リーダーシップ

2026.07.30 15:07

カブトガニが教えてくれる、受託者責任のあり方

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今年開催された「システムレベル投資」に関するTIIP(The Investment Integration Program)の年次シンポジウムで紹介されたある研究結果が、セッションが終わった後もずっと私の心に残っている。

BNPパリバ・アセットマネジメントによるそのケーススタディは、北米のデラウェア湾周辺に集中するカブトガニの個体数減少が、いかにして広範な沿岸の食物連鎖を崩壊させ、渡り鳥や商業漁業、さらには地域の産業やコミュニティを支える地元湿地帯の健全性に影響を及ぼしているかを説明するものだった。当初は局所的な生態系の問題に見えたものが、観光業、労働市場、サプライチェーン、そして経済の安定にまで波及効果をもたらしているのだ。

カブトガニとシステムレベル思考のつながり

一見すると、カブトガニは機関投資やコーポレートガバナンスをめぐる議論とはかけ離れた存在に思えるかもしれない。しかしこの話は、より大きな何かを示唆している。すなわち、環境の変化が単一の事象にとどまることは滅多にないということだ。環境の変化は地元のビジネスや地域経済、労働市場、サプライチェーン、そして最終的には財務パフォーマンスにまで影響を及ぼす。

これこそがシステムレベル思考の本質である。遠く離れて無関係に見えるものが、瞬く間に重大な影響を及ぼす要因になり得るのだ。スイス・リー・インスティテュートによると、各国政府や企業が気候変動に適応できなければ、2050年までに気候変動によって世界のGDPは約10%減少する可能性がある。さまざまな業界や市場にわたって長期的な投資リスクを管理する機関投資家にとって、このようなシステム上の混乱を無視することは不可能だ。

認識されたリスクに組織はどう対応するか

受託者責任を果たすには、長期的な重要リスクへの備えが不可欠だ。そして、組織が特定の事象を重大なリスクであると認識したとき、取るべき行動は決まっている。

1. 戦略を構築する。

2. 方針とプロセスを策定する。

3. 専門家を採用する。

4. 責任体制を確立する。

5. 成果を測定する。

言い換えれば、組織はその課題を中心に業務(オペレーション)へと落とし込んでいくのである。この点において、気候変動リスクだけが特別というわけではない。企業は、長期的な価値創造に重大な影響を及ぼし得るあらゆる大転換に対して、このように対応している。

関税を例に考えてみよう。もし明日、関税が自社のビジネスモデルを脅かすことになれば、経営陣は直ちにリスクの評価を開始し、シナリオをモデル化し、ステークホルダーとコミュニケーションをとり、緩和策を策定するはずだ。各チームに責任が割り当てられ、ガバナンス体制が進化し、業務プロセスが変更されるだろう。

人工知能(AI)や人口動態の変化、労働力の変革、地政学的リスクについても同様である。マッキンゼーの試算によると、生成AIは世界経済に年間2兆6000億ドル(約426兆円)から4兆4000億ドル(約720兆円)をもたらす一方で、さまざまな業界における労働力構造を再構築する可能性があるという。具体的な課題は異なっても、リーダーの果たすべき責任は同じだ。すなわち、リスクを理解し、機会を評価し、それに合わせて組織の準備を整えることである。

新たに生じるシステム上の課題をめぐる議論は、政治的または文化的な論争として枠付けされがちだ。しかしガバナンスの観点から言えば、問いはいたってシンプルである。組織の長期的な価値創造能力に重大な影響を与える要因は何だろうか。

プレジデント兼CEOとしての私の経験から言えば、その問いに誠実に答えることができれば、そこから先は業務レベルの課題となる。

実践的な導入に向けて

それこそが、より多くの組織が関心を向けるべき領域であると私は考える。大規模な変革を実践へと移すためには、戦略、ガバナンス、業務、そして人材システムのすべてを整合させる(アライメントを図る)必要がある。

業界のリーダーを目指すのであれば、今すぐそのアライメントを構築することに投資することをお勧めする。私の経験上、長期的な成功を収めるのに最も適した立場にあるのは、変化が進行している最中に目的意識を持って行動する企業である。これは、戦略的に対応し、思慮深く適応し、時間をかけてレジリエンスを強化するための組織的な能力を構築することを意味する。

システム上の混乱が特徴となる現代において、責任あるリーダーシップとは、明確さ、俊敏さ、そして先見性を持って変化を乗りこなすことのできる組織を築くことである。私たちの目標は、新たに生じる課題や機会に対して、効果的に対応する準備が整った組織をつくり出すことでなければならない。

forbes.com 原文

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