テクノロジー

2026.08.03 13:00

42億円のシード資金調達、世界の量子革命のエンジンを目指すスイスのスタートアップ

stock.adobe.com

stock.adobe.com

量子コンピューティングの開発競争が熱を帯びている。マイクロソフトは次世代量子チップを発表したばかりで、2029年までに商用として成立する量子コンピュータの提供を目指す。グーグルとIBMも、同様の時間軸で開発を進めているという。また先月には、Quantinuum(クオンティニュアム)がナスダックに新規上場し、企業価値は150億ドル(約2兆4600億円)と評価された。

スイスのスタートアップZuriQの創業者たちは、この革命で大きな役割を担うつもりだ。同社は、2550万ドル(約42億円)のシード資金調達を発表した。量子コンピューティングチップを製造するための新しいタイプのアーキテクチャ(設計方式)を切り開いてきた企業だ。共同創業者で最高経営責任者(CEO)のパベル・フルモは「私たちのアプローチは、実世界の応用に向けて、より高い拡張性と接続性をもたらします」と語る。

私が初めてフルモらに取材したのは2025年1月、同社が自社技術を披露するデモンストレーションプロジェクトのために420万ドル(約6億9000万円)を調達した直後のことだった。それから1年半あまり。フルモによれば、プロジェクトはまさに期待どおりの成果を上げた。同社はこの成功を生かそうと急速に拡大し、陣容は4人から15人に増えている。

ZuriQが照準を定める核心的な課題は、量子情報の基本単位である「量子ビット」を数千個搭載したチップを、要求される速度と処理能力で動作するように作る方法だ。量子コンピュータの開発者たちは従来、イオンを1次元の鎖状に保持し、その鎖をつなぎ合わせて大きな格子を作るアーキテクチャに頼ってきた。これに対しZuriQは、2次元構造を構築する方法を編み出した。

「このアプローチの強みは幾何学にあります」と語るのは、ZuriQの科学顧問を務めるチューリッヒ工科大学(ETHチューリッヒ)のジョナサン・ホーム教授だ。「イオンを一列に保持すると、数は1個ずつしか増えません。これを2次元で保持すれば、チップの面積に比例して増えていきます。標準的なチップなら、数十個と数千個の違いになります」

このアーキテクチャは使いやすさの面でも利点があるとホームは指摘する。「イオンは3次元空間を自由に動かせるので、はるかに柔軟につなぎ合わせることができます。そしてこの接続性こそが、量子コンピュータの能力を最終的に左右するのです」。

次ページ > ZuriQの優位性とは

翻訳=酒匂寛

タグ:

advertisement

ForbesBrandVoice

人気記事