サイエンス

2026.08.02 18:00

頭がいいイルカは人がつくったルールの抜け穴を突く、しかも子どもや仲間にも共有

stock.adobe.com

さらに、イルカには、それぞれの「呼び名」に近い個体識別能力が備わっている。イルカの個体は、生後1年のあいだに、自身にひもづいた特徴的な「音(シグネチャーホイッスル)」を発するようになる。そして、他の個体はこの「音」をまねて、この個体に話しかける。2013年に『Proceedings of the Royal Society B』に掲載された研究では、数十年間離れていても、かつての群れの仲間が発する特有の音を聞き分けることが可能だったイルカの事例を紹介している。

advertisement

また、「工夫して魚を得る」という技がグループ全体に広がったのは、ケリーが棲んでいた水槽だけではない。海綿をくわえるシャーク湾のイルカと同じ海域に棲む別のグループは、まったく異なる問題に関して、まったく異なるツールの使い方を学んでいる。こちらは、大きな巻貝の内側に魚を追いやり、魚が入った貝を水面に引き上げ、貝を振って海水を出し、貝の中に取り残された魚を食べる手法を身につけているという。

2020年に『Current Biology』に掲載された論文によると、貝を使って魚を捕まえるというこの技は、海綿を使って鼻先を守る技とは別に生まれたものだという。さらにこちらの技は、個体間の社会的ネットワークで拡散しており、同じ海域で発生しながら、海綿の技の「母から娘へ」というルートとは異なっている。

ケリー、海綿をくわえるイルカ、貝を使って魚を捕まえるイルカという3つのケースの共通点は、離れ業をやってのけた、という部分ではない。共通しているのはむしろ、これらの技が人間の注目を浴びた過程だ。

advertisement

これらのケースが注目を浴びたのは、単純に、それぞれの個体が何年にもわたって継続的に、綿密に観察されていたからだ。シャーク湾では、10年にわたる現地調査で、イルカに個体名をつけた上での追跡が行なわれてきた。ケリーが飼われていたIMSSでは、同じ水槽で暮らすイルカたちを、トレーナーたちが毎日見守っていた。

ここからわかるのは、「賢いイルカができること」に関する現在のリストはまだ完成しておらず、これからも更新されていくということだ。そして、記録されてこなかった裏技や取引、世代を超えて受け継がれる伝承が次に見つかるとしたら、人間がイルカの集団を、注意深く、かなりの長期間観察し、こうした事象が起きているのを目の当たりにした場所で発見される可能性が最も高いはずだ。

forbes.com 原文

翻訳=長谷睦/ガリレオ

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事