みが定義された『ビジネスの設計図』といえます」

だが、企業内の契約書の管理の現状はどうだろう。尾花によれば、企業における電子契約の導入率は7〜8割ほどだが、現場では従来の紙ベースでの締結が契約全体の半数以上を占める。取引先が紙の契約書であれば、それに合わせなければならないからだ。保管にも問題がある。電子契約サービスで取り交わされた契約データは各サービスにバラバラに保管され、紙の契約書はオフィスのキャビネットにしまい込まれたままだ。なぜ、重要な書類であるはずの契約書はこれほどないがしろにされているのか。

「契約書には営業や調達、法務、経理など複数部門の確認プロセスがあります。関係者が多いがゆえに『きっと誰かが管理してくれている』とみんなが思っている。しかし、実は誰も主体性をもって管理していない状態に陥っているようです」

契約書の内容を確認したいと思っても、すぐに探し出せなかった経験がある人も少なくないはずだ。そんな不遇な状態に置かれている契約書が今、大量に運び込まれる場所がある。

アナログな情報をデジタルな資産へと変える

Sansanのスキャンセンターには、ぎっしりと契約書が詰まった段ボールが日々届く。文字を鮮明に認識できるよう、綴じてある契約書は1ページずつ丁寧に開いてから、スキャンされる。

スキャンした契約書はデータ化された後、誤りがないかオペレーターによって一つひとつチェックと補正が行われ、契約AXサービス「Contract One(コントラクトワン)」に登録されていく。AI時代にあえて泥臭いオペレーションを行う理由を、尾花はこう語る。

「AIが参照できる企業独自の契約データベースをつくるには、抜け漏れのない正確なデータと、契約書同士の関係性が明確にわかる構造が欠かせません。多くの企業は、AIの活用にはデータが重要だと認識しているものの、精度の高いデータ化を実現することは難しい。だからこそ私たちがその土台をつくります」

グループ会社となる言語理解研究所の自然言語処理による契約書特有の文言解析といった強みも、その技術基盤に生かされている。基本契約と覚書の親子関係も自動で構造化され、「契約が生きているか終了しているのか」の判定まで含めて、AIが参照できるマスターデータが出来上がる。

こうした姿勢は、営業AXサービス「Sansan」から培われてきたものだ。名刺というアナログな情報を精度の高いデータベースへと構築し、企業の営業活動を支える資産に変えてきた。その技術が、より複雑な文書である契約書にも応用されている。

Sansan執行役員 尾花政篤
Sansan執行役員 尾花政篤

契約書が交渉の「武器」に変わる

整備された契約書のデータベースは、法務部門の業務効率化につながるのはもちろん、AIに接続することで、あらゆる部門で活用できる武器になる。尾花は営業部門における取引先との交渉を活用の例に挙げる。

「営業部門が戦略立案する際に、契約書の条件を横断的に可視化するといった応用にもつながると考えています。例えば、取引先企業に同じグループの会社が複数存在するとします。グループ会社との契約条件がデータベース上で一覧化されていれば、新たなグループ会社と契約を結ぶときに『グループ会社のA社とはこの条件で取引をしています』と交渉材料として活用できます。グループ間の取引関係をベースに交渉することで説得力が増し、価格や条件の一貫性を担保できます」

キャビネットの奥に眠る契約書という「ビジネスの設計図」をAIが理解できるデータにする。そのひと手間をかけることで、営業部門にも共通言語ができ「攻め」の戦略的契約へと変化した。これまで通りなら「過去事例と同じ契約条件にしよう」という意思決定がなされていたかもしれない。現場で契約書が戦略ツールとして動き出し、企業の事業の質も変える可能性があるということだ。

AI活用のフェーズは、モデルの進化に沸いた時代、プロンプトを工夫する時代を経てきた。そして今、AIに何を読み込ませるかという、データの質が問われる時代へと移り変わっている。


Sansan 契約AXサービス Contract One
https://contract-one.com/


おばな・まさしげ◎ベイカレント・コンサルティングで保険業界向けの戦略・ITコンサルティングに従事後、2017年にhokanを創業。23年にSansanへ入社し、現在は「Contract One」事業部長兼プロダクトマネジャーを務める。

Sansan×Forbes JAPAN 特設ページ
https://forbesjapan.com/feat/sansan/

Promoted by Sansan | text by Kana Kubo | photographs by Kizuku Yoshida | edited by Masako Kihara(HIGHKICKS)