読み進める前に、まずはこれを試してみてほしい。
ChatGPTを開き、自社について質問する。返ってきた内容を読んでみるのだ。
その文章は、かつて自社のウェブサイトのホームページが果たしていた役割を担っている。しかも、そこに書かれている言葉は、あなたが1文字たりとも執筆したものではない。
筆者が話をする創業者の大半やマーケティング担当幹部は、このような確認を一度もしたことがない。しかし、見込み客がウェブサイトを訪問したり、デモを予約したりするころには、AIアシスタントがすでに自社を紹介し、事業内容を要約し、競合他社と比較し、検討に値するかどうかを判断してしまっていることが多いのだ。
6sense(シックスセンス)の2025年版B2Bバイヤーエクスペリエンスレポートによると、B2Bバイヤーの94%が購買プロセスのいずれかの段階で生成AIを使用しているという。
AIは契約書に署名するわけではない(それを行うのは依然として人間だ)が、その手前で入場を制限する「ベルベットロープ」を握っているのはAIなのだ。
要するに、自社の第一印象を決定づけているのは「マシン(機械)」である。しかし、創業者やマーケティング担当幹部との会話のなかで、AIが自社について何と説明しているかを確認したことがある人は、ほぼ皆無だった。
変化した「発見」のプロセス
長年にわたり、バイヤーは「検索し、比較し、候補リスト(ショートリスト)を作成し、問い合わせる」というお決まりのプロセスをたどってきた。
だが今日では、その「発見」プロセスの大部分がAIアシスタントの内部で行われている。
前述の6senseのレポートによると、バイヤーは通常、早い段階で候補リストを作成し、約95%の確率でその最初のリストから購入に至るという。
もしAIが作成する候補リストに自社が含まれていなければ、検討の俎上に載っていたことすら知る由もないかもしれない。
これは机上の空論ではない。Vercel(ヴァーセル)は最近、ChatGPT経由の新規登録者の割合が、わずか約6カ月間で1%未満から約10%に急増したことを明らかにした。このシフトはすでに起きているのだ。
AIは「知っていること」しか推奨しない
AIアシスタントが推奨事項をゼロから創作することはない。記事やレビュー、ディレクトリ、比較ページ、アナリストレポート、コミュニティでの議論といった信頼できる情報源に依拠している。
AI上での認知度(可視性)を監査するなかで繰り返し見られるパターンのひとつに、素晴らしいビジネスを展開している企業が、AIの信頼する情報源にまったく存在しない一方で、第三者メディアによる露出が強力な競合他社が常に表示される、というケースがある。
推奨されるのが、必ずしもより優れた企業であるとは限らない。露出度の高い企業が推奨されるのだ。
AIがその企業について十分な学習をしていなければ、推奨されようがないのである。
「自信たっぷり」だが、間違っていることも多い
これがリスクをもたらす要因だ。
AIは、情報が古くても自信たっぷりに答える。人間のリサーチャーとは異なり、大規模言語モデル(LLM)は質問されるたびに自社のウェブサイトを最新状態に確認しに行くわけではない。学習データと信頼できるウェブ上の情報源を組み合わせている。また、ライブブラウジングを行う場合であっても、自社のマーケティングページよりも、権威ある第三者サイトの情報を重視することが多い。
私たちは、あるB2B SaaS企業でこれを目の当たりにした。その企業は価格モデルを変更したのだが、18カ月が経過してもなお、主要なAIアシスタントは古い価格を提示し続けていたのだ。
同社のウェブサイトは正しかったが、AIは間違っていた。
なぜか。実績のあるディレクトリや提携パートナーのウェブサイトに以前の情報が残ったままであり、AIモデルの目にはそれらの情報源のほうが信頼性が高いと映ったからだ。
その結果、単に間違った回答が提示されるだけでなく、信頼問題にまで発展した。
見込み客は、AIが提示した価格が正確だと信じ込んでやってくる。営業チームが最新の価格を提示すると、バイヤーは「AIの情報が古い」と思うのではなく、「営業担当者が高いプランを売りつけようとしている」と捉えてしまった。対話が始まる前から、営業チームはすでに存在しない過去の自社像の弁明に追われる羽目になったのだ。
リーダーが今すぐ取り組むべきこと
これには巨額のAI予算など不要だ。他社をリードしているブランドは、自社に関する情報を「維持・管理すべき価値のあるもの」として扱い始めている。
まずは以下の4つのシンプルな行動から始めよう。
1. AI上での認知度を監査する
ChatGPT、Gemini、Perplexityで、自社や製品、競合他社について質問してみる。
見込み客になったつもりで、その回答を読んでみてほしい。
どこが不正確か。何が欠けているか。何が古い情報か。
回答は変化するため、この作業を毎月繰り返すことだ。
2. 発信するストーリーに一貫性を持たせる
ウェブサイト、LinkedInページ、G2のプロフィール、パートナーの掲載情報、プレスリリース、業界ディレクトリのすべてで、一貫したストーリーを語る必要がある。
AIは、クリエイティビティ(創造性)よりもはるか手前の段階で、一貫性を評価する。
メッセージが混ざり合うと、回答も一貫性のないものになってしまう。
3. 第三者からの評価を獲得する
AIは、自社でコントロールできない外部の情報源を非常に重視する傾向がある。顧客レビュー、アナリストによる言及、業界誌、信頼できるディレクトリ、アーンドメディアなどは、マシンが自社をどう説明するかに影響を与える。
これらのアセットは、もはや単なるPR(広報)ではない。それらはAIの「学習データ」なのだ。
4. 本当に重要な指標を測定する
トラフィック(アクセス数)は全体の一部にすぎない。
AIが自社を推奨しているか、どの程度引用されているか、ポジショニングが正確か、そしてAIの案内で訪れたビジターがどのような行動をとっているかを追跡するべきだ。
Adobe(アドビ)の調査によると、2025年のホリデーシーズンにAI経由で流入した買い物客は、他のチャネルからの訪問者よりもコンバージョン率が31%高かったという。
クリック数が少ないからといって、必ずしも顧客が少ないわけではないのだ。
「規律」が勝利をもたらす
過去20年間、デジタルマーケティングは人間に情報を見つけてもらうことに注力してきた。これからの10年は、マシンに情報を理解してもらうことが中心となるだろう。
成功するブランドは、必ずしも最大のAI予算を持っているわけでも、最も賢いプロンプト(指示文)を駆使するわけでもない。AIにとって最も理解しやすく、検証しやすく、そして推奨しやすいビジネスを展開しているブランドだ。
それは創造性というよりも、むしろ「規律(ディシプリン)」の問題だ。そして、それは心強いことでもある。
規律を保つのは意思決定の問題である。大半の企業は、AIが自社をどう評価しているかさえまだ尋ねていない。まずはそこから始めるべきだ。



