キャリアの中堅層が、成長の余地がほとんどないまま仕事で行き詰まりを感じている。多くの働く人々にとって、本来であればキャリアアップの黄金期であるはずの時期が、勢いを失って立ち往生するもどかしい期間になってしまっているのだ。ニューヨーク大学プロフェッショナル教育普及校(NYU SPS)とバーニング・グラス研究所の最新報告書「Sidetracked: The Hidden Crisis in Mid-Career Mobility(脱線:キャリア中堅層の流動性における隠れた危機)」によると、キャリア10〜15年目と定義される中堅プロフェッショナルの約24%が「停滞」状態にある。これは、5年以上にわたり昇進がなく、賃金もほとんど上昇していないことを意味する。18歳から75歳までの働く人々1万8429人を対象としたギャラップ社の2025年の調査「The American Job Quality Study(雇用の質に関する調査)」でも、25歳から54歳の約25%が、勤務先は昇進やキャリアアップの機会を提供してくれていないと感じていることが示された。
キャリアアップの機会が限られていることは、従業員だけの問題ではない。より広範な経済的・社会的コストを伴う、企業にとっての深刻なコスト負担になり得る。さまざまな業界の175社・12万3297件の退職者面談を分析したワーク・インスティテュートの「2025 Retention Report(2025年定着率レポート)」では、キャリアアップの機会が不十分であることが、従業員の主な退職理由のトップに挙げられている。同レポートによると、年収5万ドル(約818万円)の従業員が1人離職した場合、その代替人員を確保するために、採用コストや知識のギャップ、生産性の低下などで企業は1万6500ドル(約270万円)以上のコストを支払うことになる。実のところ、経験豊富な従業員の継続的な成長を支援することは、働く本人にとって有益なだけでなく、コストを伴う離職を防ぎ、組織の知識や文化、継続性を維持することにもつながるのだ。
中堅キャリアが停滞する理由
多くの場合、キャリア中堅での停滞は従業員の努力不足が原因ではない。実際、130万件のキャリア履歴を分析したNYUとバーニング・グラス研究所の報告書によると、中堅期における停滞は一般に、キャリア初期の成長の遅さに起因している。
同報告書は、キャリア初期に同僚に後れを取るとスキルの価値が低下し、働き手が「市場の需要から離れていく」ため、上級職をめぐる競争が難しくなると指摘している。停滞している中堅プロフェッショナルは、入社後10年間で平均1.5回の社内昇進と30%の賃金上昇にとどまるのに対し、停滞していない同僚は平均1.9回の社内昇進と71%の賃金上昇を経験している。さらに、キャリア形成の鈍化は、社内昇進経路の限界、転職、当初の職務範囲を超えて拡大した役割など、働き手が必ずしも自力で緩和できない構造的要因によって引き起こされることも示された。
また、教育機会へのアクセスが限られていることも、停滞の一因となり得る。ただし、学位や資格がその従業員の専門分野に直結している場合に限る。例えば、報告書によると、最高学位(その分野の最終学位)を持っていることは、中堅期におけるキャリアの停滞をある程度防ぐ効果がある。修士号保持者の停滞率は20%であるのに対し、学士号のみの保持者では25.3%となっている。とはいえ、学位を伴わない認定資格であっても、業界に関連した資格を取得することは、キャリアアップの可能性を高めることにつながる。
中堅キャリアの停滞を防ぐ4つの方法
キャリアの中盤で行き詰まるのを避け、長期的なキャリアアップを確実なものにするには、停滞リスクのある職務を特定することから、停滞を未然に防ぐような職務設計や支援の体制づくりに至るまで、多角的なアプローチが必要となる。適切な戦略を導入することで、企業は中堅社員のプラトー(伸び悩み期)が定着する前に、予防的に対処することができる。
- 中堅期における停滞リスクの早期特定:NYUとバーニング・グラス研究所の報告書によれば、キャリア停滞の警告サインは、それが顕在化する何年も前から現れることが多い。多くの場合、昇進や賃金上昇の鈍化は、キャリア10年目にはすでに見て取れる。同報告書は、雇用主がリスクを抱える働き手を早期に特定し、停滞する前に的を絞ったキャリア流動性の機会を提供するよう推奨している。
- 中堅期における転身の常態化:ハーバード・ビジネス・レビュー(Harvard Business Review)に寄せた寄稿の中で、リンダ・グラットンは、長寿時代における生き方と働き方を検証した自著『LIFE SHIFT(ライフ・シフト)100年時代の人生戦略』の研究結果について詳しく述べている。グラットンによれば、中堅期におけるキャリアの方向転換(ピボット)は、一般に「不満や燃え尽き症候群、あるいは外部の機会によって引き起こされる受動的なもの」であるという。彼女は、このパターンが50年または60年に及ぶ可能性のある個人のキャリア全体において持続不可能であると考えている。この流れを変えるために、グラットンは、リーダーが横方向の異動(配置転換)を推奨し、隣接分野へのスキル転換を促進し、キャリアの過程で本人のアイデンティティやスキルセットが変化し得ることを受け入れるよう提案している。中堅期の方向転換を「混乱」として扱うのではなく、組織はこうした過渡期を予期し、場合によっては必要なキャリアのステップとして扱うべきだと主張している。
- キャリアの振り返りと模索の優先:グラットンはまた、中堅プロフェッショナルには、自分の仕事について振り返ったり模索したりする時間が与えられていないことが多いと指摘する。彼女はこれが「長期にわたるキャリアを維持するうえで極めて重要である」と指摘する。彼女はリーダーに対し、小規模なサイドプロジェクト、短期の講座や研修、あるいは新たなスキルを試せる短期任務を提供することで、「低リスクの探索」を管理するよう推奨している。
- 業界に適した資格取得への投資:NYUとバーニング・グラス研究所の報告書によると、学位を伴わない資格は停滞リスクを平均29%低下させるが、この恩恵は従業員の具体的な業界や職務によって異なる。例えば教育分野では、資格は継続的な専門知識の指標とみなされるため、停滞リスクが46%低下する。逆に、行政分野などでは、資格は停滞リスクを79%増加させることがあり、キャリアアップではなく、エントリーレベル(初心者向け)の知識を示すものとして扱われることが多い。雇用主にとってこれは、一律のアプローチを採用するのではなく、特定の職務において資格を要求することや取得を促すことが本当に合理的であるかを慎重に見極める必要があることを意味している。
中堅キャリアにおける停滞は、職業人生の中で避けられないフェーズというわけではない。雇用主にとっても従業員にとっても、キャリアの勢いが衰える兆候を早く察知できれば、それだけ対処もしやすくなる。的を絞ったリスキリングや、綿密に設計されたキャリアパスの構築、あるいは横方向への流動性の積極的な受け入れなどを通じて、経験豊富な人材に投資する組織は、人材定着の強化、組織における知識の深化、士気の向上、そして長期的な成功に向けて十分に備えられた労働力という恩恵を享受できるはずだ。



